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お疲れ様

――イエナの言葉――

ボスはさ。孤児だったんだ。急に、その『神』って奴らにさ、親を殺され天涯孤独の身になった。え? 『神』ってなんなのかって? それはな、俺もよくわかってないんだけどさ。


 それからボスは、パーツ商人にさらわれた。グリフォンの爪は薬にもなるからな。でもボスはそこで自分がいかに役に立つか証明することで、パーツ商人として狩る側になって活躍するようになった。


 でもある獣人に説得されたことがきっかけでボスはその商売から足を洗うんだ。それがお前の母親なんだろうな。サン。それからボスは、もう獣人を傷つけることなくひっそりと暮らすことになった。


 けれどそこでボスに不幸な出会いが訪れる。ああ、本当に不幸な出会いだよ。ボスは、戦争孤児として、3人の子どもに出会ってしまったんだ。スラムで虐げられるだけの哀れな子ども。そう俺たちさ。そしてボスはそんな俺たちを昔の自分と重ねて、引き取っちまったんだ。


 ボスに拾われた時は本当に嬉しかった。初めて家族と呼べる人を見つけることができたと思った。でも、ボスには4人で暮らす金なんて持ち合わせてなかった。だからボスは、再びパーツ売買を始めてしまったんだ。ボスはそれ以外に生き方なんて知らなかったんだよ。


 それからのフォンさんは本当に辛そうだった。経済的に潤っていくのと引き換えにどんどん表情に余裕が無くなっていったんだ。ピグルとアラシは、幼くて気付いてなかったんだけどな。俺はボスがいつかどこか遠くへ行ってしまう気がして、怖かった。そしてボスも、俺が素直に喜んでいないってことを感じ取ってたんだろうな。


 そんな時に、今回の話が舞い込んできたんだ。ある男が、俺たちに、お前の狩りを依頼してきた。恐ろしいほどの金額に驚いたよ。こんな金があったら、もう俺たちは貧しい生活をしなくてすむ。そう思った。でもフォンさんだけ少し表情が違かった。おそらく写真に映ったペンダントで気づいたんだろうな。お前がさ、自分の人生を変えた恩人の息子だってことに。


 この任務を引き受けた夜、フォンさんは、俺にさ、自分の話をしてくれた。昔話なんて普段するタイプじゃなかったから本当に驚いたよ。それでその時俺は察したんだ。終わりにするつもりなんだって。


 任務が成功したら4人で静かに暮らすつもりだった。それはボスの本心だと思う。でもボスは話してくれた。あの人にとってはさ、失敗しても良かったんだよ。ボスは倹約家だから、俺たち3人が暮らせるだけの金はあったし、彼は、いつも沢山の獣人を傷つけた償いとして、狩りの標的に自分を打ち倒して欲しいと願っていた。


 そして、自分の愚かな人生に終止符を打って欲しいと思っていた。そんな時に、恩人の息子が標的になったんだ。ボスが決意するには十分な理由だろ。それに加えて自分が死んでも、ファルっていう預けるのに信頼できる対象が近くにいたわけだからな。


 この話を聞かされた時は驚いたよ。でも止めようとは思えなかった。どれほどボスが苦しい思いをして俺たちを育ててくれたと知っていたから。


 だからだろうな。ボスが死んだって話を聞いた時も、そんなに悲しいとは思わなかったんだ。ただ、お疲れ様とその気持ちだけが頭に浮かんだ。


 まあ、つまりだ。俺が言いたいのはだな、サン。ありがとよ。俺たちの親をさ、苦しみから解放してくれて。


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