アベノマスクには笑うしかなかった
アベノマスクには笑うしかなかった
いや、全く。
あの時は想像すら出来なかったね。
まさか未だにコロナちゃんが健在で、どころか元気一杯にはしゃいでるとは。
もう、2年くらい昔になるのか。
最初は「武漢っていうところで新型ウイルスが発見された!」みたいな噂から始まったと記憶している。
なんだっけ。
確か、日本に入国するクルーズ船でコロナの感染が確認されたんだったか。
国も手を打ったが、しかし失敗に終わって、コロナの侵入を許した。
それからあれよこれよと言う間に、日本中にコロナが広がっていった。
テレビではコロナの脅威が放送されていたが、実感はなかった。
「はーー、ありゃりゃりゃりゃ」
家族と他人事のように話していた時だった。
我らが総理大臣の言葉により、休校が始まった。
――正直嬉しかったね。
休みバンザイ!なんて、思ってましたよ。最初は。
でも不思議なもんでね。
女神の如く休日でも、続くと嫌気がさしてきた。
2週間ほどで、もう家での生活にうんざり。
ところが、学校からくる連絡は――
延長
延長
延長
……。
「いやもうええて!」
思わず叫んだね。
結局、2020年の2月くらいから始まって、そこから5月くらいまで続いたんだっけ。
いやもう、学校が恋しくなってさ。
部活もなくて身体が重い重い。最初の方は運動も頑張ったんだけど、やっぱ続かんのよ。
どこにもいけないし、何もする気が起こらないし。腐るのも仕方なかった。
頭痛いわイライラするわで、もう大変だった。
で、ようやく、待ち焦がれた学校が始まった。
3ヶ月も友達と会わないことなど無かったので、会うときは少し緊張した。しかし嬉しくて、顔がニヤけた。
やっぱり、学校があってこその休日なのだと、改めて実感して……る場合じゃなかった。
僕らの前に、悪魔が立ち塞がった。
その名も、期末テスト。
それも地獄なんて生ぬるいほどの地獄だった。
前学年の3学期の期末テストと、1学期初めの中間テストがなかったもんだから、範囲がエグいのよ。
長期休業中オンライン授業でさらっとやった範囲も、既にやったもんだとみなされてたし。
そうそう、そのオンライン授業ってやつが、本当に酷かった。
機械を使えない(特に年配の)先生がやると、カメラの向きが逆だったり声が入ってなかったり、黒板の端が切れてたり文字がボヤけて見れなかったり、音が割れて聞こえなかったり。
いやもう、授業じゃねぇなって。
で、話を戻すが、とにかく1学期の期末テストの範囲がえげつなかった。
多分、前学年の分を含めて、教科書の4分の1くらいが出されたんじゃないかな?(体感)
その量×5に、さらに副教科。
いや、すげぇやつなら出来るだろうけどもさ。
僕みたいな容量の悪いやつからすれば、もうキャパオーバーなわけよ。
ワァッツ!何単元あるんだよ、と。理科の教科書を見て暴れた。
ホワィ!何ページあるんだよ、と。社会の教科書を見て絶叫した。
ハァ!?長文何個あるんだよぉ、と。英語の教科書を見て絶望した。
まあそれでも頑張ったよ。発狂しながらも。
でも無理ゲーだった。
そりゃあ一分も無駄にしなかったらいけたかもしれないけどさ。実際、口では言えるけど、やることなんて不可能じゃん?
結果、苦手な英語なんかは半分を切った。
ふっざけんじゃねぇ!あんな量、どうやって覚えろっての!
――まあこれは、コツコツやらなかった自分にも非はあるのだが。
しかし、全体の点数が下がるのはどうしても否めない部分がある。
平均点だって下がった、
だが残酷な事に、1学期の成績はこの期末テストで決まる。中間テストがなかった分、尚更だ。
……なにそれいじめ!?
まあ当然の結果で、1学期の成績は今まで見たことがないようなものだった。
頑張らなかったお前が悪いと言われればそこまでなのだが、多分、もう一度僕があの場面に戻ったとして、この成績を上げることはできないと思う。
で、この成績は僕の内申にクリティカルヒットしたわけだ。
八つ当たりとも言われかねないが、僕は長期休業を憎んだ。
その元凶であるコロナも。
そういえば、y=ax+bのグラフ、どこかで見たことがあるなと思ったら、コロナの感染人数だった。
右肩上がり……。
高度経済成長のあれとは、また訳が違う。
それから確か、夏休みかそこらへんでコロナがまたもや増えて、夏休みが延長されたんだったっけ。
もうそこからは色々麻痺して、あまり覚えていない。
行事は殆ど中止。あったとしても、肝心な部分が抜けた縮小されたもの。
――そう、特にあれは酷かった。なんか街ウォークみたいな名前で、地元を歩いて楽しむみたいな行事があるのだが…。縮小された結果、先生がスマホで撮ってきた動画を2時間ほど見るという、拷問の時間でしかなくなった。
まあそんな色のない学校生活だったので、記憶が定かでない。
あ、1つ鮮明に記憶に残っていることがある。
安倍のマスクが配られたことだ。
もうあれは、国が総出でコントを始めたのかと真面目に思ったね。
配り始めた!
というニュースを聞いて、「なんじゃそれ」と誰もがツッコんだことだろう。
それから、もう忘れ去った時にそのマスクが届いた。
なんだこれ、と。
極めつけは、それから2週間もしない内に学校からきた連絡だった。
「不織布マスクで来てください。布マスク等は禁止です」
……もう、笑ったね。
それから結局、届いたマスクは開封もしないまま家の何処かに消えた。
いやほんと。なんだったんだろうね。
そういえば最近、クラスでその話になったことがあった。
マスクを使った 0%
居場所は知ってる 10%
どっかいった 90%
かなり大まかだが、ガチな数字だ。
多分これを見ているあなたも、安倍のマスクを付けてる人など殆ど見たことはないだろう。
これでも十分酷いのだが、あれはもうなんて言えばいいか分からなかった。
貯蔵庫代が………億ってやつ。
……流石に笑えんよ。
おいこらふざけんな!?
それ、僕達が受け持つ借金なんだぜ。
これから、山あり富士山ありエベレストありって人生なんだろうな。
――どう考えても、失政だ。
政治家はなぜあれほどのことをして、責任を取らなくて良いのかが理解できない。
総理大臣は退職金を貰って、ぬくぬくと退陣して。
せめて自分の給料の一部を国に寄付するとかするべきなのではないのか、と。
僕は何様だって話だが、思ってしまう。詳しいことは分からないが。
皮肉った言い方だったが、これが言いたいわけではない。
これから言いたいことをまとめようと思う。
僕が中学校でまともな学校生活を送れたのは、1年生の時だけだった。
白熱した体育祭だった。朝練がしんどかった。部活はほぼ応援側だった。給食中、喋りまくっていた。
今から思えば、懐かしいし、あの頃に戻りたいと、素直に思う。
それから、1年生も終わりに近づき……
さあ、レギュラーになるぞ!部活、頑張るぞ!
そうやって意気こんだ時に、
――部活動はしてはいけません。
――練習試合は禁止です。
――試合は中止になりました。
この……この悔しさが、虚しさが、分かるだろうか。
――学校で誰もコロナになどかかっていないのに。
――以前コロナにかかった子曰く、インフルエンザとか胃腸風邪よりもしんどくなかった、らしいのに。
正直言うと、コロナなど怖くなかった。
マスクを外して、思いっきり部活をしたかった。
でも、大人がそう言うのだ。
僕らにはどうしようもない。
職場体験とか、運動会とか……。
大切な行事が、軒並み無くなった。
唯一の救いは、修学旅行があったことか。
そういえば、コロナが始まって今まで、クラスメイトの素顔を殆ど見ていない。
口元はどんなふうだったかと考えたが、思い出せない。
青春を潰されたと、僕の友達が呟いていた。
なによりも楽しみにしていたプールがなくなったと、嘆いている女子がいた。
小さなフェイスシールドに囲まれて給食を食べると、なんだか味がしないと言う子もいた。
もう、コロナが始まって2年が経った。
今の小学2年生は、中学2年生は、高校2年生は、本来の学校を知れずにいる。
それは、偉い人達が思っている以上に、悲しい、悔しい、虚しいことなのだと、僕は伝えたい。
もしこれがあと1年続いたら―――
それはもう、本当に青春が消えたという事だ。
大人たちは僕達よりも深く考えて、色々と試行錯誤してくれているのかもしれない。
けれど。
けれども。
これだけは、言わせてほしい。
「僕らに日常を」
どれだけ理不尽であっても。
どれだけ不本意であっても。
投票権すら持たない僕達は、従う他どうしようもない。
何もできやしない。
僕達は、笑うしかないのだ
※決してコロナにより亡くなった方々を馬鹿にしているわけではないです