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児童剣士の混沌士(カオティッカー)  作者: 黒沢 竜
第五章~東国の獣人~
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第八十二話  想いの雷撃


 遠くからユーキたちを見ていたアイカたちもウェンフの体が青白く光るのを見て驚いている。アイカたちだけでなく、少し離れた所ではベノジアたちも同じように驚いていた。


「あ、あれは何ですの? 突然ウェンフが光り出しましたわよ?」

「分かりません。見たところ、全身に何かを纏っているように見えますが……リーファンさん、ウェンフちゃんはあのようなことができるのですか?」

「い、いいえ……」


 横になっているリーファンは上半身を起こし、ウェンフを見つめながら軽く首を横に振る。既に左腕の傷はミスチアの修復リペアによって治っており、リーファンは普通に会話をすることができた。

 リーファンもウェンフの身に何が起きたのか分からないと聞いてアイカは難しい表情を浮かべながらウェンフを見る。もしかするとウターヴェルの攻撃を受けたことでウェンフの身に何かが起きたのではとアイカは考えていた。


「それにしても、あの青白い物体、何処かで見たような……」


 アイカはウェンフの周りに発生した青白い物を見ながら呟く。過去に見たことがあるような気がするが、何なのか思い出すことができなかった。

 ウェンフの身に何が起きたのかも気になるが、今は現状をなんとかすることの方が重要だった。アイカは考えるのを止めてリーファンを護ることに集中する。


「何、これ?」


 体を青白く光らせるウェンフは目を見開きながら自分の手や全身を見ている。ウェンフ自身も自分に何が起きたのかまだ理解できていないようだ。勿論、ユーキたちも理解できておらずウェンフに注目していた。

 ウブリャイはまばたきをしながらウェンフを見つめ、ユーキもジッとウェンフを見ている。するとフィランがユーキの腕を指で突き、突かれたユーキはフィランの方を向く。


「……あそこ、右手」


 フィランはウェンフの右手を指差しながら呟き、ユーキはウェンフの右手に視線を向ける。目を凝らしてみてみるとウェンフの右手の甲に薄っすらと紫色に光る紋章が入っており、それを見たユーキは目を見開いた。


「あれは、混沌紋!?」


 ユーキは驚きのあまり声を上げ、ユーキの言葉を聞いたウブリャイも驚きの表情を浮かべながらユーキを見る。そう、ウェンフの右手の甲には混沌紋が入っていたのだ。そして、それはウェンフが混沌術カオスペルを開花させたことを意味していた。


「ウェンフが混沌士カオティッカーになった? と言うことは、あの青白い光がウェンフの混沌術カオスペルの能力ってことか……」

「おいおい、ちょっと待てよ。確か混沌術カオスペルはマジックアイテムを使わないと開花されねぇはずだろう? あの嬢ちゃんはどうやって混沌術カオスペルを開花させたんだ?」


 ウブリャイはどうしてウェンフが突然混沌士カオティッカーなったの分からず、ユーキとフィランを見ながら尋ねる。ユーキはウブリャイをチラッと見た後、ウェンフの方を向いて口を開いた。


「きっと、リーファンさんを護りたいっていう強い気持ちがあの子に秘められた混沌術カオスペルを開花させたんじゃないかな」

「そんなことで開花すんのか?」


 ウブリャイが若干疑うような口調で訊くと、今度はフィランが静かに口を開いた。


「……あり得る。三十年前のベーゼ大戦の時、混沌術カオスペルを開花させる天魔の水晶はまだ存在していなかった。でも、五聖英雄は天魔の水晶を使わずに混沌術カオスペルを開花させた」


 三十年前に五聖英雄がマジックアイテムを使わずに混沌術カオスペルを開花させたと聞いたウブリャイは軽く目を見開く。どうやらウブリャイは天魔の水晶を使わなくても混沌術カオスペルが開花することを知らなかったようだ。

 メルディエズ学園や冒険者ギルドは天魔の水晶を使って生徒や冒険者たちに秘められている混沌術カオスペルを見つけ出し、それを開花させている。最近では天魔の水晶と言ったマジックアイテムを使わずに混沌術カオスペルを開花させることは殆ど無いため、ウブリャイが知らないのも無理はなかった。


「……あと、ウターヴェルの攻撃を受けた時のショックで開花させた、というのも考えられる」

「お、お前、ガキのくせに詳しいんだな」


 自分よりも年下のフィランが混沌術カオスペルに詳しいことにウブリャイは目を丸くしながら驚く。同時にフィランの倍近く生きていた自分が無知であることを恥ずかしく思った。

 ユーキたちが話をしている中、ウターヴェルは目の前で体を光らせるウェンフをジッと睨んでいる。最初は突然の光に驚いていたウターヴェルだったが、今は自分を驚かせたウェンフに対して苛立ちを感じていた。


「生意気な虫けらがぁ! 何をしたかは知らんが、それで助かったと思うな? 今度こそお前を食ってやる!」


 ウターヴェルはウェンフを捕まえようと再び左手を伸ばす。迫ってくる大きな左手を見たウェンフは一瞬目を見開くがすぐに目を鋭くし、両手を強く握った。その直後、ウェンフの体はより強く光り、纏われている青白い物体がバチバチと音を立てながら周囲に広がってウターヴェルの左手に触れる。


「ぐおおおおぉ!?」


 物体が左手に触れた瞬間に強い痛みが走り、ウターヴェルは突然の痛みに声を上げる。声を上げたウターヴェルを見てウェンフは驚き、ユーキとウブリャイ、遠くにいたアイカたちもウターヴェルの叫び声を聞いて一斉に目を見開く。

 ウターヴェルは痛みに耐えながら後ろに下がり、自身の左手を確認する。左手にはまだ痛みが残っており、小さな火傷の跡ができていた。そして、得体の知れない物体に触れたことで左手は僅かに痺れている。


「な、何だこれはぁ!」


 自分の身に何が起きたのか分からないウターヴェルは驚きと苛立ちの籠った声を上げる。ウェンフは自身が纏っている物体がウターヴェルにダメージを与えたことに驚いているのか呆然としていた。

 ウェンフとウターヴェルを見ていたウブリャイは状況が理解できず、フィランも表情を変えずに何が起きたのか考えている。そんな中、ユーキだけは目を僅かに細くしながらウェンフを見つめていた。


「まさかとは思っていたけど……間違い無い。あれは電気だ」

「何? 電気だと?」


 ウブリャイはユーキの方を向いて思わず訊き返し、フィランもチラッと視線を動かしてユーキを見る。


「電気って、あれか? 魔法とかで放たれる雷より弱いやつのことか?」

「ん? ん~まぁ……そう、だな」


 ユーキはウブリャイの答えを聞いて複雑そうな顔で返事をする。ユーキも電気のことを詳しく理解しているわけではないため、もしもどういう仕組みなのかなどと訊かれたら細かく説明する自信が無かった。

 しかし、ウェンフが纏っているのは電気で間違い無いとユーキは考えていたため、体を光らせるウェンフを見つめながら真剣な表情を浮かべる。


「電気を纏う混沌術カオスペルか。ありゃあ、かなり強力な能力だな」


 ウブリャイはウェンフの混沌術カオスペルが強力な能力だと感じ、ユーキも弟子であるウェンフが強い力を得られたことを嬉しく思っていた。

 ユーキとウブリャイがウェンフを見ていると、フィランが一歩前に出てコクヨを右脇構えに持つ。


「……まだ、ウェンフの所に行かないの?」


 フィランが小声でウェンフを助けに行かないのか尋ねるとユーキはハッとする。ウェンフが混沌術カオスペルを開花させたことに驚いて本来の目的をスッカリ忘れていた。

 呆然としていたことを恥ずかしく思いながらユーキは月下と月影を構え直し、ウブリャイもハンマーを両手で強く握りながらウターヴェルを睨んだ。


「いつまでも驚いてる場合じゃないよな。急いでウェンフを助けに行こう!」

「へっ、お前が言っても説得力ねぇな」

「うう……」


 鼻で笑うウブリャイを見ながらユーキは僅かに表情を歪める。ウブリャイに言ったことは正しいため、何も言い返すことができなかった。

 ユーキは軽く首を横に振り、ウェンフを助けることだけを考える。気持ちが落ち着くとユーキはウターヴェルに向かって走り出し、フィランとウブリャイもそれに続いて走った。

 三人が走り出した時、ウェンフはナイフを構えながらウターヴェルを睨んでいる。不思議とウターヴェルに対する恐怖は最初と比べると小さくなっており、ウェンフは体を震わせることなくウターヴェルと向かい合っていた。


「この虫けらのガキがぁ! 何度も何度もふざけた真似をしやがってぇ!」


 ウターヴェルは声を上げながら錘で地面を強く殴る。左手の痛みと痺れは既に取れており、ウターヴェルは再びウェンフに対する怒りを露わにした。

 ウェンフは電気を纏ったままゆっくりと後ろに下がる。混沌術カオスペルが開花したことでウェンフは自分の混沌術カオスペルがどんな能力なのか自然と理解し、どうすれば上手く使えるのか少しずつ分かるようになってきていた。

 だがまだ混沌士カオティッカーなったことを受け入れ切れていないためか、進んで混沌術カオスペルの能力を使おうとしない。

 積極的に混沌術カオスペルを使って戦うべきか、それとも慎重になるべきかウェンフは小さく俯いて考える。すると、俯いたことで隙を見せたウェンフに向かってウターヴェルは錘を勢いよく振り下ろす。どうやらウターヴェルは電気で自分にダメージを与えたウェンフを食べようと思わなくなっているようだ。

 振り下ろされる錘に気付いたウェンフはハッと顔を上げて迫ってくる錘の鉄球を見つめる。ウェンフは鉄球を見るとナイフを持つ手に力を入れ、再び体を光らせて電気を周囲に放つ。電気は錘に触れると柄を伝ってウターヴェルの右手に到達した。


「ぬおおおおおぉっ!!」


 先程感じた痛みが今度は右手に走り、ウターヴェルは痛みのあまり思わず錘を握っていた右手を離す。錘はウェンフに振り下ろされることなく真っすぐ飛んで行き、十数m離れた先の地面に落下した。


「す、凄い……」


 自分の混沌術カオスペルがあまりにも強力なため、ウェンフは目を丸くする。強力なベーゼを圧倒するだけの力を秘めていたことにウェンフは驚きを隠せずにいた。

 ウェンフが驚いている間、ウターヴェルは右手の痛みに耐えながら険しい表情を浮かべ、ウェンフを見つめながら口を開ける。近づいて攻撃するのは危険だと感じ、毒を吐いて攻撃するつもりのようだ。

 ウターヴェルは口を開けて毒を吐く態勢に入り、ウェンフもウターヴェルがまた何か仕掛けてくると感じて緊迫した表情を浮かべた。だがその時、ウターヴェルの背後から跳び上がった攻撃でとウブリャイが姿を現し、二人の姿を見たウェンフは目を見開く。


「これ以上、その子に手を出すな!」


 ユーキは双月の構えを取りながら強化ブーストの能力を発動させて両腕の腕力を強化する。ウブリャイも衝撃インパクトを発動させ、自分の攻撃で発生する衝撃を増幅させた。

 背後からの気配に気付いたウターヴェルは振り向いてユーキとウブリャイを目にする。攻撃してくると悟ったウターヴェルは回避しようとするが、回避する前に二人が先に攻撃を仕掛けた。


「ルナパレス新陰流、朏魄ひはく!」

「うぉりゃあぁ!」


 叫んだユーキは月下と月影でウターヴェルの背中に袈裟切りを放ち、続けて左から横切りを放ち攻撃した。ウブリャイも両手で握ったハンマーを勢いよく振って背中を殴打する。

 ユーキの攻撃によってウターヴェルはハーフアーマーごと切り裂かれ、ウブリャイの攻撃もウターヴェルに強い衝撃を与えた。

 二人の攻撃を受けたウターヴェルは大きな叫ぶ声を上げる。ユーキとウブリャイの攻撃は強化ブースト衝撃インパクトによって威力が大きくなっているため、ウターヴェルが装備しているハーフアーマーも意味が無かった。

 背中の激痛にウブリャイはふらついて片膝をつき、攻撃を成功させたユーキはウブリャイは地面に下り立つと素早く後ろに跳んで距離を取る。ウェンフもウターヴェルが苦しんでいる隙にユーキの下へ走って合流した。


「ウェンフ、大丈夫か?」

「ハイ、大丈夫です!」


 返事をするウェンフを見てユーキは問題無いと感じ、小さく笑みを浮かべる。ただ、ウェンフは未だに電気を体に纏っているため、近づきすぎて感電しないよう、さり気なく距離を取った。

 膝を付いていたウターヴェルは背中の痛みに耐えながらユーキたちの方を向き、鋭い目で睨みつける。ウターヴェルと目が合ったユーキたちも攻撃を警戒して身構えた。


「お、おのれぇ! 虫けらの分際でぇ!」


 ウターヴェルは低い声を出しながらユーキたちを睨むと両手で地面を勢いよく掘り始める。地面を掘るウターヴェルを見たユーキとウブリャイはまた地中から攻撃を仕掛けようとしていると気付き、潜られる前に止めようと走り出した。


「……させない」


 ユーキとウブリャイが止めようとした時、ウターヴェルの左側にフィランが回り込み、上段構えを取りながら暗闇ダークネスを発動させる。

 暗闇ダークネスが発動したことでフィランを中心に闇がドーム状に広がってウターヴェルを呑み込む。闇が広がるのを見たユーキとウブリャイは急停止し、闇に呑まれないよう慌てて後ろに下がった。

 闇に呑まれて視覚を封じられたウターヴェルは地面を掘る手を止めて両腕を大きく横に振り回す。前に闇に呑まれた時に錘を振り回してフィランを近づけないようにしたため、今回も同じ方法でフィランを接近させないようにしようと考えたのだ。

 しかし、フィランも自分を近づかせないためにウターヴェルが暴れることは分かっていたのか、近づかずに後ろに跳んで距離を取り、上段構えを取ったまま足元にある小石や砂を浮かび上がらせてコクヨの刀身に纏わせた。


「……砂石嵐襲させきらんしゅう


 呟いたフィランはコクヨを振り下ろし、刀身に纏わせている小石や同じ大きさに固められた砂をウターヴェルに向かって放つ。飛ばされた小石と砂はウターヴェルの全身に命中し、攻撃を受けたウターヴェルは声を上げながら両手を地面に付けた。

 ウターヴェルが穴掘りを止めるとフィランは追撃するためにコクヨを構え直す。だが、ウターヴェルも大人しくやられるつもりはないようで、右手で土を掴むと小石と砂が飛んで来た方角に広げるように投げた。闇で視覚が封じられても広範囲に土を投げれば命中するかもしれないと考えたのだ。

 投げられた土はウターヴェルの予想どおりフィランの方へ飛んで行く。一度ウターヴェルが投げた土をその身に受けているフィランは当たってはならないと感じ、土を見ると左へ跳んで回避した。

 土を回避したフィランは急いで体勢を直すが、暗闇ダークネスの発動限界時間が来てしまい、闇は収縮を始める。フィランは止めをさせなかったことを悔しく思っているのか、とても小さく不満そうな声を出した。

 闇が消えて視覚が戻ると、ウターヴェルは再び地中に潜ろうと地面を掘り始める。すると視界にユーキの姿が入り、ウターヴェルはユーキに視線を向けた。ユーキは月影を鞘に納め、両手で月下を握りながら上段構えを取っている。


「これ以上戦いが続くとこっちに限界が来ちまうんだ。悪いけど、これでケリを付けさせてもらうぞ!」


 ユーキはそう言い放つと強化ブーストを発動させて両腕と両肩を強化し、ウターヴェルを睨みながら月下を強く握った。


「ルナパレス新陰流、湾月わんげつ!」


 大きな声を出しながらユーキは月下を振り下ろし、ウターヴェルに向かって月白色の斬撃を放つ。ルーマンズの町で湾月を使ってからユーキは何度も練習をし、今では失敗することなく斬撃を放つことができるようになっていた。

 斬撃は真っすぐウターヴェルに向かっていき、ウターヴェルは両腕を交差させて斬撃を防ごうとする。下等な人間の攻撃など腕でも簡単に防げるだろうとこの時のウターヴェルは思っていた。

 だがユーキの放った斬撃は交差するウターヴェルの両腕を真ん中から両断し、そのままウターヴェルに命中して頭部から胴体まで続く深い切傷を付けた。

 両断された腕は地面に落ち、頭部と胴体の切傷からは血が流れる。ウターヴェルは他のベーゼと比べて体が丈夫であるため、腕は両断できても頭部と胴体は両断できなかった。


「ば、馬鹿な……上位ベーゼの俺が……こんな、虫けらどもにぃ……」


 頭部を斬られたことで決定的なダメージを受けたのかウターヴェルはふらつきながら前に倒れる。そして、ウターヴェルの巨体はそのまま黒い靄と化して消滅した。

 ウターヴェルが消滅したのを見たユーキはゆっくりと息を吐いて気持ちを落ち着かせる。そして、もう一度広場を見回してベーゼの生き残りがいないか確認すると勝利を確信してその場に座り込んだ。


「……ふぅ~、終わったぁ」


 ユーキは両足を前に伸ばし、両手で支えながら上半身を後ろに倒す。そんなユーキにつられるようにウブリャイとウェンフも座り込み、離れていたフィランも合流する。ベーゼとの戦いが終わって緊張が解けたせいか、座り込むと同時にウェンフが纏っていた電気も消えた。

 アイカたちもウターヴェルが倒されたのを見て安心したのか笑みを浮かべたり、息を吐いたりして気持ちを落ち着かせる。そんな中、リーファンは立ち上がってウェンフに駆け寄り、座り込んでいるウェンフの背後からそっと肩に手を置いた。


「リーファンお姉ちゃん?」

「ウェンフ、大丈夫? どこか痛むところはない?」

「う、うん、大丈夫」

「そう、よかった……」


 リーファンがウェンフが無事なのを確認すると安心して深く息を吐く。ウェンフがウターヴェルに蹴り飛ばされたのを見た時は頭の中がどうにかなりそうなくらいショックを受けていたため、ウェンフが無事だと知って本当に安心した。

 ウェンフもリーファンと合流すると、リーファンがウターヴェルに噛まれたことを思い出して左腕の傷がを確認する。

 しかし噛まれていた箇所は最初から何も無かったかのように綺麗になっており、ウェンフは一瞬キョトンとした。だが、リーファンが無事なのは確かなので深く考えずにリーファンの無事を喜んだ。

 姉妹の無事を喜ぶウェンフとリーファンをユーキは静かに見守り、ウブリャイも黙って二人を見ている。そんな中、目が合った二人は目の前の商売敵を見て小さく笑った。


「お前、ガキのくせになかなかやるじゃねぇか。体が小せぇから中身も小せぇんじゃねぇかって思ったぜ?」

「俺もアンタたちは接近戦で敵を叩きのめすなんて聞いたから、後先考えずに突っ込む連中かと思ってたけど、意外と冷静な戦い方をするんだな」

「へっ、言うじゃねぇか」


 互いに相手を認めたのか、ユーキとウブリャイは挑発するようなことを言われても笑って流す。そんな二人を見たウェンフは意外そうな表情を浮かべ、リーファンはクスクスと小さく笑った。

 その後、ユーキたちはアイカたちと合流し、怪我などの確認をしてから広場の奥を調べる。奥にはフォンジュから聞いたとおりミスリルの鉱脈があり、鉱脈を見たユーキたちは驚くと同時に鉱脈のせいでウターヴェルの餌にされてしまった人たちを気の毒に思った。

 鉱脈を確認した後、ユーキたちはベンロン村に戻るために広場を後にする。


――――――


 荒野の中央付近、広くて枯れ木の多い場所に一人の幼女の姿があった。幼女は岩の上で胡坐を掻きながら南東にある岩山を見ている。

 幼女はユーキと同じ十歳くらいで身長も殆ど変わらない。外ハネの入った萌葱もえぎ色のミディアムヘアに若干鋭い黄色い目、エルフのような長い耳をしている。灰色の長袖に明るい緑のミニスカートを穿いた格好をしており、組んでいる足の上には金色の装飾が入った陶器製の白い小さなアンティークボックスが置かれていた。そして、右手の甲には混沌紋が入っている。


「あ~あ、ウターヴェルの奴、負けちゃったのね」


 岩山を見ながら幼女はつまらなそうな顔をし、アンティークボックスの蓋を開ける。中にはクッキーが沢山入っており、幼女はその中の一つを摘まんで口に入れた。

 幼女は胡坐をかいたまま頬杖をし、音を立てながらクッキーを食べる。彼女の態度と発言からベーゼと関りを持つ存在のようだ。


「ケンプファルに続いてウターヴェルまでやられるなんて……まったく、アイツらは上位ベーゼの恥ね」

「そんなこと言ったら可哀そうだよぉ~」


 不満そうな顔をする幼女の背後から若い女性の声が聞こえ、幼女はゆっくりと後ろを向く。幼女が座っている岩の下では身長170cmほどで十代後半ぐらいの少女が立っている。少女は濃い橙色のショートボブヘアに赤い目をしており、頭には赤い大きなリボンを付け、白、黄色、橙色の三色が入った肩出しドレスをを着ていた。そして、右手には開いた薄い黄色の日傘が握られ、手の甲には混沌紋が入っている。

 少女は岩に座る幼女を見上げながら満面の笑みを浮かべており、幼女は少女を見ながら目を細くする。


「あら、マドネーじゃない。こんな所で何してんのよ?」

「あ~、久しぶりに会ったのに冷たい態度ぉ~。そんな態度取るとユバちゃんのこと、嫌いになっちゃうよぉ?」


 マドネーと呼ばれた少女は軽く頬を膨らませて怒ったような表情を浮かべる。幼女は軽く鼻を鳴らすと再び岩山の方を向いた。


「別にアンタに好かれたいなんて思ってないからいいわよ。あと、ユバちゃんって呼び方はやめてって言ってるでしょう? ちゃんとアローガって呼びなさい」

「えぇ~、ユバちゃんの方が可愛いのにぃ~。それに二人っきりなんだから“本当の名前”で呼んでもいいでしょう?」

「例え二人だけでも此処は敵地、軽々しく口にしないで」

「ちぇ~、分かったよぉ、アロちゃん」


 ムスッとしながらマドネーは足元に落ちている小石を軽く蹴り飛ばす。自らをアローガと名乗った幼女は岩山を見つめながら鬱陶しそうな顔をする。


「……それで、何しに来たの? まさか挨拶しに来ただけって言うんじゃないわよね?」


 アローガが自分の下を訪ねて来た理由を訊くとマドネーはあっ、と何かを思い出したような反応を見せ、再び笑顔を浮かべながらアローガの方を向いた。


「そうそう、忘れてた。実はベギーちゃんから伝言があって伝えに来たのぉ」

「ベギアーデから?」

「うん。なんかぁ、また大陸の何処かに転移門が開くみたいだから、もし見つけたらその転移門を護れって言ってたよぉ」

「そう、分かったわ。……ところで、他の三人はどうしてるの? ちゃんと自分たちの役割を全うしてるんでしょうね?」


 若干目を細くしながらアローガはマドネーの方を向く。すると、マドネーはニコッと笑いながら日傘を回した。


「うん、皆頑張ってお仕事してるみたいだよぉ。アロちゃんも頑張ってお仕事してねぇ~」

「フン、いつもやりたいことをやってるだけのアンタが言うんじゃないわよ」

「またまたぁ、そんなに褒めちゃってぇ~」


 頬を僅かに赤く染めながらマドネーは恥ずかしがり、アローガは能天気なマドネーの姿を見て再び不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 しばらく岩山を見ていたアローガはアンティークボックスの蓋を閉じると右手で持って立ち上がり、左手でスカートや服に付いているクッキーのカスを払い落とす。


「さてと、あたしはそろそろ行くわ。ウターヴェルが負けたことをアイツらに報告しないといけないしね」

「……ねぇねぇ、ウタちゃんを倒したのってどんな奴だったのぉ? やっぱり、メルディエズ学園の生徒ぉ?」

「ええ、此処から魔法を使って覗いてたけど顔とかはハッキリ見えなかったわ。でも格好からしてメルディエズ学園の人間であることは間違い無いわ。あと、冒険者や一般人も何人かいたわね」


 アローガからウターヴェルを倒したのがメルディエズ学園の生徒だと聞いたマドネーはしばらく無表情でアローガを見つめ、やがれニヤリと狂気に満ちた笑みを浮かべる。


「……そぉ~、やっぱりメルディエズ学園の生徒は強いんだぁ! 早くこの手で切り刻んでみたいなぁ。泣き喚く姿を見たいなぁ。動かなくなるまで虐めてあげたいなぁ~!」


 少し興奮した様子を見せながらマドネーは踊るように回り始め、アローガはそんなマドネーを黙って見下ろしている。


「いつになったら生徒と戦えるんだろう、チョー楽しみ♪ ウフ、ウフフフフ」


 マドネーが不気味な笑い声を出すと足元に紫色の魔法陣が展開し、その直後にマドネーは何処かへ転移した。マドネーが消えるとアローガの足元にも紫の魔法陣が展開される。


「……普段は可愛い子を気取ってるけど、アンタがあたしらの中で一番おっかないわよ」


 アローガはその場にいないマドネーに嫌味のような言葉を言い放つと転移してその場から消えた。


――――――


 ベンロン村に戻ったユーキたちは岩山での出来事や自分たちが得た情報を全てバンホウや村人たちに伝えた。

 岩山にミスリルの鉱脈があり、同じ場所にベーゼが棲みついていたこと、フォンジュが鉱脈を手に入れるためにベーゼと取り引きして若者を餌として提供したこと、そしてベンロン村から連れていかれた若者たちも餌にされたことをユーキたちは隠せずに全て伝え、話を聞いたバンホウたちは驚愕した。

 村人の中には若者をベーゼの餌にしたフォンジュに怒りを懐く者、若者たちが死んで悲しむ者もいた。バンホウとメイチェンも自分の利益のために村の若者たちがベーゼに差し出されていたことを知ってショックを受け、ユーキたちはそんなバンホウたちを見ながら気の毒に思う。

 大切な家族や身内を失って村人たちが悲しみに暮れる中、バンホウは悲しみに耐えながら村人たちに声をかける。家族を失って辛いかもしれないが、いつまでも悲しんではいられない。悲しみを乗り越え、死んでいった者たちの分まで精一杯生きようとバンホウは力強く村人たちに語り掛けた。

 バンホウの話を聞いた村人たちの中にはすぐに立ち直れずに落ち込んでいる者もいるが、悲しみを押し殺して立ち直る村人も大勢おり、悲しんでいる村人たちを慰めながら自分たちがこれから何をするべきかを考える。ユーキたちは辛い気持ちと戦いながら乗り越えようとする村人たちを見て強い心を持っていると感服した。

 バンホウたちが今後のことについて話し合いを始めるとウブリャイがバンホウに声をかけ、シェンタンの町でミスリルの鉱脈の所有権を登録すればミスリルの鉱石がベンロン村の物になることを伝え、話を聞いたバンホウは驚く。

 ウブリャイの話によるとフォンジュはゴウシャン商会の役員であったため、登録しようとしても所有権を商会に奪われてしまうが、ベンロン村の住人なら商会に登録する権利を奪われることなく登録できるだろうと伝えた。

 話を聞いていたユーキがフィランに尋ねると、フィランもウブリャイの言っていることは正しいと話し、バンホウに登録することを薦める。

 登録を薦められる中、バンホウはなぜウブリャイに鉱脈の話をしたのは尋ねた。バンホウの問いかけに対し、ウブリャイは知らなかったとは言えフォンジュに加担してしまったことへの償いとして鉱脈のことを教えたと話す。

 バンホウは武闘牛に責任は無いと語るが、ウブリャイはそれでは自分たちが納得できないので登録してほしいとバンホウに頼み、ウブリャイの意志の強さに負けたバンホウは登録することを決めた。

 ミスリルの鉱脈の所有権を登録すればベンロン村の暮らしも大分良くなるだろとユーキたちは感じ、バンホウたちを見ながら笑みを浮かべる。

 それからしばらく経ち、村人たちが落ち着くとユーキたちはメルディエズ学園に戻るための準備に取り掛かる。学園までの距離を考えるとすぐに出発しないと依頼期間中に戻れなくなるのでユーキたちは手早く準備をした。

 準備が済むとユーキたちはベンロン村の入口前まで荷馬車を移動させた。ユーキ、アイカ、フィランは荷台に乗り、御者席にはミスチアが乗っている。武闘牛も一緒に村を出るために荷馬車を入口前に移動させており、御者席にウブリャイ、荷台にはベノジアたちが乗っていた。

 二台の荷馬車の近くにはウェンフとリーファン、バンホウと一部の村人が立っている。ユーキたちを見送るために集まったのだ。


「皆様には本当にお世話なりました」


 バンホウはベンロン村を代表してユーキたちに感謝の言葉を伝え、村人たちも軽く頭を下げる。ユーキたちはバンホウたちを見ながら小さく笑った。

 リーファンも自分を助けてくれたユーキたちに感謝して微笑みを浮かべている。しかし、ウェンフは少し寂しそうな顔をしていた。


「……ユーキ先生、本当に行っちゃうんですか? まだ剣術を全部教わっていないのに……」


 ウェンフは荷台に乗るユーキを見ながら尋ねる。ウェンフは弟子になったのに剣術を全て教えてもらえなかったため、ユーキが帰ってしまうことに抵抗を感じていたのだ。


「剣を教えられるのは三日だけって約束なんだから仕方ないさ。お前には最低限の基礎や技術を教えた。あとはお前自身の力で腕を磨くんだ」

「でも……」

「それにお前は混沌術カオスペルを開花させた。それを上手く使えば俺の剣を全て教わっていなくても強くなれるはずだ」


 ユーキはウェンフの右手の甲に入っている混沌紋を指差し、ウェンフも自分の混沌紋を見つめた。リーファンを助けたいという強い意志が開花させた新しい力、これを使いこなせば今以上に強くなり、リーファンを護ることもできるかも。混沌紋を見ながらウェンフはそう思った。

 しばらく混沌紋を見つめたウェンフは何かを決意したような表情を浮かべてユーキの方を向いた。


「……分かりました。私、先生から教わった技術とこの“雷電サンダーボルト”を使ってもっと強くなります」


 ウェンフを見ながらユーキやアイカたちは小さく笑う。混沌術カオスペルを開花させればその情報が自然と理解できるようになるため、ウェンフは既に自分の混沌術カオスペルの名前を理解していた。

 ユーキたちが新たな決意を懐くウェンフを見ていると、リーファンがユーキたちに一歩近づいて軽く頭を下げた。


「皆さん、本当にありがとうございました。おかげでもう一度ウェンフと再会することができました」

「お礼ならウェンフに言ってください。あの子がいたから貴女を助けることができたんです」


 そう言ってユーキはチラッとウェンフを見つめ、リーファンもウェンフの方を見ながら優しく彼女の頭を撫でる。撫でられた時、ウェンフは心地よさそうな顔をしていいた。


「そう言えば、先程村長さんから聞いたのですが、リーファさんとウェンフちゃんはこの村で暮らすことになったそうですね?」


 会話を聞いていたアイカがリーファンに尋ねると、リーファンはアイカの方を向いて軽く頷いた。


「ハイ、フォンジュさんが亡くなって自由になったので孤児院に戻ろうと思っていたのですが、ウェンフから孤児院が無くなったと聞いてどうするか悩んでいたんです。そんな時、村長さんがこの村で暮らさないかと言って下さったんです」


 リーファンはベンロン村を眺めながら静かに語り、ユーキたちも同じように村を眺める。

 ベンロン村はフォンジュのせいで若者が殆どいないため、リーファンやウェンフのような若い存在を必要としている。バンホウがウェンフとリーファンを村で暮らさせることにしたのは二人の居場所を作る以外にも、村が若者を得るためという理由もあったのだ。


「では、これからはこの村の手伝いをしながら生活を?」

「最初は村の手伝いをしていくつもりですが、しばらくしたらウェンフと一緒に冒険者になって村に恩返しをしようと思っています」

「そうですか、頑張ってください」


 冒険者になろうと言う当初の目的を忘れていないリーファンを見てアイカは応援した。

 リーファンは既に魔法が使え、ウェンフもユーキから剣術を学び、混沌術カオスペルも開花させている。二人ならすぐに冒険者として功績を上げるこができるとユーキたちは考えていた。


「冒険者になるんだったら、俺らのところに来るか?」


 ユーキたちがリーファンと話をしているとウブリャイが会話に加わり、ユーキたちは一斉にウブリャイに視線を向ける。


「そっちのウェンフとか言う嬢ちゃんは混沌士カオティッカーである上に根性がある。嬢ちゃんにその気があるならウチでこき使ってやるぜ? 勿論、リーファンもな」


 ウブリャイは自分の髭を整えながらリーファンの方を向き、目が合ったリーファンは意外そうな表情を浮かべた。


「ウチは本来、戦士以外の冒険者は仲間にしないんだが、嬢ちゃんが仲間になるなら特別に歓迎する。……どうだ?」


 改めて冒険者になった後、武闘牛に来るかウブリャイはウェンフとリーファンに尋ねた。リーファンは少し戸惑うような反応を見せながら考える。するとウェンフが僅かにムッとしながらウブリャイを見つめた。


「大丈夫! アンタたちの力を借りなくても、私とお姉ちゃんはやっていける!」

「ハハハハッ! そりゃ残念だ」


 迷うことなく断ったウェンフを見てウブリャイは愉快そうに笑う。まるでウェンフが断るのが分かっていたかのようだった。

 ウブリャイが笑う一方で荷台に乗っているベノジアは誘ってもらったのに断ったウェンフは若干不満そうに見ており、ラーフォンは小さく笑っている。イーワンはウェンフを見ながら「せいぜい頑張りな」と言いたそうに笑っていた。


「さぁて、俺らはそろそろ行かせてもらうぜ。フォンジュの旦那が死んだことやベーゼと遭遇したことをギルドに知らせねぇといけねぇからな」


 話が終わるとウブリャイは前を向き、手綱を握って出発しようとする。そんな時にユーキと目が合い、ウブリャイはユーキを見てニッと笑う。


「ユーキ、とか言ったな。これからもせいぜい頑張れよ?」

「アンタもね」

「へっ、あばよ、ボウズども」


 ウブリャイは馬に指示を出して荷馬車を走らせた。ウブリャイたちの乗る荷馬車は静かに離れて行き、バンホウたちはそれを見送る。別れの言葉は口にしなかったが、心の中では鉱脈の情報を提供してくれた武闘牛に感謝していた。


「……よし、それじゃあ俺たちも行こう」


 武闘牛を見送ったユーキは自分たちも出発することにし、御者席に座っていたミスチアはユーキの言葉を聞くと手綱を握る。


「それじゃあ、俺たちも行きます。お世話になりました」

「いえ、こちらこそありがとうございました」


 バンホウはユーキにもう一度礼を言い、村人たちも感謝の笑みを浮かべる。バンホウたちが感謝する姿を見たユーキは最後にウェンフに視線を向けた。


「ウェンフ、お前は混沌士カオティッカーになって強い力を得た。今のお前なら並のモンスターも楽に倒せるはずだ。だけど、自分の力を過信して相手を軽く見たりするなよ? 相手を弱く見たり、自分の力に溺れたりすれば、いつか身を滅ぼすことになる」

「ハイ、先生」


 ウェンフが真剣な顔で返事をするとユーキは黙って「よし」と頷く。ユーキも自分の弟子が間違った道を歩むことを望んでいないため、ウェンフが優しく、誰かを護れる強い存在になってもらいたいと思っていた。

 挨拶が済むとミスチアは荷馬車を走らせ、ユーキたちはベンロン村を出発する。ユーキとアイカはウェンフたちを見ながら手を振り、ウェンフたちも手を振って見送った。

 やがてベンロン村が小さくなり、ウェンフたちの姿も見えなくなるとユーキは荷台に揺られながら青空を見上げる。


「今回は色んな意味で大変だったわね」

「ああ。でも、上位ベーゼを倒すこともできたし、俺自身も色んなことを学ぶことができたよ」

「色んなこと?」


 アイカが小首を傾げると、ユーキはベンロン村がある方角を向いて微笑みを浮かべる。


(……弟子を取って何かを教えるって言うのも案外悪くないかもな)


 既に見えなくなっているウェンフのことを思い出しながらユーキは心の中で呟いた。

 今回、ユーキは弟子を取ることで剣術の教え方だけでなく、弟子が成長する喜びを知ることができた。弟子を取らない主義だったユーキもウェンフに剣術を教えたことで弟子を取るのもいいかもしれないと考えるようになったのだ。

 自分の考え方を変えるきっかけを与えてくれたウェンフにユーキは心の中で感謝し、そんなユーキを見ていたアイカは不思議そうな顔をする。荷馬車の後をついて来ているグラトンはユーキの顔を見ながら軽く鳴き声を上げた。

 様々な思いを懐きながらユーキたちは荷馬車に揺られ、メルディエズ学園へと戻って行くのだった。


今回で五章終了です。

短めの章になると思っていましたが、予想以上に長くなってしまいました。次の章は短めにする予定です。

しばらくしたら第六章を投稿します。


今回も一部のキャラクターの名前の由来を説明させていただきます。今回は五章に登場したキャラクターのみとなっています。


まず、ウェンフの名前は中国語で「やさしい」を意味する「ウェンフー」から来ています。

次にウブリャイですが、彼の名前はロシア語で「頑固」を意味する「ウプリャーミイ」が由来です。

マドネーは英語で「狂気」を意味する「マッドネス」が由来となっています。

アローガは英語で「傲慢」を意味する「アロガント」から来ています。


以前も説明したと思いますが、児童剣士のカオティッカーのキャラクターで特別な存在の名前は性格や感情が由来となっています。

ただ、性格と感情が名前になっているからと言ってそのキャラクターたちが名前どおりの性格をしている訳ではありません。


最後にウターヴェルの名前ですが、ドイツ語で「地底」を意味する「ウンターヴェルト」が由来です。


以上で今回の名前の由来説明は終了します。

次の章もよろしくお願いいたします。

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