プロローグ
第一王子の側近、ヒソップ・オフィキナリスが殺されたという事件は、社交界を大きく揺らした。
そしてそれが全ての始まりだった。
社交界で騒がれている内容は‘ヒソップが死んでしまった’ということではなく、武に突出した家の子が負けるほど強い人物が王都内にいるかもしれないということだった。また、オフィキナリス家が第一王子派だったため派閥の変動が激化する原因になるのではという不安が広まった。
彼が亡くなったのは『運がなかった』の六文字で片づけられた。
オフィキナリス家は、代々王家の盾と矛の役目をするほど武術の腕がいいので普通なら死ぬような事はない。しかし長男が亡くなってしまったため、彼の両親は次男に家督を継がせる教育を施すのに躍起になった。彼の弟達は、彼の腕が悪かったんだと考え兄のような愚鈍な人間にならないようにと武の鍛錬に磨きがかかった。第一王子は準備していたかのように、すぐに別の人物を彼の代わりに取り入れた。ヒソップは、第一王子のそばにずっと付いていたため友人はいないに等しかった。
そんな中、一人の少女だけは彼の死を嘆き続けた。彼女の名前はリコリス・ラジアータ。伯爵家の長女、ヒソップの婚約者である。ラジアータ家は自暴自棄になったリコリスを助けるため、彼を殺した人物を探したが所詮は伯爵家。確信を持てる材料は揃わなかった。しかしオフィキナリス家との婚約が解消されたため、第一王子派を抜け中立派になることを示した。
派閥争いは時に人が死ぬことがある。
読んでいただき、ありがとうございます。楽しんでいただける展開にできるよう、頑張っていこうと思います。