8.
ディリアのあの衝撃的な告白の後。
ただの友人の筈の男のあまりにも赤裸々な恋愛感情を聞かされたせいで、私は自分の部屋の床に蹲っていた。
「おい、テッサ?体調が悪くなったのか?」
「誰のせいだと思っているの」
「……俺、か。別に言うつもりはなかったんだ。お前が俺には関係ないとか言うから」
蹲る私を立ち上がらせようと手を差し出してきたディリアを見上げれば、顔を赤らめている。無駄に顔が良いのが更に心臓に悪い。それに彼は別に告白するつもりでしたわけではなかったらしい。本当に心臓に悪すぎる男だ。
「関係ないと言ったのは謝るわ。でも、こんなに弱ってる姿、情けないでしょう。失恋して泣きそうになって、無気力になっている私なんて……私らしくない。気持ちが悪いわ!!こんな私は最低!!!」
だから遠ざけるために、あんな心にもない事を言った。
私は、こんな恋なんて意味の分からないかつ身勝手な感情に振り回されている自分が恥ずかしくて仕方がないのだ。しかしそれと同時に、この感情を相手に受け取ってもらえないことが辛くて仕方がなかった。私が好きな人が私のこの醜い心を受け取ってくれないということが悲しかったのだ。あまりにも情けない。
「俺はお前らしくないからって、別に非難したり離れたりなんてしない。それに正直あの男――ゼレクのせいで泣かされているテッサを見て、嬉しいと思っちまったんだよ」
「うれ、しい?」
「だって失恋が確定していた俺にもチャンスがあるかもしれないってことだろ。そんなこと考えた俺の方が気持ち悪いし、最低だ」
「しつ、れん」
改めて言われて嫌悪の感情が更に深くなる。ゼレクがいない間、ずっと近くにいてくれた親友とも言える人を無意識に傷つけていた。
きっと私のせいでずっと今の私のような感情を持ち続けていたであろうディリア。そんな彼が優しそうに目を細める。何故、そんな優しい目を出来るのだろう。何故、ずっと振り向かなかった私に優しく出来るのだろう。不思議で仕方がなかった。そして心が脆く、緩み切っていた私は聞いてしまった。
「ディリアはなんで今まで平気だったの?私だったらこんな最悪な感情を抱え続けるだなんて……耐えられない」
「平気なんかじゃねえ。俺の場合は、その、少しズルい手段を使ったっつーか。まあとにかく、軽減できてただけだ」
「ズルい手段?何それ。まるで恋心を消す魔法があるみたいじゃ――」
少しだけそんなものがあればいいと思って言ったその言葉によって固まったディリアを見て、確信してしまった。
今まで調べたことも聞いたこともなかったが、『恋心を消す魔法』というのは存在するのだということを。




