11.
魔法発動の光が消えた後に感じたのは、心の一部が欠損したような妙な感覚、そして重い錨から解放されたような開放感だった。
今まで私は何で悩んでいたのだろう。ゼルク=ディートヘルム。あの人を好きだったという自分の気持ちは、《《言葉の意味として》》は憶えている。でもその感情がどんなものだったのか、彼に対して何を感じていたのか、なんで『低俗な人間』や『嫌い』なんて言われただけであそこまで落ち込んでいたのか、その時の気持ちを……あんなに辛い思いをした筈の、確かに自分のものだった筈の感情を何一つ理解できなかった。
「――い……おい、テッサ!?返事をしろ!」
「ごめん。ボケっとしてた。大丈夫、魔法はちゃんと成功しているわ。私、もうなんでゼルクの事を好きだったのかすら思い出せないの」
「っそれは、大丈夫なのか?」
「ええ。なんだか心にぽっかりと穴が空いたような気持ち。でも不思議。その分気持ちがとても軽いの。きっと前の私は、この気持ちのせいで、かなりの無理をしていたのね」
「……そうか」
ディリアがなんだか悲しそうな、苦しそうな、それでいてどこか安心したような複雑な表情を見せる。きっと私の気持ち……今は消えてしまった感情も含めてを慮った故に出てしまった表情なのだろう。彼は本当に優しい人間だと思う。
でも私は彼のお陰で苦しみから解放されたのだ。そんな顔をしないで欲しかった。だからこそ――。
「今なら課題なんてパパっと熟せちゃいそう。早速闘技場に行こう!」
明るく振舞う。少し落ち込んでいるディリアの足を進ませるために彼の手を取った。今なら空すらも飛べそうなくらいに心が軽いのだ。きっと上手くいく。




