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RPGの世界で生き残れ! 恋愛下手のバトルフィールド  作者: 甘人カナメ
第三章 ゲームのストーリーよ、さようなら
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81.邪神戦の整理



 この世界のギルドは、ざっくり大雑把に捉えるなら「何でも屋さんの仲介役」らしい。

 何か解決したいことがある人がギルドに依頼を出す。依頼金をギルドが一旦預かる。ギルドは難易度をランク付けして、ギルド員へ公募を掛ける。やりたいギルド員が申し出る。仕事が終わればギルドから依頼金を貰って終了。

 依頼内容は様々で、庭の雑草毟りに家の建て直し、恋文代筆に結婚式の手伝い、街近辺の雑魚魔物退治に商人馬車の護衛、などなどなど。

 子供のお小遣い稼ぎからバリバリの専門職まで、多様なギルド員が在籍しているとのこと。


「つまり、ロイは元々ギルド員で、そこから依頼を受けて傭兵になった、と」

「逆のパターンもあるけどな。傭兵稼業をしていたがギルドにも登録しておこう、ってタイプだ」


 なるほど。面白そうだし私もギルドに登録してみようかな。いや、興味は出たけど、忙しすぎてそんなこと無理だったわ。

 納得する私をみて、今度はロイが質問してくる。


「前に聞いたミワの話だと、戦争が身近じゃないってことだったが。ゲームでの戦闘はどういう描写だったんだ?」


 通常戦闘と、戦争パートについて簡単に説明する。

 敵とエンカウントして発生する戦闘は、全員の行動を決めてから行動に移る。いわゆるターン制。リアルタイムのATBタイプは苦手だったから、それもやり込める一因だったね。

 戦争パートは、多くの部隊がオート操作で進む。自分が操作するのは一部隊とか二部隊とかで、それを区切られた盤面で移動させていく。つまり戦略シミュレーションなんだけど、シミュレーションが苦手な人にも取っ付きやすいシステムだったし、それでも苦手ならコンピューターにお任せモードもあった。


「ゲームの戦争戦闘は、過去に世界中で使われた実際の兵法よりも、チェスとか将棋とか、そういう戦略ゲームを下地にしてたんじゃないかな」

「ミワには細かな違いが分からない?」

「ブルフィア以外の場所で鶴翼陣とかの名前は聞いたかな、くらいの知識」


 ロイが一つ頷いてメモをする。実際の細かな戦況報告は対象外、みたいなことが書かれていた。


 似たようなやり取りをしつつ、少しずつ摺り合わせをしていく。これだけでもなかなかの情報量だ。

 ロイの話で一つ気になったのが、この世界の宗教について。ユタル神殿にも関係するから、後からもう一度しっかり聞こう。




 他、今の段階で、ざっくりでも気になることを羅列していく。

 ゲームのあらすじは既に共有されているから、主要な人物について考える。


「傭兵隊の隊長さんたち……特にマリクさんがいないのには驚いたね。こんなに濃いキャラなのに出てないのは何で? って」

「師匠のことも知らなかったんだよな?」

「うん。養父の存在自体、ロイの異動が発表された会議の後に初めて聞いた」


 腕を組んで目を閉じるロイ。


「師匠が参戦すればだいぶ楽だっただろうに」

「そもそも、邪神と面と向かって戦ったのは主人公パーティーの五人だけなんだよね。戦闘場所の外側ではキャスパー王子が結界を張っていて、他の人はその外側って描写だった」


 他、ゲームでは準モブやモブ、あるいは名前だけの登場人物……だけど、現段階で邪神対策に深く関わっている人を挙げていく。モブの例でいくと、トニーさんとかサッシュさんとか。もの凄く関わっているソニア様でも声のない準モブなんだよね。

 この辺りの人たちを上手く動かすことが出来ればアドバンテージになりそうだよね。特にお師匠さん。余裕があったらちょっと考えておこう。




 ******




 さて、本題のユタル神殿について。

 訪問に至る経緯やそこで起こるイベント、出現する敵の情報などをロイに口述筆記してもらう。

 神殿で出現する敵情報の現状比較は特に必要ないだろう。むしろ事前準備に大きく関わるから、先にレオナルド様へ提出してきた。

 残りの情報について話し合っていく。


「エマがティアラを着けて祈らないと、使える回復魔術が限られたままってことか」

「当然、ゲームに出てきていない紫音については不明」

「向こうで試行錯誤、と」


 とか。


「ラルドが一緒に行く必要はあるのか?」

「ないかもね。基本的に五人セットで動いているからというだけかもしれない。ただ、彼は神との契約者の血が流れているから……」

「行った方が賢明か」


 とか。


「エマが聖女となった理由は?」

「幼い頃にユタル神殿近くを通ったら回復魔術が使えるようになった、としか」


 うーん、聖女についての情報は、紫音と話してからの方がいいかな。ひとまずはゲーム内で知り得たことを羅列していく。

 中でも重要そうな点は、邪神に対抗する手段について。




 ゲーム内では邪神と二度戦っている。フェイファーに封じられたものと、ビエスタ……ラヴィソフィ近くに封じられたもの。

 二作目(ブルニ)のボスがフェイファー邪神で三作目(ブルサン)のラスボスがラヴィソフィ邪神。


 流れとしては、ブルニ序盤で聖女のティアラを目覚めさせ、中盤でシャイニー様の元でラルドの記憶を戻し、フェイファーとの併合を経て、フェイファー国内の廃墟神殿に眠っていた邪神との対決。

 ブルサンで、合併に伴う内乱(ブルイチでは内乱未遂だったのが、ブルサンでは本格的な内乱)を抑え、ビエスタ国王と面会してラルドの最終武器『王杖』を受け取り、ラヴィソフィ領内に封印されている邪神を斃す。邪神が消えたことでラルドの王位継承が認められ、ビエスタ国との友好関係を持つラヴィソフィ国の立国を行うところで、ストーリーは完結する。

 ブルニの邪神は、ブルサンのものより弱い。だから、ブルサンで入手する各々の最終武器や最終防具がなくても勝てたというわけ。それに、最弱縛りプレイをした時も、割とゴリ押しで何とかなるタイプだった。攻撃パターンが読みやすいというか……一ターン準備時間をくれたり、スキルで攻撃威力を削れたりする。

 ブルサンのラヴィソフィ邪神は、最終武器防具を装備しないとだいぶキツかった。攻撃も嫌らしく、ターン短縮をランダムで行ったり、状態異常攻撃の威力が高かったり、とにかく考えながら進めないと難しい。

 どういう進め方をしようが、聖女エマちゃんが主人公ラルドに回復魔術をフルにかけ続けることがクリアのコツだった。周囲の雑魚の露払いは、魔術師ケイン・戦士ロイ・魔戦士セリアの役目。彼らは様子を見て邪神へも攻撃を仕掛ける。王杖の攻撃力がかなり高いから、どうしてもラルドがメインアタッカーになるんだよね。

 

 もっとも、どちらもレベルカンストさせて武器防具とアイテムを揃えてしまえば、脳死プレイでも潰せるんだけど!




 ここで気になる点がある。

 ブルニでは戦闘が終わった直後にイベントへ移行し、そこでエマちゃんが『浄化』という回復魔術を使うことで、邪神を封印していた。

 一方、ブルサンではラルドの王杖で邪神を斃している。


 以前聞いたレオナルド様の話で、邪神は斃すことができない――封印するしか道はない、と分かった。だから最後の表現は「ゲームならでは」で、現状とは違う点だと言える。

 じゃあ、封印するための手段は、浄化だけでいいの? 王杖だけでいいの?

 それによって、聖女の役割が大きく変わる。つまり、回復役だけでいいのか、邪神の封印に必須なのか。

 王杖の存在、それに各メンバーの最終武器防具を知っている私がいることで、フェイファー邪神の時点で充分な装備を準備できる可能性が高い。だからブルニの邪神もブルサンと同じように『浄化』なしで倒せるかもしれない。


 聖女の『浄化』は、ユタル神殿で使えるようになる魔術。邪神戦までは『???』表示で使用できなかった。逆に言うと、邪神以外では『浄化』は使わないんだよね。回復魔術とは言うものの、コレって別物なんじゃないかって疑惑も出てくる。

 紫音も聖女だった。だけど回復魔術は使えない。じゃあ、『浄化』は?


「うーん、情報整理って難しい。疑問がどんどん湧いて出てグチャグチャになる……」

「俺は書き出したのを見ながら整理できるが、ミワは全部脳内だもんなぁ」

「私も日本語で書き出そうかな。あ、でも、速記できないからスピード落ちちゃうか。ううむ」


 机に上半身を乗せてぐてーんと伸びる。いつの間にか戻ってきていたエリオ君が、ミントオイルを机の端にそっと置いてくれる。出来る子だ……!




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