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RPGの世界で生き残れ! 恋愛下手のバトルフィールド  作者: 甘人カナメ
第三章 ゲームのストーリーよ、さようなら
74/132

74.ゲームに出てくるフェイファーの情報



 キリッとした顔から一転、「とは言っても、あっちが一区切りしないとねぇ」と口を尖らせて中央を見る紫音。


「ところで美和ちゃん、聖女でもなくて魔術も使えなくて、怪我しまくって一般人としてお城に保護されたって言ってたでしょ? どうしてここにいるの?」


 さっきの現状報告では、当然、軍の内情までは打ち明けていない。私がキッチンの仕事を始めた……というところで止まっている。やっぱり気になるよね。

 ここに来る直前、ソニア様が言った『表向きの仕事』を説明に使おうか。


「私、今、アロマオイル作ってるんだ。この世界には一般人が気軽に使える物がないんだって。

 で、軍に所属しながらオイルの仕事をすることになったの。ラヴィソフィの特産品として扱うことで軍資金確保にも繋がらないか、と期待されて」


 うん、やっぱりこう説明すると、確かに私の一面ではあるね。軍に入った理由を省略しても、何となくそれらしい答えになった。

 作るに至った経緯から説明すると、紫音が目をキラキラさせ始めた。


「もしかして、エステみたいに贅沢に油塗れになるような物じゃなくて、ふっつーに自分で使えるヤツ?」


 あ、そうか。紫音の立場だと、私が次男坊(トム)のお茶会に付き合わされた時みたいな、ああいう侍女さん攻撃が普通になってるんだろう。


「確かに気持ちいんだけど、毎日アレはきっついのよねー。たまにでいいのよ、ああいう贅沢は」


 同意する。

 紫音にしても私にしても、そんな上流家庭ではないんだよ。気後れするよね。話を聞く限り、なかなか慣れないらしい。


「そのオイルの話をしに来たってことは、何か取引に使おうってこと?」

「みたい。私もよく知らないけど、現場で作ってる一人だから一緒に来たんだ」


 むしろ私が来ること前提で全てが組まれたんだけどね。だけど、どう使うか分からないのは本当。

 相変わらずニコニコしながらテーブルに着いているソニア様を見て、少し眉を下げる。本当にどうするんだろう。


「軍資金が欲しいの?」


 軍拡をするのか、と、顔が曇っている。和平を言い出したのは紫音だっていうから、何とかして戦争を避けたいんだろうね。

 大丈夫。私も戦争なんてしたくないよ。ロイやマークや、クルスト軍や城の皆、危険に晒すことなんてしたくない。


「フェイファーを攻めるためじゃなくて、邪神対策だと思う」

「あ、そっか。そっちね」


 紫音が安心したように頷く。


「聖女の仕事、一番大切な仕事は邪神を何とかすること。

 邪神の話を知っているなら、クルスト軍の皆さんも同じ意見でいてくれるの?」

「正確には、クルスト軍の首脳陣、だけどね。一般兵の人たちは、たぶんまだ、フェイファーが攻めてくるのを防ぐのが仕事だと思ってる」


 和平交渉がどうなるのか分からないうちは、前線の兵士さんたちは警戒を続けているはず。


「今は戦争してる場合じゃないのよね。邪神の話が先決だっていうのに、皇王様ったら頭固いんだから」


 皇帝が出陣を推し進めていたらしい。総司令官はシヴァじゃないの?


「シヴァとハーミッドさんは、あたしの説得に折れてくれたよ。

 あたしはね、ラヴィソフィにあるユタル神殿に行きたいんだ。それが聖女の仕事の一つだから」




 再度、ゲームの内容を思い起こす。


 ゲーム内では、フェイファーが何か行動を起こす前に、ラルドたちがエマちゃんを救ってしまった。

 それでは、ラルドが来なかったらどうなっていたか、と仮定してみる。


 封印の弱まってきた邪神の再封印は、フェイファーだって行いたいはず。

 ただし、ラルドがいない以上、前回の封印と同じように、聖女の力とシャイニー様の力を当てにするしかない。


 現在、シャイニー様はビエスタ国首都にいる。おいそれと手は出せない。

 では、もう一方、聖女の力を解放するには?


 必要なのは、ユタル神殿。メーヴ城南西にある古い神殿。

 ここは、クルスト王家が神と契約を交わした場所であり、聖女のティアラの力を解放するのに必要な場所でもあった。

 ゲーム内では、ティアラを手に入れたエマちゃんたちが、神殿で力を解放していた。それによって使える回復魔術が増えるんだ。




 だから、聖女である紫音も、ユタル神殿へ赴いて聖女の力を解放しなきゃならない。それが邪神封印という仕事の第一歩。

 なるほど、理解できた。

 ということは、この和平交渉の最大の目的は――


「あたしが和平を言い出したのもね、何とかしてユタル神殿に安全に行かせてください、ってお願いしたくて」

「どこまで内情を暴露するのですか、聖女様」


 いつの間にか横に立っていたハーミッドが、眉間に皺を寄せて腕組みをしていた。


「そっちはそっちでその話をしてたんでしょ? じゃあ美和ちゃんに教えちゃってもいいじゃない、どうせあたしたちには決定権がないんだし」

「そういう問題ではありません」


 こめかみを押さえながら溜息を零す。どことなくマークに似ている。だけど恐らく、周囲からの振り回され度合いはハーミッドの方が上だね。


「とにかく、次は聖女様も臨席を」


 頷いた紫音は、立ち上がって……一緒に私を促した。え、私も同席しろと?


「彼女は無関係でしょう」

「だってほら、司令官様の奥さんが、美和ちゃんを手招きして呼んでるもの」


 勢いよくハーミッドが振り向き、私もそちらに目をやり、双方共に軽く脱力した。

 さっきまでピンとした緊張が漂っていた中央テーブルが、まるで「こちらにお茶しにいらっしゃい」とでも言わんばかりの弛緩した雰囲気へと変化していたから。


 ……ということはさ、緊張感を醸し出してたのって、ハーミッドなんじゃないの?




 ******




 テーブルに着く前に、またまたゲームのおさらいをしておく。


 フェイファー神聖軍総司令官のシヴァ・ル・フェイファー。26歳。

 彼は皇室第三皇子でもあり、ゲームでは「聖女を国に取り戻すべし」という信条で軍を率いていた知将。

 銀髪碧眼。髪は首の横で緩くまとめている。軍服は白の詰め襟。ロイヤルブルーのマント。右耳にはお守り代わりの赤いピアス。

 孤独な立ち位置で、幼馴染みの副官ハーミッドくらいしかまともに話す人間がいない。


 の、はずが。

 何やらどことなく丸い雰囲気に変わり、ピアスは赤から別の物に変わって……あ、あれはもしかして紫音のピアスとお揃い?

 和平は紫音が言い出したこととはいえ、GOサインを出したのは総司令官の彼であるはずで、つまり武力派だったゲームとはだいぶ違う。




 シヴァの副官、ハーミッド・クロス。28歳。

 シヴァの乳兄弟であり幼馴染みであり右腕。ゲームでは基本的にシヴァと共に出てくる、敵国主要キャラ。

 焦げ茶の髪に焦げ茶の瞳、シヴァと比べて没個性に近い出で立ちだけど、だからこそシヴァの隣で支え続けられたと示唆されていた。


 の、はずが。

 何やら苦労人の風体に変わっている。ゲームではここまで眉間に皺は寄っていなかったよ? 観察した限り、周囲のツッコミ担当のようにも見える。




 ゲームでは大人に見えた彼らも、いつの間にか同年代。それで彼らに対する見方が変わった、ということではなさそう。本当に違っているんだ。


 さてさて。どこまでがゲーム通りの情報(ピース)なんだろう。

 末席に座りながら、私は頭の中で攻略本を広げた。




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