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RPGの世界で生き残れ! 恋愛下手のバトルフィールド  作者: 甘人カナメ
第三章 ゲームのストーリーよ、さようなら
65/132

65.女性と男性の違い



 準モブのエルフ王、デイ王へのお目通りは叶わなかったけれど(そりゃそうだ、謁見するほどの用事ではないし)、見覚えのある王城内の廊下を辿って、裏庭へと出た。

 裏庭と言っても、ちょっとした森。

 ここから先はゲームでも立ち入ったことがないから、あまりキョロキョロしないように気をつけながらも、こっそり周囲を見渡す。

 3DCGで描写されたフィールドよりも、更に綺麗。

 キャスパー王子の美貌といい、特にエルフ関連はゲーム内の表現以上に美麗だと思った方がよさそう。

 ……綺麗すぎて、何となく、少し居心地が悪い。


 先導してくれたエルフのお姉さんが、「どうぞ」と示したのが、思っていたより大きな、エルフ国営の研究所だった。

 トニーさんの目がめっちゃキラキラしてる。

 ロイは、スン、と少し息を吸って、周囲の香りを感じているみたい。

 私は思いっきり深呼吸しちゃったけどね。ちょっとはしたなかった?

 キャスパー王子から感じたような木の香りに、花の香りや緑の香り、水の香り? 私の鼻ではそれくらい大まかにしか分からないけれど、室内にいるのに森の中を歩いているそのままのような空気。

 これは深呼吸したくなるって!




 通された一室には、既にトニーさんと顔馴染みになっていたらしいエルフさんが数人、小瓶を準備して待っていてくれた。

 さあ、本格的なお仕事の始まりだ。




 ******




 まずはティーツリーの原液をもらう。トニーさんが早速作ってくれるそうだ。

 で、その前に、簡単なミーティング。

 香りを重視したいことを伝える。


「香り、ですか。様々な方向性がありますね」


 エルフのお兄さんが長い指を顎に当ててちょっと首を傾げる。麗しい。


「確かにな。ここに来ただけでも、木と、花と、水と、石と、あとは何か香ばしい匂いがしたくらいだ。花や木に至っては、何種類か混じっている。

 更に突き詰めていくと、膨大な種類になるな」


 ロイは私より匂いの判別能力が高いらしい。香ばしい匂いって、何か料理でもしていたの?


「手元にあるのは、ミント、レモングラス、ラベンダー、ティーツリー。サッパリした香りに偏っている感じっすね」


 トニーさんの言葉に頷く。私が覚えていて好みの物をお願いしたらこうなった。

 フローラル系はラベンダーしかないもんね。


「男性は、サッパリしたのが好き、ってイメージがある。

 女性はフローラル系とか甘い香りが好きな人が多い印象」


 売り込む先がシヴァなのか、聖女なのか。両方を見据えて取り揃えた方がいいかな。


「とにかく甘さを重視するなら、バニラでしょうか。

 花で女性人気の高いのは、ローズ」

「あ、薔薇は採算取れないので除外で」


 貴族向けになる。そしてそれはもう存在する。


「では、こういったものは如何でしょうか――」




 と、色々な案を提示してもらった。

 あれ? そういえば。


「季節がバラバラなんですが、すぐに使える物だけを選ばないとダメですよね?」

「ご存知ありませんでしたか。デイ森には、季節それぞれの植生が全て存在します」


 微笑んだエルフのお兄さんに、私も、トニーさんも、目を見開いた。

 何それ凄い。




 ******




 植生全て!? と食いつき、興味の赴くまま変な方向へ進みそうなトニーさんを宥めて、エルフのお兄さん――薬師さんで、お名前はサッシュさんらしい――にいくつかのサンプルをお願いした。

 ティーツリーオイルを作成してもらっている間、私とロイは別室で更なる打ち合わせ。


「横で聞いてて思ったんだが」


 大きく丸っこい字でメモを書きながら、ロイが顔を上げる。


「女性はマッサージに馴染みがあるだろうけど、男ってそうでもない気がするんだよな」


 そう言われれば確かに。

 普通にマークに使っていたから、頭になかった。


「ロイにも何度か使ったけど、使い心地は微妙だった?」

「ああ、いや、そういうんじゃない。あれはあれでいいんだ。

 ただ、自分でやるかって言われるとどうだろう、っていうな」


 ふむ。それじゃあ、どんなのだと身近なのかな。


「身近、ねぇ。香水か?」

「ちょっと違うなぁ。それを作りたいんじゃないんだよね」


 確かに香り重視だけど、あくまでリラクゼーションの一環にしたい。


「リラクゼーション云々は置いておくとして、他に香りを使うシーンを考えるか。

 洗濯仕上げとか、入浴剤やシャワーソープ。

 うーん……こう考えると、あまり香りに縁がないな」

「お洒落ロイでもピンとこないか。じゃあ、逆に、マッサージ以外で身体を休めるのは何かある?」


 腕を組んだロイが眉を寄せて考えている。


「寝るのは除いてだな? 俺の場合なら、そうだな。

 筋肉を酷使すれば、当然熱を持つ。マッサージというより、冷やして落ち着かせることが多い。要は、あまり強く力を入れない。逆に、慢性的な疲労が溜まった場合は、温める」


 ふむふむ。前者はプロ野球投手が肩を冷やしてるようなイメージかな。

 で、後者は、サウナやお風呂。

 そういった話は、紫音の方がよく知ってるんだよなぁ。あの子、スポーツ大好きだから。

 でも、ちょっとヒントをもらえたかも。


「冷やすなら。例えば、ジェル状になっていてそれを塗り広げる動作なら、受け入れられそう?」

「運動後やら、シャワー上がりに、か。アリじゃないか?」


 ふむふむふむ。


「なあ、ミワ。自分から言い出しておいて悪いが、時間足らないんだろ」

「そうなんだけど。男性へのアピールも視野に入れているなら、考えてみる方がいいんだよね」


 ロイと同じように腕を組んで考え込んでいると、メモの束でファシッと頭を叩かれた。


「それなら、ここで悩んでないでトニーに相談してみるか。

 一応、当てはある。薬だ」


 薬でジェル状……あ、塗るタイプの湿布薬?

 頷くロイ。そっか、それもロイは馴染み深いんだ。


「無理かどうか、俺らじゃ分からないだろ? プロに聞くのが一番だよ」


 そうだね。素人考えから始まった話なのに、いつの間にかプロを巻き込んでるんだもん。

 どうせなら、その才能を遺憾なく発揮してもらわなきゃ!




 トニーさんに相談したら、ジェル状薬の話に差し掛かった途端、何故か目をキラキラさせ始めた。うん? 昨日出張を決めた時と同じ表情……。


「それじゃ、折角なので、サッシュさんに話を聞きに行きますね!」


 私にティーツリーオイル試作品一号を押し付けて、部屋を飛び出していった。

 えーと。エルフの塗り薬って、軟膏状だったよね? 何故そこでエルフの話を聞きに行く?




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