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RPGの世界で生き残れ! 恋愛下手のバトルフィールド  作者: 甘人カナメ
第三章 ゲームのストーリーよ、さようなら
62/132

62.オイルプロジェクトの方針



 ソニア様からの指示は、流通に乗せる品物の決定。

 つまり、何の香りをラインナップとして展開させるか。


 今ある三品でも良いとは言われている。だけど、種類が多いとフェイファーに見せる選択肢も増えるってことだよね。

 例えば、フェイファー軍のトップ、シヴァ皇子が気に入る香りがあれば、興味を引くことが出来るかもしれない。聖女(仮)が気に入る香りがあれば、何かの条件を通しやすくなるかもしれない。

 ミントとレモングラスとラベンダー。それ以外も考えてみろってことだね。




 医務室が簡易ミーティングの場所になっているけれど、先生は一応黙認してくれるみたいだ。

 でも、ここでどれくらいまでの事情を話せるのか。

 本格生産に入りたいってことはもう知ってるだろうけど、フェイファーに提示するってことは知らないはずだよね。和平交渉自体が極秘扱いなんだし。

 探り探り話を進めると、先生が鼻を鳴らした。


「安心しな、医者には患者の守秘義務があるんだよ。アンタらは患者じゃないがね、ここで話をしている以上、似たようなモンさ」


 そう言ってもらえたけれど、さて、どうしよう。私の一存では決められない。


「ソニア様からの指示で、流通できるものを作りたい、ってことまでは知っているんですよね?」


 三人が頷く。


「それ以上の役割が出来たということは?」

「知らないね」

「じゃ、そこまでで勘弁してください。ソニア様からOK貰えないと話せません」


 何となく事情が見えてしまったかもしれないけれど、黙っていてくれるのを信じる。

 トニーさんのことはまだ良く知らないけれど、先生とココさんについては、だいぶ前から信頼しているんだ。

 

 とりあえず、種類を増やしたい旨を共有する。

 今ある三品は、既に製作のために動き始めている。新しい種類のものができても、それに乗っかればいいだけ。

 製作に関してはソニア様が陣頭指揮を執っているみたいだし、そこは任せちゃおう。

 トニーさんがここにいるってことは、薬師室担当の生産調整の方ではなく、私が担当する仕事に加われってことだよね。つまり、ここにいるメンバー+ロイが、新製品まで含めた検討メンバーということになる。


「あたしゃ見てるだけだよ」

「私は何かお手伝い出来ればと思いますが、実際の物がないと手を出せそうにないですねぇ」


 はい、了解しました。つまり私とロイとトニーさんでやれってことですね。


「少人数で動けって話だから、覚悟はしてたがな」


 いつの間にか医務室に入ってきていたロイが、苦笑い。


「なんだい、傭兵隊の隊長さんも噛んでるのか」

「ははは。俺は今、ソニア様の指示でミワの仕事の手伝いだ。傭兵稼業は休み中。世話になるぞ、先生」

「ふん、面倒事に巻き込まれそうだし、事情は聞かずにおくよ。場所は提供してやる。好きに動きな」


 シッシッと手を振って、先生は奥へと引っ込んでいく。ココさんも一礼して続いて行った。

 さてさて。それじゃあ、本格的にプロジェクトスタートですね。




 ******




 ミーティングは、ロイがメモを取ってくれて、主に私とトニーさんが話し合い。

 

 種類を増やすには、元になる植物エキスがないと話にならない。


「ミワさんがオイルを使う時、一番重視してるのは何すか?」

「そうですね……」


 オイルを作ろうと動き出した時のことを思い出す。

 

 きっかけは、キッチンで作ったデザートの、バニラエッセンス。

 そして、立ち仕事になって疲れが溜まるようになった脚。

 マッサージするのにオイルが欲しいな、そしてそれに香りがあると良いな。効果効能がバッチリあるのまでは求めないけれど、何かしらの香りがあるだけで気分が変わるはず。


「香り、ですね」


 効能があれば尚良し、なければないで香りが欲しい。

 オイルが手に入れば上々。なければ最悪、軟膏基剤を使おう。


 だから、私が重視していたのは香りだった。

 

 トニーさんが時折ペンをくるくる回してふんふん頷きながら、自分の手帳に書き込んでいく。

 口調も仕草も、徐々に地が出てきているみたい。


「それなら少しやりやすいっすね。新しい物を作ったとして、俺たちでどんな効果があるかまで調べることは……出来るけど、余分な時間がかかる」

「ただ、効果があるって触れ回ることが出来れば、訴求効果も高いんじゃ?」


 私の質問に、トニーさんは軽く頷く。


「ですけど。今は時間が惜しいんで、もう効果は斬り捨てましょう。

 あ、でも、ティーツリー。これならいけるかな。

 これは最初にミワさんから依頼があったものだし、エルフに既に伝えてあるんすよ。最初の試作品作る頃は、必要量を揃えてるところだって言ってましたね。もうあるかな」


 それなら、何となくの効果と香りの両方を備えたものが、四種類になる。

 残りは香り重視で作る、か。

 どんな香りが良いだろう?


「ただね、ティーツリーと同じように、エルフに原料調達をお願いしても、物がないかもしれない。そいつはちょっと困る。ま、それで候補を絞れるって利点もあるけど」

「じゃ、直接エルフの森に行ったらどうだい。その方が手っ取り早いだろ」


 紅茶のカップを手にした先生がいつの間にか戻ってきていた。

 エルフの森。つまり、キャスパー王子の実家、デイ森。そこで直接話を聞きながら検討してみる?

 トニーさんの目がキラーンと光った。


「エルフの森……エルフの薬……研究……」


 口の中でボソボソと呟いたトニーさんが、急に立ち上がった。


「早速室長に話を通してきます、大丈夫ですこの件はオレがミワさんのチームに入るって決まってますし、それなら明日中にでも森に着きますし!」


 机の上をあっという間に片付けたトニーさんが、荷物を抱えて飛び出していった。


「エルフが噛んでても薬の話じゃないよ、って、最初に釘を刺したはずだがねぇ」


 先生が紅茶をガブッと飲み干し、呆れ顔で開けっぱなしのドアを眺める。


「それより、明日中に森に着くって言ってたよね」

「言ってたな」

「……じゃ、私たちも行くしかないか」

「そうなるな」


 これまた呆れ顔の私とロイは、二人で頷き合った。




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