22.次の日、男たちの会話
「トム様よぉ、ミワで遊ぶのはやめてくんねぇかな」
「ん? 耳が早いねぇ。なに、ロイってばミワの保護者気取り?」
「そういうわけじゃないさ。だが」
「それとも、付き合ってもいないのに恋人気取り?」
「……っ!」
「おぉ怖。やめてやめて、こんなところで抜刀しないでよ?」
「何がしたいんですか、アンタは」
「領都で何かあれば、いくら戦況が良くても一度でひっくり返される。僕はそれを防ぐのが仕事」
「……マークに何か言われたのか?」
「いや、彼からは特に何も? でさぁ、傭兵隊隊長殿は彼女にメロメロでしょ? それじゃあ彼女を軍の駒としては使いこなせないよ」
「……。で?」
「ほら彼女、あの歳なのにウブでしょ。手玉に取るには惚れさせるのが一番、ってね。あぁ、だから、抜刀はやめてね?
嫌ならさぁ、君がちゃんと惚れさせて、手綱を握ってもいいんだよ。あ、でも、ロイの方が逆に手綱を握られそうだなぁ。そしたらかえって面倒だし。やっぱりここは僕が軍のために一肌脱いで……」
「あ、行っちゃった。ふふふ、僕も少しロイで遊びすぎたかなぁ。種明かし、してあげても良かったのに」
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「なぁ、今日の隊長、だいぶご機嫌斜めじゃね?」
「なー。ミワさんと何かあったのかな」
「え、ミワさんって誰です?」
「ああ、お前こないだ入隊したばっかか。ミワさんってのは、キッチンで朝食作ってくれてる姉さんだよ」
「あ、そういえば、妹が早番の時、朝食食べに行ってました」
「そうそう、で、その姉さんに、隊長がお熱なのよ」
「へえぇ」
「第二部隊の奴らなんて、いつ二人がくっつくか、皆で賭けしてる有様だぞ」
「オレとしちゃあ、モタモタしてるうちに他の奴にかっ攫われるって踏んでるんだがな」
「おっちゃん、それはあまりに可哀想っすよ」
「だぁってよお。ミワちゃん、全然隊長に靡いてねぇじゃねえか」
「僕は隊長の応援しますよ」
「おい、第三部隊! 私語くっちゃべってるなんて余裕だな!! そんなに暇なら修練場50周走ってこい!!」
「げ、マジかよ」
「あー、これ本気で何かあったわ……」
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「ん? どうした、マーク」
「……いえ。いつもの頭痛です。きりがついたら医務室へ行ってきます」
「あぁ。ついでに少しくらい休憩してこい。倒れたら元も子もないぞ」
「いえ。先程、領都担当の騎士から領都防衛に関する資料が届きましたので、その確認もしなければなりませんし」
「トムか。最近何やら動いていたようだな」
「お茶会への参加は昨日でしたよね?」
「そのはずだ。今は、奥の仕事はほとんどソニアに任せてあるからな。彼女の差配だろう」
「そのタイミングで資料ということは、参加した貴族に何か『当たり』があったのかもしれませんね」
「だろうな。目眩ましにミワを使ったと聞いたから、何やら尻尾を出したのだろう」
「……そうですか」
「なんだ、未だにミワのことを警戒していたのか?」
「いえ。それはもう心配はしていないのですが。……薬を貰いに行ってきます」
「ほう? 心配しないと言い切ったか。さんざん調べて何も出なかったとはいえ、マークも思ったより早く絆されたな」




