20.Interlude・2
「ねぇ、お願い。家に帰して。あたしには、両親も、兄も、職場の人たちも、フットサルのチームの皆も、友人だっているの。KAZUKIが主演の映画ももうすぐ上映開始するの。FROZEN H“のライブチケットだって苦労してゲットしたの。
こんな服も、髪飾りもいらない。……家に帰して」
「すまない、それはできない。聖女の存在は伝えられていても、どのように現れるのか、最終的にどうなったのか、そういったことは記録にないのだ」
「聖女って言われたって、何をすればいいのかも分からないよ。あたしは普通の人間なの」
「何をする必要もない。あなたには、我が国の象徴、我等が軍の旗印として、ただそこに在ってくれさえすればいい。それだけで国民の信心は強固となる」
「そんなお飾りなら、誰でもいいじゃない」
「そういうわけにはいかない。あなたが神殿に前触れなく現れたのは多くの人が見ている。神からの贈り物である以上、代役などきかない。
今までは、隣国にいる回復魔術を使う乙女が聖女だと目されていたが、そうではなかったのだ。
この時期に真なる聖女が現れた。それは、我等が神の導きのまま、聖なる土地を取り戻すべし、という神託に他ならない」
「急にそんなこと言われたってハイソウデスカなんて簡単に言えないし、まずは家に帰してもらうのが先決よ。さっきからずーっと言ってるでしょ、あたしには大事な人たちがたくさんいるの!」
「それならば、新たに私が、あなたの大切な人となろう。軍を率いることになった私のパートナーとして、末永く共にいてもらいたい。
私は側室腹だし上に皇太子がいるから、あなたは皇妃にはなれない。だが神殿の神官長にも並ぶ権力は持てる。贅沢な暮らしも叶う。どんなことがあっても、あなたを大切にすると誓う」
「え? ええ? 会って間もないのにプロポーズでもしているの?」
「そうだ。一目見て分かった。あなたは私と結ばれるべきだ」
「確かにお兄さんはカッコイイけど。自信満々なのもわかったけど。あたしも一目惚れされやすいけど。そもそもお兄さんのこと、何にも知らないのに肯けるわけないじゃない」
「これから知り合っていけばいい。あなたが元の場所へ戻れないのであれば、私が帰る場所となる。
覚悟を決めてほしい。我が運命の人よ」
「なによそれ……なによ、それ…………なんで、あっくんに言ってもらえなかった台詞を、言いたかった台詞を、見知らぬあなたが言っちゃうのよぉ」




