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しがない文学同好会の日常  作者: 間島健斗
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 あくまで体感での話だけれど、時間が過ぎていくのは一定ではない。

普段だったら、残暑が厳しいはずの八月の終わりの午前中から昼過ぎのかけてうららかな陽気で少し散歩にでも出かけようかなと暢気なことを考えていた今までは、とても時間の流れがゆっくりだったのに、宿題の範囲表の但し書きのところに書いてあった「二回ずつ問題を解いてくること」と書かれた文字を見た瞬間から、早くももう三時間が経とうとしていた。

 焦って何かやっているときが、一番時間が短く感じる。

 明日から新学期だというのに終わりそうにない課題の二週目を終わらせることに夏休みの最終日を使うとは思ってもみなかった。

ていうか、こうならないために僕は、毎日コツコツ宿題をやっていたのだか、そんな小さな努力も空しく、小さな但し書きによって帳消しにされてしまった。

 いっそのこと夏休みの宿題を放り投げたまま踏み倒してしまうということもできたのだが、見落としていたことに気が付いてしまった以上、やらないわけにはいかなかった。

 わかっていたことを知らなかったふりをする方が、徹夜確定、徹夜の影響で宿題テストの点数が大幅ダウン覚悟で宿題を終わらせることよりも精神的につらかったので、泣く泣く僕は宿題に取り掛かることになっている。

 シャープペンシルは握りっぱなしで、ペン先から綴られる文字は、大きさがバラバラでガチャガチャしている。

 「僕ってこんなに字汚かったっけ?」と内心驚きつつ、ノートに書きなぐっていく。

 今日はゆっくり家で過ごすつもりだったのに、実際に午前中はあんなに穏やかな気持ちだったのにそんなことを言っている場合ではなくなってしまった。

 大体、答えが分からない数学の宿題の二回目を解いたところで一体何の意味があるのか、という考えたって仕方がないことを考えてしまうくらいには、追い詰められていた。

 暑いのではなく、暖かい日差しが降り注ぐ優しい昼下がりに僕は、日当たりの悪い部屋に閉じこもって勉強をしている。

 海の家でバイトをしてから以降、外に出ることがあまりなかったので、海の家での照り返しで焼けた肌は、いつの間にか、普段と変わらない白い肌に戻っていたし、少し筋肉が付いたように見えた体付きは、もとに戻っていた。

 この夏の思い出と言えば、部活のみんなで海の家に行ったことぐらいで、そのほかはほとんど、毎日同じような生活を送ることになったけれど、それでも満足していた。

 もちろん、宿題を忘れていたことを除いての話だけれど。

 やっぱりなんでもそうだと思うけれど、終わり方って大事だと思う、どれだけいい一日であっても、最後に嫌なことがあると結局あんまりいい印象はないし、どれだけ最悪な一日だとしても、最後に少しでもいいことがあったら、救われた気分になる。

 毎日何かしら動いていて夏休みボケしてないからか、明日から学校生活が始まることに憂鬱な気分にならないことを唯一の救いだと思って問題を解いていく。

 この憎たらしい問題文も素直に自分の気持ちを伝えることが出来ない恥ずかしがり屋なのだと思って問題に取り組むと少し優しい気持ちになれるような気がする。

 もちろんこれも気がするだけで、実際にはこんなくだらないことを考えている間にも、貴重な時間がすり減っていく。


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