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第三話:救う為の戦い




 ◆第三話:救う為の戦い




 ここは魔王ルビーが住む魔王城、勇者達とは違う視点。



 青い軍服と青色のショートカットが目立つ男が立っている、青はカルダ共和国を表す色、黒は魔王を表す色、故に魔王が現れてからこの大陸では黒の装飾品は禁止されてきた、しかしこの男の耳には黒い魔王軍のピアスが……。


「ライト……ライト!」

 勇者と同じ十七、十八歳ぐらいの男が軍服の男を呼んでいる。

「何かようか? 魔王……いや、ルビー、いやでもやっぱり魔お……」


 ライトと呼ばれた男は振り向かずに答えた。


「どっちだっていいさ……それにしても本当に無愛想な奴だな、振り向きもしないで……まあいい、そんな君に行ってもらいたい町があるんだ」


 そう言うと魔王……もとい、ルビーは苦笑まじりに不気味に笑った。




視点は変わって勇者達に。


 さて、ここは確か……[ミラス]って町だったかな。

「勇者さんっ、早く入りましょうよ」


「うん、そうだね」

「あっ! 珍しいですね、勇者さんが相づち入れるなんて、いつもは頷くだけなのに」

 う〜んそうかなぁ、とにかく入ろうか。


「とりあえず勇者さんは町を探索してて下さい、その間に私が宿の予約入れて来ますから」


 しばらく町を探索したが何も無い、流石は荒野の町って感じだね。


「勇者さん、とりあえず宿の予約は入れて来ましたよ」


 それにしても、この町は[サヒィカス]とは違って人も少ないし、町全体が……。

「ちょっと勇者さん! 無視とはど〜言うことですか!」


「わっ! ちゃっ、ちゃんと聞いてるよ」


 とりあえず謝ったけどまだ怒ってるのかな? 腕を振って頬をふくらましている……てゆか、めちゃくちゃ怒ってる。


「もう! 早く宿に行きましょう」


「そっ……そうだね」


 そういえば、話の続きわすれちゃった……この後どうなるんだっけ。

 とにかく宿に入ろう、ここは寒いや。



 今は夜の八時、たしかにもう夜だがこの町は他に比べて人通りが少ない。


 そんな時に窓の外を眺めていると……。

「あっ! あの人は ……」


 そんな町に一人歩く男がいる、青い軍服に身を包んだ男が。


 気がつくと僕は外に出て男に話かけていた。


「何かようか」


 無表情な整った顔、本来は希望に溢れ輝いている筈の蒼い目は光を失いほぼ黒色と変わらない。


 そこまで君を追い込んだのは僕……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。


「何を泣いてるんだ?」


 気付けば僕の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていた。


「用がないなら話かけるな」


 軍服の男は冷たく言い放つと背を向け歩き出した。


「いっ……行かないで!」


 僕が叫ぶと彼は振り向いた。


「悪いのは全部……魔王だ」


 僕は確かに見た、全てを諦めたと思っていた彼の目の奥に蒼い炎が揺らいでいるのを……彼の真っ直ぐな瞳を。


「てか、お前は何もしてないだろ?」


 違うんだ……悪いのは僕、変えられたのに変えなかった僕なんだ。


「とにかく、この町から出るんだ」


 嫌だ……だって、ここで逃げたら……。


「嫌じゃね〜よ、襲うんだから」


「僕は勇者なんだぁ!」


「なら、なおさら逃げろ」


「背中の傷は男の恥だぁ!」


「お前は女だろ……」


「女でも僕は勇者なんだぁ!」


「二回目だし……、てかスカートの勇者って……」


 僕は何を言ってるんだろう、彼を……ライトを止めるつもりでここに来たのに。


 逃げたくないんだ、誰かに責任をなすりつけてまで生きたくなんてないから。


「君がこの町を襲うなら!」

 僕はここで散ってでもそれを止めるから……。


 君が魔王に縛られているなら……。

「魔王なんて……僕が倒すから!」


 言っちゃった……本当は倒せないのに。


 でもっ……でもっ僕は君を救いたいから。


「なら、止めてくれよ? ……俺を」


 うん、僕が止めるよ。


 ライトは優しく微笑んで、僕の頭に手を置いたと思うと急に眠たくなってきた。


「でも今はおやすみだ、明日の昼十二時に門の前で会おう」


 待ってよ! まだ言いたい事が、駄目だ、意識が……。…………

…………

…………


 窓から朝日が入ってくる、昨日はいつ寝たんだっけ。


「えと確か…………!」



「勇者さんってばいつまで寝てるんですか、もう十二時ですよぉ!」


 カレンが入った勇者が寝ている筈の部屋はもう誰もいなかった。


「えっ? 勇者さんは……?」


 何も言わずに出て来ちゃったけど、カレン怒ってないかな。


 その時、ライトが数十頭の魔物を引き連れて現れた。

 あの森で僕が最初に倒した狼型や最強と言われる悪魔型、と魔物の種類は様々だ。


「へぇ、本当に来たんだな」


「当たり前じゃないか……僕は君を止めるんだから」


「死ぬぞ?」


「少なくとも君を止めてからね」


 この勝負の結果は僕がこの物語の作り手じゃなくとも分かるだろうね、相手は六年前までは十六歳と言う若さでカルダ共和国の軍隊の総隊長をしていた男……六年前に魔王が現れてカルダ共和国が壊滅した時からは魔王軍の総隊長になった訳だけど。


「さて、始めようか……勇者君」


 これでも一応は女の子なんだけど。


「戦の最中に考え事か?」


 気がつくとライトが目の前で剣を振り上げていた。


 金属同士がぶつかり合う高い音、それを間近で聞こえたと言う事は……。

「邪魔をするのなら……容赦はしない」


 同時に地面に血が落ちる。


 彼の一撃を完璧に防ぐ事なんて出来ない、風で標的を斬りつける風の魔剣士だから。


「うっ……ぐっ」

 深く入ったのかな? 血が止まらない、それにめまいが……。


「今からでも遅くない、この町から逃げるんだ」


「やだよ……」


「お前は勇者だろ!?」


「勇者だから戦うんだ!」


 何も救えない勇者に魔王なんて倒せないから……。

 剣を何度も振る、でも空を斬る音ばかり聞こえる。


 剣を振るたびに斬られた左腕から鉄臭い赤が噴き出す、それと同時に激痛が走る。


「もう止めろ、出血多量でホントに死ぬぞ!」


 君の心の傷はこんな物じゃない……何もかも失った君に比べたらこんな傷。


「僕が救いたいのは……他人なんかじゃない」

 第一、僕が創ったんだから他人なんかじゃない。


「僕が救いたいのは……僕が創った、この世界なんだ!」

 ただの偽善かも知れない、でもあの時こんな物語を書かなければって思うと死にそうなぐらい胸が痛くなるんだ。


「全てを焼き尽くせ、煉獄の裁き」


 僕が使える最強の魔法、狙ったのは彼じゃなく後ろにいる魔物達。


 空から巨大な炎が降り注ぎ、魔物達を一瞬にして焼き尽くし悪魔系の魔物さえ灰になる事も許されなかった。


「なっ、最強レベルの……Lv.十の光と炎の融合魔法!?」

 彼は驚いているけど……体が動かない。


 やっぱりあんな魔法僕には早かったよね、反動で動けなくなるなんて。


 ふと前を見るとライトが僕に剣を突きつけていた。


「何故、俺を狙わなかったんだ?」

 理由なんて決まってる。

「僕が倒したいのは君じゃなくて魔王だから」


 そう言うと彼から冷たい視線が返って来た。


「殺したいなら殺せばいい、君がそれで救われるのなら僕はそれでも構わない」


「俺の負けだよ」


 なぜ? 僕はもう動けないんだよ?


「お前は俺を止めたい訳だ、でっお前は魔物を全滅させた……俺一人じゃ流石に襲えねえよ」


 そっかぁ……僕は君を救えたのかな?


「救えたさ……疲れたろ、もう寝りな」


 うん、おやすみ……またいつか……。



 気がつくとそこは宿のベッドの上で、窓の外を見るとお天道様はもうてっぺんまでのぼっていた。


「あっ勇者さん……もう大丈夫ですか?」


 カレンの心配そうな声、僕は大丈夫だよ。


 彼女の話によるとライトがここまで運んでくれたらしい。



「勇者さん、そろそろ行きましょうか」


 そうだね、早く行かないと野宿になっちゃうし。


 町の門を出るとそこには僕の放った魔法の跡。



 彼……ライトとはまた戦う事になる、君を本当に救うことなんて出来ないのかも知れない、それでも僕は……何度でも君の為に血を流すよ。


 それが全てを創った僕なりの……。

 さてさて……勇者さん実は女の子でした。

 ビックリしましたか?


 勇者さんは負けてしまいましたが、何やらまた戦う的な事を言ってましたね、今度は勝てるのかな?


 次の話は何故ライトは魔王軍にいるのか……それを明らかにしたいと思います。


 では、また次の話で会いましょう。

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