confusion
☆☆☆ 坂本歩
初めてみた。悠のこんな顔。
固まっちゃってるよ。
他人にほとんど興味を示さない悠が、舞ちゃんの部活を知ってたことがまず意外。
しかも、何かきっかけがあって知ってたのかもしれないけど、それでも口にだしてわざわざ俺に教える必要ないもんねぇ。
黙ってたってわかんないんだから。
つーか、いつまで見つめ合ってんの、このふたりは。
☆☆☆ 小嶺桃
「歩、おはよー!」
私の声に、歩の肩がはねた。
「おはよ」
「なに、どしたの?」
「あぁ、あれ」
歩の目線の先を追うと、
あ、悠と、舞?
「ふたりともおはよー!」
「おいっ・・・」
「あ・・・桃ちゃんおはよう」
少し頬を染めた舞ににこりと挨拶をされると、同性の私もどきりとする。
一方の悠は、まるでずっと息を止めていたかのように、ふーっと長い息を吐いていた。
「にらめっこ?」
「なわけないでしょ」
私の呟きに歩の突っこみが入る。
わかってる、でもここ、妙に緊張感があって。
「一条さん、顔色悪くない?保健室行こうか」
聞こえてきた悠の声に驚いて、歩と顔を見合わせた。
☆☆☆ 時田遼
教室とは逆方向へ舞が歩いていくところを呼びとめた。
「もうすぐチャイム鳴るけど、どこ行くの?」
「あ、遼ちゃんおはよう」
「うん、おはよう。で、どした?」
「一条さんの顔色があんまり良くないから、保健室に連れていこうかと思って」
うん、まぁ確かに、ちょっと顔色が悪い。
ワンテンポ遅れて、わ、と驚く。
広澤くんがいたの気が付いていなかった。気が付いていなかったいうと語弊があるかな。舞といるためにここにいるとは思わなかった。が正しい?
「広澤くん、おはよう。舞、大丈夫か?」
「うーん、顔色悪いかな?」
「多少な」
「そっかぁ、昨日あんまり寝てないからかなぁ」
「被写体どうするか考えすぎたのか?まだちょっと時間あるんだから、あんま根詰めるなよ?」
「あ、うん・・・」
シン、としてしまった。俺、まずいこと言った?
「時田くん。そろそろ」
「あ、引き留めてごめんな。舞、ゆっくり休んでこいよー」
「うん、ありがとう」
ふたりに「それじゃ」と挨拶し、俺は教室へと急いだ。
教室に入る間際に、廊下の先をみつめる隣のクラスの男女に気が付いた。
つられるように俺も視線を向けたが、そこにもうふたりの姿はなかった。