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旅人物語─帝の治める大陸  作者: 痲時
第3章 繰り返しの、終わり
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第17話:術師


 作戦会議しようよと軽い調子で天帝に呼びかけられて、集められたのはシーバルトだった。帰る時に初めて乗せてもらった時は、その船内が意外にも豪華で驚かされた。こういった大きな帆船は母国にない。せいぜい漁をしたり大河を渡ったりするぐらいだから、船というものにそもそも馴染みがない。


 いつもなら船員がわらわらととぐろをまいている談話スペースに、天帝、将軍、アーロン、ジョー、デヴィット、それから久しぶりに姿を見かけた、あのいかにも東の人という恰好をした(名前忘れた)シーバルトの一員も居た。


 天帝は一同を見るとわざわざ集まってくれてありがとうと、また天帝らしくない挨拶から始める。

「時間がかかってしまってごめん。ちょっと面倒なことが起きてしまって、軍の逗留地にはしばらく立ち入り禁止になりましたので、ご留意ください」

「またなんかあったのか?」

「うん、ビルの地図もらう前に巡回してくれていた人たちが、神官の術で精神やられちゃってね。不安定だからしばらくちゃんと療養してもらうの」

 流石の天帝もいたましそうな顔をする。神官の術は多岐に渡るが、多いのはそうやって精神的に人の弱みを揺さぶるものらしい。

 以前俺が見たのは病気で死にかけた時のことだったが、そんのは生ぬるい。デヴィットが見たものは、足を斬られた時に戦わず戦線離脱したことだった。未だ手を握ることが怖いというルリエールだったらきっと、残された手を思い出すだろう。戦争ばかりして来た西大陸で、痛みの感覚が麻痺しながらもみんなが生きて来ているのは、それを奮い立たせるほどの何かがあるからだ。無理矢理その辛い感情だけ思い出させれば、それは精神が壊れてもおかしくはない。



「本当、胸糞悪ぃ術だよなぁ」

 ジョーも苦虫を噛み潰したような顔をして同情を寄せると、そういえばと話題を入れる。

「天帝、話の前に悪いけど、その悪趣味な神官の相手、うちの清隆きよたかに任せてくれないか?」

「……なるほど」

 あ、清隆、それだとシーバルトの小柄な男を見て思い出すのんきな俺とは別に、天帝はすべてを理解したように頷いてから清隆に視線を向ける。

「でもなるべくなら外に出たくないんじゃなかったっけ?」

「はい、まぁ。しかし朝臣あそんの頼みとあれば」

「悪いけど今回ばかりは協力を頼んだ、あれじゃあ反則だからな」

「まぁね……もう少し魔術師が居たら良かったんだけど、こっちでは本当に希少なんだね。たぶん魔術師マグスとか錬金術師アルケミストの血がリヴァーシンの神官にも流れているんだろうなぁ」

「アグを連れてくれば良かったのでは?」

「いやー……流石に帝都はアグに守ってもらわないと、ウィリアムとアーロンが抜けてるんだから、結構きついよ。東は国ができたみたいだから少しの間は持つと思うけど、すぐ壊れたら困るもの」

 帝都パクスカリナは平和だが、山脈を越えればすぐそこに危険な戦争地域がある。流れ着いて闘争心をむき出しにしてくるため、町に被害を出すこともあったようだ。しかし国ができたから少しの間は平気って……本当に酷い有様なんだとじんわり思う。



 清隆の肩をぽんぽんと叩きながら、ジョーは珍しく上司らしく云う。

「うちの清隆は石頭だけど、これでもうちの国でも優秀な官僚だから。あの神官の強さは知らないけど、技術は問題ないと思うぜ。なぁ清隆」

「はぁ、恐縮です。でも朝臣。西の術師の形態を軽く教えて戴かないと、前準備にいろいろしておきたいです。呪符や護符も一応用意しておきたいですし」

「あー……手軽さで云ったらあっちのが早いかもな。一言で一瞬だから」

「それは分が悪いですね、相手より先に仕掛けないと不利だと思います。式神で抑えるのは簡単だと思いますが、解かれたらすぐに動けないでしょうし、九字は唱えるのにどうしたって時間がかかります」

「あー俺絶対無理だわー指が釣るー」

「なんだ、ジョーもできるんだ」

 知らなかったと驚いた天帝に、ジョーは眉間に皺を寄せる。

「できるっていうか、うちの国では教養みたいなもんなんだよ。簡単な陣敷くぐらいなら誰でもできる」

「天帝、朝臣は自国で術禁止命令が出ているのでやらせないでください」

「何やらかしたの?」

 明らかに原因がジョーにあると決めつけた天帝に本人は不服そうだが、たぶんここに居る誰もがそう思っただろう。フォローできない。

「こればかりは逆です。朝臣は生まれ持っての能力が高過ぎて危険視され、私が付く代わりに使用禁止となりました」

 こればかりってなんだよとジョーは不満を垂れ流すが、意外な話ではあった。生まれながらにして能力が高いというのは、本人にはどうしようもできないことだ。そういえばうちの母親も、生まれながら割と力が強い召喚師だったらしく、逆に力を制御しきれなかったらしい。母の妹、つまり俺の叔母が我が屋専属の召喚師として仕えているが、彼女のほうが周りから見たら優秀で期待されていた。だからあっさり末端の王族になんか嫁いだのだろう。今では召喚師だったということのほうが、信じられないかもしれないぐらい、実にのんびりとしたものだ。


 聞けば聞くほど優秀だったのではと思われるこちらの元貴族も、実にあっけらかんとしたものだ。

「あはは、もう九字すら忘れたから大丈夫」

「清隆、大丈夫? 一対一にはするつもりだけど」

「はい、勝手のわかる朝臣か、素早いので保科さんに補佐をお願いできたら助かります」

「おおすごいね、シーバルトだけで充分だ」

「我々は正攻法で攻めたふりでもしていれば良いでしょう」

 冷静な顔で頷く清隆に、天帝はお気楽な調子だ。上司がそんな調子だからか、将軍も平然と軽口を叩く。この将軍は生真面目なんだろうが変なところで適当だ。そんな二人を見て溜め息を吐くアーロンに同情したくなった。いやもちろん、そんなことを云った途端にぶん殴られそうだからわざわざ云わないけど。


「ありがとう、清隆。──実は僕が行こうと思っていたんだよね。そしたらアーロンに怒られて却下された」

「……おまえはもう少し自分を一番にすることを身につけろ」

 呆れたアーロンは部下らしく溜め息を吐くが、その言葉はあくまで気易い。天帝の緩さに呆れを通り越していた俺の視線をどう取ったのか、

「あ、僕も一応あのせこい技使えるんだよ。滅多に使わないし、神官の技とまったく一緒じゃないけど、魔術マグスとか錬金術アルケミスト系」

 と、わざわざ驚きの事実を説明してくれる。

 俺の国にも召喚師とか法術師とか聖職者とか、変な技を使える術師と呼ばれる人たちが居る。だから別段そこまで驚くことではないのだが、そういった存在を北大陸では見かけなかった。そもそも母国で使えるのはアリカラーナという存在のためで理論があるのだが、西大陸や東大陸ではいったいどういう経緯でそれを納得し成り立たせているのだろう。リヴァーシンは女神信仰とやらの影響で神官が使えるのだと思っていたから、他にも似たようなことができる人が、国のトップに居るとは思いもしない。



 敢えなく出陣を却下された天帝を置いて、将軍が俺がこの間襲われた方から真っ直ぐ進撃することになった。手前の教会の倒壊が恐れられるので、精鋭数名で攻め入るふりをするという。その一方でジョーと清隆が王宮の地下から回って、逃げて来るであろう神官を待ち伏せする。とても簡単な挟み撃ち戦法だ。

「姫様の迎えは頼んだよ、王子サマ」

 からかうように云われて顔をしかめつつ、地図を改めて見てだいたいの距離をおおよそで測る。俺には結構きつい道のりを、全力疾走しなければならない。しかもネイシャを連れて。いや絶対無理だしきつい途中で倒れて計画駄目にしますと言葉が出かかったものの、

「はいはい……」

 俺は気付けばそうやって頷いている。からかいに引っかかることすら面倒くさい。

「え?」

 なのにセイルーンは驚いたように俺を見て、でかい目を瞬かせる。え、何、この空気。俺なんか悪いこと云った?


「冗談だったのに」

「いやでも……結局俺が悪いんだから、無理だからって行かないのは違うだろ」

 それらしいことを云ったものの、明確な理由は特にない。ただなんとなく、俺が直接ネイシャを迎えに行かなければならない気がした。あいつが俺を連れ戻した時のように、今度は俺があいつを連れ戻さないと行けない、と。

 当然のように、アーロン・メイスフィールドは突っ込んでくる。

「おい、病弱貴族。おまえ女神を連れてこの距離を全力で走れるのか?」

「無理」

 至って本気で即答したのだが、アーロンにはふざけているようにしか見えなかったらしい。

「おまえなぁ……良いかこれは遊びじゃないんだぞ」

「わかってる。でも神官を止めるのはジョーと清隆だし、後ろから将軍たちが来るんだろ。なら平気、全力は出さないで走り切るから」

「……おまえ、なぁ」

 呆れた口調でアーロンががしがしと頭を掻くと、そこにジョーと将軍の大笑が響く。


「そんなこと云われたら意地でも止めないと駄目じゃねぇか」

「安心しろ、ビル殿の期待に応えられる働きをすると誓おう」

 全面的に弱い俺に呆れたのかと思えば、なぜかジョーと将軍は楽しそうだ。それを見てセイルーンも何やら満足そうににやにやしていて、仏頂面なのは俺とアーロンだけだ。そんなところで意気投合しても嬉しくもなんともない。

「おもしろいことになって来たねぇ、ビル。うちの部下をそれだけ買ってくれてありがとう」

 おもしろいことではない、そのままのどうしようもない事実を云っただけだ。正直俺が走り切れる自信なんてない。そもそも走るということ自体、子どもの頃は医者に止められた。でももうあの頃の餓鬼ではない。付け焼刃の剣だが少しは振るえる体力もできた。たぶん走り終わったらしばらく動けないだろうが、要するに王宮まで走りぬけば勝てる勝負だってこと。


 そう、別に戦いに行くわけではない。ただネイシャを連れ戻すだけ。少しだけ辛い距離を、一緒に適度な速さで走れば良いだけだ。



 大丈夫できる。……できるじゃなくて、やる。これは俺が決めたこと。


 自分に云い聞かせていると天帝は一度落ち着いた輪に爆弾を投げつける。

「じゃあ走り終わったあとはアーロンの軍と一緒に動いてね。アーロンの軍はジョーたちと一緒に王宮へ行って、王宮でもしものために待機」

「はぁ?」

 俺は何も云っていない。一応それだけを訴えるため天帝を見ておく。

「セイルーン、俺は病弱貴族の護衛などしないからな」

「アーロンは仲間を見捨てる非情な将軍ということで、マイナスしておきます」

「セイルーン」

「一将軍はわがままを云わない、これは筋の通った命令です」

 なおも詰め寄るアーロンに、天帝は少し声を下げて云う。云い方こそ丁寧なものの、それは絶対的な力を込めていて、権力者の影が垣間見えた。

「それでも拒否するというのなら、ウィリアムに代わってもらうけど……メイスフィールド将軍はそこそこ腕の立つ異国人の剣士と少女ひとりすら守れない、落ちこぼれということで次の帝都新聞に書いてもらおうか。執筆はああそうだ、ルテルに頼もうそうしよう」

「……本当良い性格してんな、あんた」

「何も守れなんて云ってないでしょ。あ、ネイシャは守って欲しいけど、ビルは自分の身ぐらい自分で守れるよ。守る気があればだけど」

 なんでこいつはそういう厭味も含めて云ってくるのだろうか。会って数日にしかならないというのに、もう何年も昔から知っているような口ぶりだ。俺も不思議とそういう気分になっているから不思議である。天帝などと仰々しい呼び方をされているが、気が付いたら懐に気易く入っている。ある意味ではそれも能力の一つだ。


「今回はネイシャが居る限りちゃんと守ってくれるとは思うけど、単独行動しては怪我作って帰って来るような人に、少しぐらい学習してもらうために一時的に軍に入ることを強制しています。メイスフィールド将軍、ビルとネイシャの保護をお願いします」

「──イエス、マイロード」

 不服そうながらもそう云って頭を下げるアーロンと、彼を笑顔で見つめる天帝。これが西大陸を一つにまとめた天帝セイルーン・クレイヴァという男なのだ。


・・・・・


 逃げられる可能性は少ないだろうが素早く行動した方が良いとのことで、決行の日はそれから2日後だった。集合場所として適している俺の仮住まいに集合となり、殺風景な狭い部屋に結構な人数が押し入った。将軍の軍は精鋭10名、アーロンの部下は物見も兼ねて数名が王宮の方に居るという。今回はクレアバールの軍が動いているから、シーバルトもそんなに人は要らないだろうということで、ジョー、清隆、ポールの3名だけ。ポールは西大陸の人間のように見えるが、そういえばジョーの乳兄弟で、清隆の術のこともデヴィットよりわかっているからとの選出だった。南大陸生まれのデヴィットは仮にも副船長ということもあり、シーバルトに残っている。千鶴にまた不安な気持ちを抱かせない、そのことに少しだけほっとした。



 ざっと30人程度の小さな軍隊だが、これだけで国一つ滅ぼせてしまえるほどの力を持った人たちの集合体だった。帰って来ないもしもの場合は、天帝軍からシーバルトにも連絡が行くようになっている。短い間に随分と手を回してくれたらしい。


 今回の要である清隆が、俺のもとへとやって来て紙束を丁重に差し出して来る。

「ビルさんに護符をお渡ししておきますね。走った後休憩が必要でしょうから、万が一僕らが取り逃がしたとしても、少しは休めるように扉をこれに貼ってください。しばらくは扉が開かない効果があります」

 渡された紙には精霊文字らしきもので何か書いてあるが、あまりにも崩されていて俺には読めない。清隆の丁寧な扱いからか、ただの紙なのにとても貴重なものを渡された気分になる。実際貴重なのだろうが、それを強調するかのように隣でジョーが笑いながら付け足す。

「それは俺特製の護符だから効き目抜群だぜー」

「朝臣の能力は高過ぎるので少々の不安もありますが、そもそも朝臣がそう簡単に目の敵にしている人物を逃すはずはないと思いますので」

 大丈夫ですよと清隆も小さく笑う。もともとが生真面目過ぎるのか、あまり冗談を云うようなやつではなかったものの、ジョーを信用していることは伝わって来た。


「もし敵が居た場合は、こちらを相手に投げてください」

 そう云ってまた別の紙を3枚ほどくれる。ちゃんとわかるようにかこちらは赤い細い紐で結んでくれている。

「ほんの少しの目くらまし程度ですが、逃げる時間は充分に稼げます。地下は暗いと思いますので、下手に剣で応戦するよりは良いかと」

 結局デヴィットから剣を受け取らなかった俺は、無理に戦おうとするつもりもない。しかし母国では俺みたいな末端のやつでも、王族が術師になることは禁じられている。俺の母親が召喚師をやめたんおは、結婚したからだ。たとえ周りから力がないと云われようと、彼女はその召喚術が好きでその研究を進めた。だがその結果、やめなければならなかった。俺からまったく遠いところにあったものに助けを求めることになるのは少し不思議だ。


「やー、便利だよなぁ陰陽寮おんみょうりょうのじじいたちに感謝感謝」

「あれだけ物忌みを嫌っていたくせに調子が良いんですから……」

 どうやら例の引きこもりの日もこの術と関係あるらしいが、本当にジョーは適当だ。しかし実際あの日、反対する清隆を振り切ってネイシャを助けに行き、無事帰って来た。まぁ不吉なことはあったものの、他に問題はなく済んだのだから、その日は悪い日だと決め込まれてもあまり信ぴょう性はないのかもしれない。



 小さく溜め息を吐く清隆は、明らかな苦労性だ。

「清隆、わざわざ悪い」

 あまり外に出たくないという清隆を外に出してしまったのは、俺の所為だということぐらいはわかっていた。だから申し訳なく思って謝ったのだが、清隆は一瞬きょとんとして、 そのあとふと表情を和らげて困ったような、諦めたような顔をする。

「いいえ、僕もいい加減、諦めないといけませんから」

 朝臣に付いて行くと決めたからには──。

 そう云う清隆は、そういえばジョーとは真逆で国に縛り付けられている。さっきの話から推測すれば、ジョーの元に望んで仕えているわけでもない。勝手に出て行った貴族の世話までする必要はない。だがそれでも彼がここに居るのは、今は仕える理由がそれだけではないからだろう。




「たっだいまー」

 風を吹かせて帰って来たのはレイヴンだ。ここのところ、北大陸と西大陸の往復を何度かさせてしまったため、部屋で寝ていることが多かった。流石のレイヴンもこの日ばかりは何かさせろと乗って来て、適した伝令役に落ち着いている。一番適してはいるが、何せこの鳥が俺のものだとばれているだけあって、そうそう近付けない。

「王宮近辺に、らしいやつらは居なかったぜ」

「ありがと」

 王宮を定期点検する兵たちからも、物見からも、中に誰かが隠れている様子はなかったという。だがそれでも、今日行くことは決まっている。


 俺の後ろで部下と待機していたアーロンが、やはり不機嫌そうな顔で俺の横に立つ。命令で仕方なくだが、やはり気が進まないのだろう。明らかに嫌そうだったが、目は真剣だ。

「良いか、くれぐれも足を引っ張るなよ」

 ひとまず頷いて置く。

「王宮エントランスに俺たちはそれぞれ控えて置く。地下通路が何所につながっているかわからないが、ひとまずエントランスを目指せ。敵が居ないようだったら城内に部下の配置もしておく。何かあったらすぐ駆けつける」

「ありがとう心配してくれて」

「だ、誰もおまえの心配などしていない! おまえを預かる軍としてだ!」

 云うだけ云って去って行く後ろ姿を見ていると、天帝と目が合った。なんとなくおかしくなって少し笑えば、天帝もくすくすと笑う。素直になれない思春期の弟を生易しい目で見る兄のようだった。……まぁこの中じゃあ俺が一番年下だけど。


 王族で身体が弱く剣を持つ気のない最年少は、今回面倒を起こした張本人。なんて迷惑なやつだろうと自分のことながら改めて思う。


 手の中にある小瓶を、握り締める。持っていたところで邪魔になるだけだったが、俺はこれを、あいつに返さないといけない。本来なら砂に埋もれてなくなってしまっていてもおかしくはなかったのに、なんの奇跡か俺の前に現れてくれた。これを拾った時に、天帝に助けを求めた時に、覚悟していたことだ。


 俺が今度は、ちゃんと手を引いてやらなければならない。

 これは俺が、決めたことだから。



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