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終末世界の創世記  作者: 言乃葉
Sniper 邦題:山猫は眠らない
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7話 多情多恨


 乾期に差し掛かった大陸西部の空はどこまでも突き抜けるように青く晴れ渡っている。空に君臨する太陽はギラギラとした熱線で下界の住人達を灼いていき、湿気が少なくカラカラに乾いた天候に仕立てあげていた。高度二千m、極めて順調に航海する空飛ぶ船の中に私はいた。

 全長一〇〇m、全幅二〇m、重量三〇五〇tの鉄の塊が空中を飛行している光景は飛行機を見慣れていても変わった光景に見える。

 この世界特有の動力機関によって発生した力場で浮力を得て、推進器のプロペラを回して進むというのがこちらの『飛行船』だけど、地球の飛行船とは形が全く違う。

 地球の飛行船にある巨大な風船みたいな気嚢は無く、船体の多くの部分が普通の船を流用して造られている。一応は空気抵抗も考慮されて曲線の多いシルエットだけど、その外見はほとんど空を飛ぶ船そのもの。

 これが現在チーム『幻獣楽団』の所有する最大級の乗り物、『ヒンデンブルグ号』――って、なんて縁起の悪い名前だろうか。


「ヒンデンブルグって、爆発事故起こした飛行船の名前つけるなんてどういう神経なの。客船にタイタニック号って名付けるのとどっこいですよ」

「文句は名付けたチームに言って。こっちは譲られただけだから」

「どこのチームです?」

「『第一飛行師団』」

「それって、ジアトー最大のチームの?」

「そ。あの暴動とその後の帝国軍の侵攻、さらに占領下でのゴタゴタで今は十分の一以下に人員は落ち込んでいるし、自慢の飛行艇団も飛ぶ前に大半が帝国に接収。コレしか残っていなかった上、船を運用できる人数でもなかったから泣く泣く譲ってきたの」

「身につまされる話ね。聞いていて切なくなりそう」


 船の船橋部分。詳しくは私には分からないけど、操舵や機関の運用とか、とにかくこのヒンデンブルグ号を飛ばしている頭脳部分に私は居て、船長席に座るリーダー、ライアと話の花を咲かせていた。

 ジアトーであったゴタゴタとドサクサで楽団を離れていた私にとってはみんなとの久しぶりの再会だった。離れていた期間は一ヶ月ぐらいだったのに何年も顔を見ていない気分になるのは、それだけ変化が激しい毎日を送ってきたからなんだろう。

 自覚のあるなしに関わらず私は変わったと思うし、再会したみんなも変わったように見える。そしてこの幻獣楽団も私が居た頃より大きく様相を変えていた。

 ライアと話をしながら、けれどその変わった部分に気付く度に戸惑いが胸から湧き上がっていた。


「それにしても、チームは随分と変わったね。人数が増えたのもそうだけど、前はリーダーの方針で女性限定だったのに今は男の人もいる」

「ジアトーで行き場なくした人を受け入れていたらいつの間にかね。それに人手が欲しい時に女性限定とか言ってられないもの。――ほらシンイチ、ブリッジの男子を代表して挨拶」

「え、えぇ! ここで無茶振り!? ……あー、えー、まあよろしく先輩?」

「う、うん。よろしく」


 ライアに声をかけられて船の舵輪を握っていた操舵士の人が気恥ずかしそうに挨拶してきて、私もそれに戸惑いながら言葉を返した。

 見た目二枚目半という顔立ちをした男性のシンイチさん。気弱そうな雰囲気をしているけど、男性に馴れていない私には異性とのコミュニケーションは少し苦手だ。最近はマサヨシやレイモンドさんで馴れたと思っていたけど、まだ克服したとは言えない。

 ブリッジにはシンイチさん以外にも数人の男性がいて、彼らも飛行船を動かすスタッフとして動いている。これはゲーム時代の幻獣楽団ではまず考えられない光景だった。


「船長、もう間もなく『放浪樹海』に差し掛かります」

「分かった。各監視員に連絡、下から上がってくる魔獣に警戒」

「アイアイ、マム」


 ライアの声に従い乗務員達は警戒の態勢を敷く。指示を受けた一人がブリッジの壁に備え付けられた伝声管に向って指示の声を出して、船の各所へ船長の意思を伝えていく。

 念会話を使えば良いように思えるけど、あれは多人数へ同時に指示を飛ばすのに向いていない。その上、長時間通信していると脳に負荷がかかってくるらしく多用は出来ないとライアから話を聞いた。現在の楽団では、代用できる通信手段があるならそちらを使うのが方針になっているのだとか。

 ともかく、警戒態勢になった事で慌ただしい様子になるブリッジにお客様な私が居続けるのも良くない。客室に戻ろうと思う。


「じゃあリーダー、私は客室に戻っているから」

「ああ、分かった。ちょうどそれを言おうと思ったけど、察してくれて助かった。ありがとう」

「ええ、大人しくしている」


 ライアに軽く手を振ってブリッジを後にした。彼女の後ろ姿はもうすっかり『みんなのリーダー』という感じだ。ああいうのを威風とか威厳なんて言うのかもしれない。

 ブリッジから各区画に通じる連絡通路は船の中だけあって狭い。人とすれ違うときも肩がかする位はありえる。ブリッジにいた楽団メンバーの話では、このヒンデンブルグ号は元貨客船だからまだ広々とした方であって、戦闘艦になるとより狭くなるそうだ。

 ゲームではスペックだけを見ていれば良かったけど、こうしてみると居住性も大切なのだと考えさせられる。


 通路の窓から薄く流れる雲を見ながら客室へ足を進める。警戒態勢の中、窓の外の光景は空以外にも舷側で警戒しているメンバー達の姿があった。

 舷側には後付けで取り付けられた銃架があって、いかにも威力がありそうな機関銃がそれに載っている。警戒態勢のメンバーは機関銃にへばり付いて外へと目を凝らしていた。当然だけど背後の私に気付いた様子はない。

 窓の外、二千mの高度を吹き抜ける風を受けながら警戒しているメンバーの姿を見ていると、申し訳なさや疎外感を覚えるようになってくる。

 そう、疎外感。ジアトーでベルを探しに飛び出したあの日から私の居場所は楽団にはないのかもしれない。これはあくまで私個人が勝手に感じているもので、実際にハブられている訳ではないのだけど『お客さん』という気分が船に乗った時から胸に燻っていた。


「だったら何で私はここにいるのかしらねぇ……」


 自問自答のつもりで口にしてみた言葉は誰もいない通路にポロリと転がる。周りは機関が動く低い唸り、プロペラが空気をかき回す音、風圧と気圧で船体が微かに軋んで鳴る音などで賑やかなはずなのに転がった言葉はやけに響く。

 何でここにいるか――答え、ここ以外に行き場がないから。

 今日の早朝にルナは私達の前から姿を消していた。ライアとは昨日の内に話がついていて、私は楽団に復帰、マサヨシは楽団に新規入団という形になっている。レイモンドさんは行方不明の息子さんを捜すためにまだあの町で頑張ると言っていた。

 こうして昨日まで一緒に行動していた私達パーティは、ルナ一人が抜けたのをきっかけにあっという間に解散してしまった。

 楽団から飛び出した私にとって、昨日まであったパーティに一種の温もりを感じていた。これはなんか、冬の朝に抜け出した布団の暖かさを恋しがるのに似ている。


「――なんでルナは人を拒むのかな」


 二度目の自問自答は与えられた客室のベッドへダイブしてから。

 ベッドに敷かれたシーツにうつ伏せになって、顔を押し付けながら考える。思考を回すと自然に尻尾もクルクルと回る。背中の方でワッサワッサと毛束が振るわれる音がしているけど気にしない。考え事をしていると机を指で叩く癖がある人みたいなものだ。

 客室に入ってからまず考えたのは、口に出たように姿を消したルナのこと。


 それなりの時間をルナ・ルクスという人と過ごしていれば、彼女が孤独を好む人というのが分かってくる。

 学校のクラスでも一人はいるだろう輪の外にいる人。別にイジメでも仲間はずれでもなく、自分から人の輪から外れたがるクラスメイト。ルナにはそんなイメージがあった。

 自分の事は自分だけで解決して、解決できるだけの力があり、他人を余り必要としない自己完結性。ルナにとって他人は取り引き相手か交渉相手、そうじゃなければ敵対者で区別されているように思えた。

 今まで私の周囲には居なかったタイプの人で、今回の様な事がなければずっと知り合う機会のない人だったと思う。

 そして気が付けば、ルナの孤高さに想いを惹かれている私がいた。


「んー……私って、気が多かった覚えはないんだけどな。これがもしかして有名な吊り橋効果?」


 ベルを喪ったところに魅力的に見えるルナが現れたことで気持ちがそちらに傾いてしまう。ベルに対しての後ろめたさや後悔が今更のように湧いて出てくる。

 なんであの時、私は――ああ、もう、頭の中がごちゃごちゃになってきた。やめやめ、これ以上は気が沈むだけ。それよりも尻尾を振り過ぎて尾の毛が乱れているのが気になる。後でブラシッシングして直そう。


 ルナが気になったり、ベルに後ろめたさを感じたり、尻尾が壁を叩くのが気になったり、思考はグルグルと落ち着きなく回り回る。気になるものが幾つもあって考えが上手くまとまってくれない。思考はひたすらに散文的に広がって、定型に収まらない。

 考えが散り散り、てんでバラバラになる頭を抱えてベッドの中で眠気が来るのを待つ。


「ベル……ルナ……どうしていなくなるの」


 誰も答える人なんていないのは分かり切っていても口に出てしまう呟きは、船の動力機関から聞こえてくる音よりも小さい。

 このままジアトーに着くまで数時間、ベッドの上で過ごそう。ずっと感じていたのは寂しさで、私は自分の腕で自分を抱きしめていた。



 ◆



 ヒンデンブルグ号というやたらと大層な名前の飛行船に乗って早くも一時間が経っていた。甲板に出て眼下の風景をぼんやりと眺めるだけの時間だったけど、それなりに見応えのある光景はあった。

 地球の飛行機に慣れていると飛行船の速度は酷く遅い。聞いた話だとこの船の最高速度は時速一二〇㎞だとか。どおりで風景の流れる速さがゆったりとしている訳だ。甲板の上を吹く風も高度の割に緩いので、こうしてのんびりと下界の様子を眺められる。


「で、これが放浪樹海か。ゲーム画面で見た時よりもでかいよな。当然と言えば当然だけどさ」

「そりゃそうだろ。公式設定だと東京二十三区とほぼ同じ位の広さだ。バカ広く見えるのは当たり前だって」

「こんな広い森が『生きて』動くのか。改めてとんでもない世界に来てしまったよな」

「まぁな。何でも森がでか過ぎる上に移動速度がカタツムリみたいなものだかから外見には分かり難いらしいぞ」

「え? ある日突然何もないところにパッと現れたり消えたりするんじゃないのか?」

「瞬間転移の事を言っているのなら違うぞ。ここの森はな、日常的にもゆっくり動いているんだよ。転移はこっちも見たことないな」

「はあ、普段から動いているんだアレ」


 飛行船の下に広がる広大な森を見ながら隣で監視員をやっている人と仲良くなってみた。今朝方の事で気分が沈みがちになっているオレは、少しでも気を紛らわせる相手が欲しかったのかもしれない。

 外の空気を吸いに出たところ、いきなり話しかけてきたこの甲板監視員は人懐っこく話も上手い人みたいで、ここまでオレ達は色々な話題を出して飽きることなくトークをしていた。


「で、放浪樹海のダンジョンっていったら中堅どころで有名だけどさ、こっちじゃ第一級の危険区域扱いされているんだよ。お陰でゲアゴジャとアストーイアの間にある幹線道路が森に飲まれて封鎖、河船か飛行船じゃないと行き来できなくなっている」

「あれ? じゃあ魔獣襲撃の時に来ていた首長国の軍隊はどうやってきたの?」

「森を大きく迂回してぐるっとだとさ。仕事とは言えご苦労様だよな。軍隊って、時としてブラック企業よりもブラックだと思わないか?」

「それを言ったら、今の幻獣楽団のゲリラ活動も大概ブラックじゃね?」

「ははっ! 違いねぇな」


 体を揺らして大げさに笑ってみせる監視員の人、トージョー。見た目は二〇代って感じだけど、オレと結構話が合うし中身はもっと若いのだろうな。案外同い年ぐらいだったりして。敬語とか全然無しでお互い気楽に話をするオレ達だったけど、目は下に広がる森から離れない。

 森から上がってくる飛行型の魔獣への警戒もあるのだけど、森全体のスケールの大きさにさっきから目を奪われていた。

 森の樹の一本一本がやたらと太く大きく、樹高一〇〇mオーバーなんてざら。地球で世界一大きい樹なんて言われているシャーマン将軍の木クラスがここでは普通の樹木。何より森の中心部にある巨大さに輪をかけて巨大な樹が森のスケールの大きさをとことんアピールしていた。


 この森はさっきから話に出てくるように『放浪樹海』って名前がついたゲームではダンジョンだった森だ。映画の『もののけ姫』に出てくるような古く大きな森なのも特徴のひとつだが、さらに特異なのはこの森は『移動』するのだ。

 ゲームでは大陸のどこかに唐突に現れるダンジョンだったけど、この世界ではゆったりとした速度で普段から移動しているらしい。なんにせよ、元の世界では考えられない非常識なものだと考えればOKだよな。

 その樹海の上を飛行船はやや早足気味になって飛ぶ。眼下の森には様々な魔獣がいて、時々上空にまで飛び立ち襲いかかってくる事もあるそうだ。それは高度が二千mあっても安全ではないらしい。針路と置かれている情勢の都合でこんな危険なルートを通っているのだとはトージョーの弁だ。


 不意に話題が途切れてお互いに次の言葉が出てこない瞬間が出来た。空飛ぶ飛行船の上、周りは静かにならないけど耳に入る音のボリュームが一段階下がったような気がした。

 横目で隣のトージョーを窺えば、さっきと変わらず森を眺める姿勢のままだ。肩からスコープ付のライフルを担いで、ポケットが沢山付いたベストを着込んでいる彼の姿はさっき彼自身が揶揄した兵隊みたいな格好だ。

 そのまま黙っていると、トージョーの方が先に口を開いた。


「んで、気は晴れたか?」

「あ、え? 一体どういうこと」

「いや、あんた鏡で自分の顔を見なよ。いかにも女に振られましたって面をしている。余りにも不景気なもんだからつい声をかけてしまったよ」

「お、女って、オレとルナさんはそんな仲じゃないんだけど」


 と言うより、女に振られた面ってどんな顔なんだ? 顔に手をやって顔面マッサージのように軽く揉んでみるけど分からない。


「ほお、『孤月のルナ』に気があると」

「まぁ、その、今朝になって町を出ていったし、実質振られたようなものだし……って、何言わせるんだよ」

「何って、他人の恋の悩みやらを聞いて面白おかしくするために決まってるじゃん」

「サイテーだコイツ、サイテーだっ」

「大事なことなので二回言いましたってか」


 フラレ男のオレをからかいながら、トージョーは沢山あるポケットのひとつからタバコを取り出して吸い始めた。外見はタバコを吸っていても不思議じゃない姿なのに、なぜか同年代の未成年がワルぶって吸っている様にしか見えない。

 一度深々をタバコを吸って、ゆっくりと煙を吐き出していくトージョー。煙は甲板の強い風に流されてすぐにかき消える。

 オレが一連の様子をまじまじと見ていたからか、こっちの視線に気付いた彼は持っていたタバコを笑いながら差し出してきた。


「吸うかい? やるよ。でも貰いタバコする奴は出世しないらしいから気をつけろ」

「こんな姿だけどオレは未成年なんだ」

「はぁ? 何言ってんだか。それは日本の法律だろ? ここをどこだと思っているんだよ」

「……でも、何かずっと吸っちゃマズイという事を聞かされてきたから、今更自由と言われてもなあ」

「確かにこの手のはこっちでも毒だな。だけど、毒のない世界なんて面白くも何ともないぜ。何ならフラレ記念にこのまま一箱やるよ」

「フラレ記念って言うな。だけど、そうだな――」


 ルナさんが出ていって、オレの中で大切な何かが無くなった気がしていた。その気分がずっと胸の奥で燻っているみたいで、モヤモヤした言葉に出来ないものが溜まっていく。

 人間はこういう時のために、タバコってものを発明したのかもしれない。目の前に差し出されたタバコがオレにとっては都合の良いものに思えてきた。

 十中八九ロクなものじゃないと分かっていたけど、それでも手は伸びていた。


「一本貰うよ。ついでに火もくれ」

「おう。ワルの道へようこそ」

「茶化すなよ」


 一本タバコを貰って口に咥えるとトージョーが手にしたライターで火を着けてくれた。

 先端から煙を出して燃えるタバコを見やると、深呼吸するように口から息を吸い込んだ。ノドに入り込んでくるのはひりつくような感触と舌を刺すような苦味、えぐ味。まるで一気に口の中がバカになったようだ。タバコを吸って旨いなんて言う奴の気が知れない。

 口と喉を襲うごちゃごちゃしたえぐっぽさは頭より先に体が拒否して、ノドから煙を吐き出すようにしてむせた。


「ゲホっ、ぐほっ! えほえほえほ……」

「慣れないのに一気に吸うからだ。大丈夫かよ」

「げほ……まあ、なんとか。タバコが体に悪いのを今ものすごく実感している最中」

「とか言いつつ、まだ吸う気なんだな」

「うん。何て言ったらいいか分からないけど、今のオレにはこれが必要な気がしたんだ」

「はーん。そうかい、気が済むまで吸いな」

「わりぃな、サンキュー」


 それでも、オレはタバコのむせるような煙を吸い続けていく。口に広がる苦味が膜を張って口の中を覆っても気にしない。体の拒否感を過ぎてしまえば、煙がノドを通り過ぎる感触だけが残る。

 そのままオレはトージョーと並んでタバコを吹かし、流れていく風景をぼんやりと眺めた。

 人生初のタバコはやたらと苦い味がした。そしてジアトーはまだ遠かった。



 ◆◆



 水鈴とマサヨシ。ルナが関わり別れた二人は、内に様々な感情を抱えてジアトーへと戻っていった。

 ヒンデンブルグ号は名前の不吉さとは関係なく順調に空を航海して、放浪樹海の上を通り過ぎていく。その下、約二千mの地上では樹海の木々をかき分けて進む人影が一つ。

 手にはククリナイフを持って文字通り道を切り開いて森を進んでいる。その人影は上空を飛んでいく飛行船をしばらく見上げていたが、飛行船の姿が見えなくなると道を作る作業を再開した。

 人影が目指す場所はアストーイア外縁の別荘地。帝国から身体能力に任せて徒歩で歩いてきたものの、いよいよ休息が必要になってきた身体を叱咤激励しつつ人影は森の中を進んでいく。

 そして人影の目的は単純明快。


「はぁ、おなか空いたぁ」


 腹ペコなその人影は、向う先でご飯にありつけると信じて進んでいく。

 ルナが新たな遭遇を迎えるまで後もう少し。




 

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