表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の創世記  作者: 言乃葉
First Blood 邦題:ランボー
34/83

13話 Battlefield Ⅰ




 丘の上にある屋敷。その敷地を出て行く小柄な人影をクリストフ・フェーヤは二階の窓から見下ろしていた。


「事こういう段になってお尋ねするのも憚られますが、よろしかったので?」

「うん、何の問題もないよ。もし彼女がここで死ぬようならボクの見込み違い、それまでの人物だったという話で何の痛手もない」


 貴種である金眼の月詠人、それを鉄火場に放り込んで良かったのか。後ろで控えている従者のエカテリーナからの問いかけに彼は何も気負うことなく答えて、新しく血が注がれたワイングラスを手にした。

 クリスは元々金眼をさして特別視していない。確かに貴重な存在だと思ってはいるがそれだけだ。一部の月詠人にあるような信仰の対象にはならない。

 ただ、これから起こるであろう混沌とした時代において一族を纏め上げるには都合が良い存在とは思っていた。だからこそルナを王の座に据えようと迎え入れてみたが、結果はこの通りフラレてしまった。

 もちろんこの程度で簡単に諦めるクリスではない。むしろ今回の会談は前振り、一種の挨拶みたいなものだったと彼は捉えている。


「この争乱が片付いたらもう一度ゆっくり話をしてみよう。今度はディナーに招待してみるのも良いかもね」

「……失礼ながら、あんな出生の分らない人物をクリス様は本気で月詠人の王の座へ着ける気ですか? 貴種であることは認めますが、何も王の座まで」

「良いんじゃないかな? 他のお偉方は金眼を崇めているような人ばかりだし、むしろ積極的に担ぎ上げようとするだろうね。その人物の人となりなんてお構いなしで」


 皮肉るような軽口を口にしてグラスに口を付ける。舌に感じる血の味はとても甘露、クリス好みの血だ。

 一族を纏め上げる求心力として金眼の少女ルナ・ルクスを御輿として担ぎ上げ、そして担ぎ上げた人物は権力を握る。古今東西良くある権力を巡るお話だ。

 アストーイアの町が属するデナリ首長国は、多種多様な種族が集う多種属国家になる。その権力の頂点は首長と呼ばれる一種の国王だが、それとは別に種族ごとの氏族組織がこの国に隠然とした影響を与えている。

 クリスもその権力の一端を担っており、アストーイアとゲアゴジャの二つの町では市長などより発言力があるほどだ。その彼が月詠人の王としてルナを担ぎ上げようとすれば、それは割とあっさり実現してしまう。

 だが、そうはならなかった。そしてクリスはそれで良かったとすら思っている。


「あの娘はまだ幼い。もう一〇〇年ぐらい経験を積んだらボクは本気で彼女を王の座へと導くつもりさ。その時には今の彼女の仲間は世を去っているだろうし、後腐れはない。焦ることはないさ、時間は何時だってボクらの味方だ」


 外見が十歳前後の少年の姿で止っているクリスが言うとおかしく聞こえる言葉だ。でもクリスはルナの数倍の歳月を生きてきたのは事実で、その経験の目から見るとルナはまだ幼いように映った。

 人と触れ合うのを恐れ、そのくせ人に興味を持つルナ。臆病であることに引け目を感じないが同時に大胆になれ、他人を切り捨てることに躊躇はないが仲間は捨てきれない。そんな葛藤だらけのルナにクリスは微笑ましさを感じていた。彼女の表情を思い浮かべつつグラスを傾けると、さっきよりも血の味が良い物になっている気がした。

 直接接した時間は短いが、目をかけても良いと思えた。この争乱を是非とも生き抜いて欲しいものだ。そうしたら今度はゆっくりと話をしよう。


 窓の外でスクーターらしきものに乗って丘を駆け下りていくルナの姿に心の中のみで声援を送ったクリスは、次の話に切り替える事にした。

 言うまでもなくその話題は、アストーイアを現在も襲撃中の化け物の集団についてだ。自身の庭と思っている街を荒らされて無抵抗でいるほどクリスは大人しい性格をしていない。

 穏やかな表情の裏側では、こんな真似をした愚か者にどういう誅罰を下すか怒りに燃えた思考が駆け巡っている。


「さて……話変えるけど、何人兵を出せる?」

「ここの守りもありますので、五〇が限界かと」

「陸軍小隊一個分か。この小さい町を考えると上等だね」

「はい。日没までは後二時間、夜の月詠人の兵五〇は強力な数になります」


 淀みなくクリスからの問いかけに答えるエカテリーナは、クリス越しに窓を見やった。

 西の広大な河口湾へと傾いていく太陽、それが沈むまでは月詠人に戦闘は厳しい。陽の光の下で平然と動けるルナのような手合いは本当に例外なのだ。でも太陽が沈み、夜が来れば彼らの時間だ。

 人間の遙か上を行く身体能力を持つ月詠人の兵隊、それはアストーイアを襲う化け物を撃退する強力な戦力となるだろう。

 問題があるとしたら化け物の耐久力、防御力を前にこちらの火力が徹るかだ。


「ガンスミスのクララから連絡は?」

「来ています。注文した全ての突撃銃の改修は済んでいると。以前のように銃弾が通用しない事態にはならないでしょう」

「だと、いいけど。何しろ推測を元にしていきなり本番だ。この方法も通用しなかったら僕らは本当にお手上げで、異界から来た皆さんにお任せになってしまう。それは頂けない」

「では、日没後兵隊をクララの店へ向かわせ、武器を入手して反攻行動に移ります」

「ああ、かかる費用と責任は僕が負う。だから僕の庭にやって来た無粋な連中を撃滅しちゃって」

「かしこまりました」


 以前に数度街の周囲に現れる魔獣との戦闘を経て、こちらの武器が通用し難い事を彼らは経験的に学んでいる。

 魔獣の防御、耐久能力は通常の攻撃手段を寄せ付けず、小型の個体ですらロケット弾や砲弾を撃ち込まなくては傷付けられない程で、余りにも効率が悪い。

 魔法も通用するが、熟達した使い手は少なく、やはり手数が揃えられない。今日までの魔獣と街の小競り合いは、なんとか退散させるぐらいの成果が限界だったのだ。

 その中で例外と言える存在があの突然に街に現れた人々だった。彼らの振う武器は一撃で化け物を仕留める事が可能だ。

 ならば彼らの武器を手に入れれば対抗できるのではないか? 都合良く同種の人間でガンスミスのクララと渡りを付けることが出来たクリスは、試しに私兵の武器を改修する依頼をしていた。それが今こうして使われようとしていた。


「彼女の店に電話は引いてあるよね? 事前に連絡はしておいて」

「分りました。さっそくにでも」

「ところで、また話は変わるけど……」

「はい、何でしょう?」


 再び話を変えてきた主人にエカテリーナは身構えた。クリスの言葉のトーンは戸惑いを表して、視線は窓の外。もう姿の見えなくなったルナを追っていた。

 あの金眼の少女についてまだ何かあるのか。そう考えていた彼女に、思いもかけない言葉がやって来た。


「彼女が乗って行ったスクーターなんだけどさ、あれは屋敷のだよね?」

「そうでしょうね。ここまで車で来ましたから足として借りたのでしょう。まあ、スクーター程度一台や二台……」

「あの黒いヴェスパ、見覚えがあるんだけど」

「え? ひょっとして私のヴェスパ。そんな……あ、あぁぁ」

「あ、やっぱり君のだったか」


 お気に入りのスクーターを無断借用された事に頭を抱えて膝をつく従者。まあ、運が良ければ返ってくるだろうね、と割と無体な感想を内心で呟いたクリスは、落ち込むエカテリーナを放置してクララへの電話連絡を自分でしようと部屋を出て行った。

 窓の外は今だ化け物が暴れる巷だ。駆け抜けていったスクーターが群れを割って出来た道はもう塞がっている。一体どれだけの数がアストーイアの小さな街に殺到しているのだろうか。

 日没まで後二時間を切った。彼ら月詠人の時間が来るまでもう少し。



 ◆



 スロットルを回せば2ストロークエンジン独特の甲高い排気音を響かせ、黒のスクーターは速度を増していく。ハンドシフトでギアを上げてさらに加速、タイヤは路面との間でスキール音を立てて前輪の片持ちサスペンションが軋みを上げる。今の自分は丘を全速力で駆け下りている真っ最中だ。

 顔に吹き付ける風は強い。ヘルメットの無い頭から伸びた髪も風で後ろへと引っ張られる。


 クリストフの屋敷までは車で来ているので帰りもそれなりの足が欲しいが、彼の申し出を断っている手前車を回せとは言い出せなかった。

 その代わりに屋敷にあったスクーターを借りたわけだが、急ぎだったせいで無断借用なのが心苦しい。後で謝罪込みでキチンと返却しよう。

 フェンダーライトとバーハンドルが特徴の旧式ヴェスパに見えるスクーターに乗り、屋敷の門を飛び出してからが本番だった。


 腰には返却して貰った武装一式をまとめたウェストバッグを巻き、腰の両脇には二挺の拳銃を収めたホルスター、サスペンダーには手榴弾も追加で二個吊るし、急場で整えた戦闘用意は出来ている。

 丘から市街地へ下る道を数多くの魔獣が塞いでいる。これらを突破して宿泊していたホテルへと戻らなくてはいけない。なかなかに難易度が高いミッションだ。でも、やり切ってみせる。


「ジン、そっちは大丈夫?」

「委細問題無い。遠慮無く飛ばすと良い」


 後ろでシートに掴まっているジンから心強い答えが返ってきて、自分の右手はスロットをさらに回す。エンジンの唸り声は一段と高くなった。

 甲高いエンジン音に気付いた魔獣達は一斉にこちらに視線を向けてくる。

 先日戦った軍隊狼、恐竜のヴェロキラプトルに酷似しているランドラプター、クマとアルマジロを足して2で割ったような外見をしている武装熊、いずれもゲームで見た魔獣だ。そしてゲームとこの世界とは似て非なるもの、自分はこれらを相手にどこまで戦えるだろうか。

 とにかく足を止めてはダメだ。囲まれて押し潰されてしまう。突破口を作る意味でも最初に大きな一撃だ。


「まずはこれでっ」

「派手にいくつもりか」


 サスペンダーに吊るした柄付手榴弾を左手に持って、モデル元のM24手榴弾には存在し無いリングを口に咥えてピンを引き抜いた。

 安全レバーが弾け飛び、着火。遅延発火で爆発まで三秒。口の中で二つ数を数えて、進路上の魔獣の群れ目がけて投げつける。

 放物線を描いて空中を飛んだ柄付手榴弾は、地面に着く直前に爆発。周囲に爆風を振り撒いた。破片をばら撒いて殺傷する設計ではないので有効範囲は狭いが、こうして突撃しながら活路を作るには適していた。

 爆発で巻き上がる土煙と少しの血飛沫、正面から吹きつけて来るそれらを無視して出来た道をスクーターで突っ切っていく。


 追い縋ろうとする後ろの魔獣達は、行がけの駄賃とばかりに残る一個の手榴弾を後ろ手に放り投げて対応。爆音と爆風が背中を押して、魔獣との間に壁が作られた。

 街中で爆弾をポンポン使う事については非常時で押し切らせて貰う。爆風で近くの家の窓ガラスが割れて、外壁にヒビが入ったのも見えたがやはり無視、人死にが無いのが良い事だ。ここまでヴェスパのスロットから手を放していない。周囲の風景が激流のように流れていく。


「次、前方来るぞ」

「了解」


 ジンの警告に答え、バッグに手を伸ばし中から長物を取り出した。ウェンチェスター・タイプ87。長物の散弾銃を左手一本で抜き出す。

 抜きざまにスナップを利かせて銃をグルンと一回転、レバーがコッキングされて薬室にショットシェルが装填される。

 銃口は行く手を遮るランドラプターの小集団に向けられ、発砲。成果を確認する事無く再装填、ウィンチェスターをスピンコックさせて続けざまに撃つ。

 散弾は三匹に命中して致命傷を負わせ、残りは散り散りに逃げる。出来たスペースにスクーターを突っ込ませて走り抜けた。


 小排気量のスクーターで出せる限界近くの速度で舗装された道を疾走して、多数の魔獣の中を潜り抜けていく。

 ハンドルを強引に振って回避し、散弾銃を撃って小物を散らし、ジンが触腕をムチにして周囲を打ち据えて道を作って先を急ぐ。

 元々が小さな港町なのでそれほどの距離を走らなくとも元の下町広場まで戻って来られた。屋敷を出てから五分と経っていないはずだが、ジェットコースターのような走りの後だと一時間のように錯覚してしまう。

 この広場は屋敷とホテルの間にある通過地点になる。ここから屋敷のあった丘とは別の丘に登り、山の手のホテルに向かう道順だ。

 まだ先はあり、止っている暇はないはずだけど目の前の光景にスクーターの速度は遅くなっていた。


「また、か」

「そうだな。原因は違うが、また惨劇を前にしてしまったな」

「……嫌な縁」


 街のイベントで会場になっていた下町の広場は魔獣達の祭会場になっていた。立ち並んでいた屋台は軒並みなぎ倒されて、広場を囲む建物は破壊され、何より逃げ遅れてしまった人達が魔獣のエサとなっている。

 肉や骨を噛み食らう音が耳に入り、血の匂いと内臓の内容物のすえた臭いが混ざったものが鼻を刺激する。辺りには飛び散った血が道や壁をべっとりと塗装している。

 ジアトーで見慣れてしまった光景が場所を変えて再現されている。ここまでの道行きが血の斑道になっている過去を振り返って、顔をしかめてしまいそうだ。


「主、先程は運転に集中していたため言い出せなかったが、あの屋敷の外にいるのだから念会話が使えるのではないか?」

「あ、そうだ。連絡を入れないと」

「魔獣どもは食事に夢中なのが多い。この身が気を張っておくので今のうちに連絡すると良い」

「うん」


 気を遣ってくれたのか、ジンがみんなとの連絡を勧めてきた。顔には出てないはずだが、そこはさすが使い魔なのか主人の心理を察するのが上手い。

 こうしてなし崩しで主従関係になっている自分とジン。余人はどう思うかはともかく、個人としては一度腹を割って話がしたい。ジンは自分を主人と仰ぎどう思っているか、今後ともそれで良いのかなど聞きたいことはある。

 これが終わってお互い無事ならそうしよう。心のメモにしっかりこの用件を書き込むと、後はみんなに連絡するため念会話を始めた。



 ◆◆



『――それで、そっちは無事なんだな?』

『ええ。そちらはホテルへ?』

『ああ、今全速力でマラソン中だ。建物が見えているから五分としない内に着くだろう』

『了解。ホテルで合流するのは?』

『OKだ。じゃあ切るぞ、またデカイのがやって来た』


 レイモンドと念会話が切れたところで、ちょうど散弾銃の給弾作業は終わった。

 最初はマサヨシ君に繋いだのだが、無事なのか、ケガはないのか、何処行っているのかとこっちが言葉を返す暇無く念を飛ばしてきて、さらに水鈴もこれに混じってきてまともに会話が成立しなかった。

 心配させた事は悪かったと反省するが、緊急時の今は必要な情報を必要な分だけやり取りするだけの冷静さだ。ここは分別盛りの大人のレイモンドに代わってもらい、先のような短いやり取りだけで話を終わらせた。

 情が薄いように思われるだろうが、しっとりと時間をかけるのは生き残った後で幾らでもやれる。

 今は――


「主、三方向からランドラプター」

「うん」


 戦闘の時間だ。

 マサヨシ君のマシンガン念会話で思わずスクーターを止めてしまったのが悪かった。ジンが触腕を振りかざして牽制してくれたが限界、我慢弱い魔獣達が三方から跳びかかってきた。

 体高五〇㎝七面鳥程度の大きさの二足歩行恐竜で足には極めて鋭い鉤爪、小さい身体でも驚異的跳躍力で跳びかかり自身より大きな獲物でも怯むことなく襲いかかってくるのがこいつらランドラプターだ。

 正面の一匹を囮に、四時、八時方向から同時にやって来る二匹が本命。これに対処する。


 給弾を終えたウィンチェスターのレバーを素早く一往復、弾薬を装填して正面の囮を撃つ。

 反動で上に上がる銃口の勢いのまま銃を上に。そして重力で下へ下がる勢いでレバーを操作、撃ちガラが排莢口から弾けるように飛び出す。すぐさま銃は横に倒され、銃口は左へ。八時方向から来る敵に銃火を見舞った。

 至近で放った散弾は二発で二匹を仕留める程に強力だ。敵は血飛沫を上げて道路に転がる。

 残った右からの敵はレバー操作をする暇がない。鉤爪をむき出しにして跳んで来る敵に自分は一瞬だけ無防備になった――が、これは自分一人だった場合の話で、後ろに乗ったジンが素早く対処して無防備になどならなかったのが現実だ。

 逆に空中で飛びかかる姿勢をしているラプターこそ無防備だった。ジンが突き出す二つの触腕は二本の槍となって敵を突き刺す。

 飛びかかった勢いもあって深々と急所を刺されたラプターは、一度だけ大きく痙攣してから脱力した。ジンが触腕を引き抜いたときはピクリとも動かなくなっている。


「ありがとう」

「当然だ」


 こうしてジンのアシストもあって二発の弾と使い魔の一撃により三匹の敵を仕留めた。


 周囲に目をやれば、銃声を聞きつけてこちらに寄ってくる魔獣の姿がある。広場の魔獣全てを相手にしていたら弾薬のストックなどすぐ底をつく、移動を再開して早く合流しなくては。

 停車した時にエンジンも一緒に止ったヴェスパ。再始動させようと右サイドにあるキックペダルに足を伸ばす。


「――きゃあぁぁっ!」

「なに?」

「生き残りの住人がまだいたようだ。あそこだ」

「あれは、アーマーアングラー?」


 エンジン始動前に女性の悲鳴が聞こえてしまい、ジンが示す場所に目を向けた。

 レイモンドが出場する予定だったフェイスオフの特設リングが視界に入り、そのリングの上に出場選手さながらに巨体を載せている奇形の陸生魚類がいた。ゲームでも何度も見たアーマーアングラーという大型魔獣だ。

 その魔獣の前には二つの人影があった。一人はこの町の男性警官らしく、日本や米国でも見られる紺色の制服を着て手にはトンプソンらしきサブマシンガンを持っている。もう一人はその警官に庇われている女性で、悲鳴は彼女のもののようだ。


 アーマーアングラーはすでに二人を捉えている。深海魚みたい大きな頭部、それに見合った大きな口は大人一人を丸呑みに出来るほどだ。鋭い歯が並ぶ口を細かく打ち合わせ、魔獣は二人に飛びかかる機会を窺っている。


「この化け物めっ!」


 警官が罵声を浴びせながら手にしたマシンガンでアーマーアングラーを撃つ。シューティングレンジで何度か耳にした四十五口径弾が連射される重い銃声が連なり、弾丸が魔獣に向かって吐き出された。

 両者の距離は二〇Mとない。アーマーアングラーの巨体もあるため外しようがない、のだが――


「くそ、効いていない!?」


 銃弾は魔獣の体表を覆う鱗に弾かれて効果があるようには見えない。アーマーと名前が付けられているようにこの魔獣の正面防御力は強固で、顔面を覆う鱗は一枚の大盾になっている。ゲームでもこの装甲を抜くのはそれなりの労力が必要だった。

 それでも銃弾に撃たれるのが不愉快だったのか、アーマーアングラーは警官を真っ先に標的と見定めた。

 陸上生活用に発達した胸ビレを足のように力を溜め、一気に跳躍。二〇Mの距離をひとっ跳びで縮めて大口を開けて警官に噛み付いた。


「あ、きゃああ」


 上半身を喰われ残った腕がマシンガンと一緒に地面に落ち、下半身も血を噴き出しながら倒れる。警官のあえない最期に女性はまた悲鳴をあげた。

 警官の血を浴びて悲鳴をあげる女性が魔獣には不愉快だったのか、警官の肉を咀嚼しながらアーマーアングラーは女性に目を向ける。今にもその場に座り込んでしまいそうな彼女は、どう見ても戦闘能力があるようには見えない。十秒としない内に魔獣のエサになってしまう被害者だ。

 そこに自分は割り込んでいた。


 散弾銃を三発、続けざまに撃つ。ダブルオーの鹿撃ち用散弾が一発辺り九個、合計二十七の散弾が魔獣に命中した。

 だが、半ば予想どおり散弾は魔獣の硬い鱗を貫通できず、耳障りな擦過音をたてて表面を傷つけただけに留まった。それでも注意をこちらに向けるには充分だった。


「なにをやっているのだか、我ながら。こういうのは柄ではないはずなのに」

「見捨てられない辺り、主の心根はかなり良いものだな」

「それは単なるお人よしに聞こえる」

「違うのか?」

「違うと言いたい」


 自分はヴェスパをその場で乗り捨ててアーマーアングラーに駆け寄っていた。人助けのために。警官は間に合わなかったが、女性の方は無事だ。スプラッタな光景を見て心に傷を負う事までは面倒見れないが、生きている限りは取り返しがつく可能性はあると思いたい。

 それよりも急ぐ身のはずの自分がこうして人助けをしているのが悩ましい。急ぎたい、でも目の前の死を見捨てられない。この辺り腐り切っても元自衛官だからか? それとも人としての最低限の精神なのかもしれない。そう思っておこう。

 ジンと軽口を言い合いつつ、背後に置いた女性に目をやる。


「ケガは?」

「――え。貴女、は?」

「いいから、立てる? 動ける?」

「あ、う、ごめんなさい」

「了解。ジン、彼女の守りを頼んでも?」

「承知した」


 恐怖で腰が抜けてまともに動けないらしい女性をジンに任せて、正面の魔獣に向き直る。都合良く待ってくれていた。それとも襲いかかる機を窺っていたのか。

 周囲に居るはずの小型の魔獣たちも襲い来る様子は無い。大型魔獣の戦いに巻き込まれないだけの知恵があるのだろう。隙を突いて女性を狙う個体がいてもジンが対処してくれるはずだ。

 結局、目の前の人を切り捨てるほど非情になれなかった自分の精神衛生のために戦うことになった。言い訳する気も無く、これは自分のための戦いだ。


 自分と魔獣が正対して数秒。その間に思考は戦闘に切り替えられ、このアーマーアングラーを如何にして仕留めるか考えを巡らせる。

 手に持っていた散弾銃はスリングで肩にかけた。すでに全弾五発撃って弾切れ、再装填の時間は今のところない。すぐに使える武器は腰の二挺のトカレフとナイフぐらい。ライフルを取り出す暇も今のところ窺えない。

 ゲームで登場したアーマーアングラーを参考にして攻略をするのが方針だが、果たしてゲームの通りに上手くいくのか……いや、余計な事に考えを巡らしている時間はないようだ。

 正対していることに真っ先に焦れたアーマーアングラーがさっきと同じく大口を開けて跳びかかってきた。


 アーマーアングラーの攻撃手段は強力だが直線的で単発だ。跳びかかっての噛み付きと正面装甲に物を言わせた体当たりの二つで、飛び道具の類は無い。突進のタイミングさえ見切れれば大型魔獣の中でも狩りやすい相手だった。一部では『魚先生』とか言われているほどだ。

 問題はルナの肉体を保有している自分が、リアルの魔獣を相手にどこまで目が追いつき身体が動くかだ。前回の軍隊狼の時のように身体が動けばベストだ。

 後ろの女性を巻き込まないよう位置を調整して突進の進路を誘導し、ここぞというところで大きく横に跳んで初撃を避ける。寸前まで体があった場所を魔獣の大口が通過していく。


 避け様に地面に落ちていた警官のマシンガンを拾い上げ、アーマーアングラーの後ろに回りこむ。

 ゲームでは正面装甲は硬いが後ろは脆いのが特徴だった。トンプソンマシンガンそのものと言っていいコレでも充分ダメージは与えられるはずだ。

 念のためボルトを引いて一発目を弾き出し、両手でしっかり構えてトリガーを引いた。

 重い反動が肩を蹴り、銃声が弾丸と一緒にアーマーアングラーに叩きつけられる。硬い地面には空薬莢が金属音をたてて転がり落ちる。距離は五M未満、絶対に外しようのない距離だ。

 ――なのに


「後ろからなのに効かない」


 魔獣の体に着弾した拳銃弾は相手に大したダメージを与えることはなかった。正面の装甲よりも傷付ける事は出来たものの、鱗を貫通できずにポロポロと落ちるだけだ。弾倉内に残っていた十数発の弾を撃ち込んだが、余りダメージになっていなかった。

 動揺している暇は許されない。すぐに次の行動をして動きを止めてはダメだ。

 弾切れして重りにしかならないマシンガンを捨てる。魔獣はすでに向きを変えて再度突進してきた。今度は口を開けず、装甲を武器にした突進でさっきよりも数割り増しで速い。


「くぅ!」


 こちらも庇う相手が後ろにいないので、避けるタイミングを早くしてかわす。のだが、向こうがより速かったらしく巨体が肩をかすった。

 横にかかる力で強制的に体は回され、弾き飛ばされる。どうにか踏ん張って倒れることはなく、すぐに体勢を立て直せたのが幸いか。

 かすった肩を見るとシャツが破けて中の肌も露わになり、血が出ている。そこから心臓の鼓動に合わせるように痛みがドクドクと伝わってきて、触れると熱を感じた。


「主っ!」

「いいから、大丈夫。多分」


 こっちの負傷にジンが悲鳴に近い声を上げたので手を軽く挙げて制した。

 痛みに慣れているとまではいかないが、動きが止まるほどではない。再度こちらに体を向けて突進の構えを見せる魔獣目がけ、目潰しの閃光呪紋をフィンガースナップの一挙動で放った。とにかく体勢を整える時間が欲しい。

 弾けた閃光は一瞬だけ周囲を漂白する。視界が晴れると、アーマーアングラーが目暗ましにのたうち始めている。設定では痛みを感じるくらいの目暗ましとあるから十秒ぐらいは稼げそうだ。

 この出来た時間でまずどこから体勢を整えるか。


「主、装備だ。装備を整えるんだ」

「装備……ああ、そうか」


 ジンのアドバイスにすぐさま体を動かす。バッグからこれまで身に纏っていたジャケットとグローブ、ライフルを取り出して、散弾銃をしまう。

 まったく、この辺りはゲームでも良く言うではないか『武器防具は手に入れても装備しなくては意味がない』と。それを忘れるとは戦闘を前に緊張していたらしい。

 戦闘法衣のワンピースは今の服を脱いでいる時間がないため省略。ジャケットとグローブを身に着け、ライフルを肩に担ぐ。曲りなりにもこれは戦闘服だ。普通のそれより戦いに適している。それに身に着けると不思議と気分が落ち着き、傷の痛みが和らぐ。

 これがこのジャケット『シユウの革衣』の効果だろうか?


 装備を整え終え、アーマーアングラーを見やる。あの調子ではもう少し余裕はありそうだ。

 時間も押している。確実に短時間で仕留めるため幾つか罠を仕掛ける。

 脳裏に浮かぶ術式を複数用意して、その場でヒザを曲げて手を地面に置く。地面に向けて、あるいは建物の壁に向けて術式を放った。


「呪紋展開、設置」


 手から光で構成された陣が幾つも飛び出て、地面を滑るように移動して消える。設置型の魔法がこれで用意できた。

 ここでアーマーアングラーの視力がようやく戻ったようだ。正気づいて呆然と動きを止めている。まだ好機の時間は続いていた。今度はこちらから仕掛ける番だ。

 跳ねるように足を迅らせて後ろを取り、ホルスターから抜き出した二挺のトカレフを向けて撃つ。


 撃つ撃つ撃つ……弾切れでスライドがホールドオープンするまで撃ち尽くす。

 マシンガンよりも鋭く短い銃声がして、アーマーアングラーの背中から銃声の数だけ血が噴き出した。


「今度は効いた」


 ダメージを受けて悲鳴のような鳴き声を上げる魔獣を見て、マシンガンとトカレフの違いを考えてみた。

 銃種? 使用口径? 使用火薬? どれも違う気がする。手持ちの武器かそうでないか、というところか?

 出てきた疑問の答えはまだ漠然としている。でも戦いの最中だこれも後に回そう。


 トカレフはクララさんから渡された臨時の武器、だから予備弾倉は無い。二挺とも全弾撃つと再度撃てるようになるまで手間がかかる。

 ホールドオープンになったトカレフをそのままホルスターにしまい、肩にかけたライフルを手にしてボルトを操作して初弾を装填する。ダメージの怯みから立ち直った魔獣がこちらを睨みつけてくる。

 種族は違えど伝わる意味は理解できた。相手への極めて純粋な殺意だ。押し潰して噛み殺して、また押し潰してやる。そんな言葉さえ聞こえてきそうだ。


 もちろん、相手のペースに付き合う義理は自分にはない。さっさと勝負を決めにかかる。

 突進の体勢に入りだしたアーマーアングラーの足元、そこに展開した陣の一つを仕込んでいた。

 拘束呪紋――発動。アーマーアングラーの真下に現れた魔法陣から幾つものトゲ状のものが突き出され、その奇形の体に幾つも刺さる。その途端、魔獣は呻きの声を出して痙攣しているように体のあちこちを引きつらせて、ヒレを震わせる。それはあたかも電極を刺し込まれたように。

 拘束呪紋の一種、スタンショックトラップ。対象に電撃を見舞い動きを止めるというものだったが、現実の目で見るとこんな風になるとは。興味深い様子ではあるけど、それよりまずトドメを刺さないとダメだ。


 これが最後とまたも装甲の薄い後ろへと素早く回りこみ、移動の間に手にしているライフルのセレクターを操作する。

 そして構える。正式なライフルの構え方ではなく、重心を落として銃床を脇に抱え込み腰だめにする。強力な反動に備える構えだ。

 トリガーが引かれると同時にサブマシンガンとは比較にならない大音量の銃声が轟き、体を蹴り付ける反動もまた強力だ。フルオートで放たれる7・62×51㎜弾の反動は威力に比して強烈だが、やはりこの身体だとかなり押さえ込める。腰だめに構えるまでもないようだ。

 そして放たれるライフル弾の威力も拳銃の弾とは比較にならない。十数発の弾丸は次々とアーマーアングラーの体を抉り、貫き、あっという間に致死へと至らしめた。


 魔獣の体から力が抜けて、同時に命も抜けた。歩行用に発達した胸ヒレは体を支えられずに巨体の下に潰れて、銃弾を受けた体からは大量の血が湧き出て、一部大きな穴が開いたところからは内臓の一部もはみ出した。

 アーマーアングラーとの戦闘は終了。まだ周囲に魔獣は数多く残っているのを思い出し、続く戦闘に備えて気を引き締める。空になった弾倉を替えて、残弾に気を回しつつジンと女性のところへと戻った。

 この世界における対大型魔獣戦の初戦としてはまずまずの戦果だろうか。頭ではそんな事を考えていた。



 ◆◆◆



「あの、ありがとうございます。あたし、フェイスオフの実況しているシェリルといいます。知ってますか? ラジオとかで放送しているんだけど」

「いや、知らない。それより動ける?」

「……はい、なんとか」


 シェリルという女性は手を貸すとどうにか立ち上がることが出来た。ざっと見て外傷はなく、動くのに支障はなさそうだ。

 傷で思い出して、さっき受けた肩の傷の部分に手をやると軽い鈍痛を感じる。感じるけど傷の割にこの程度で済んでいるのが不思議と言えば不思議に思えた。

 取り合えず戦闘行動に支障がないと傷の程度を見積もり、今後の行動予定に頭を動かす。


 先ずは助けたこの女性シェリルをどうするか。まさか後は自分で何とかしてね、と魔獣がたわむろしている広場に置き去りにする訳にもいかない。助けた理由は自己満足だが、自己満足だからこそ一安心できるところまで面倒は見ないといけない。

 女性を上から下まで見てひとしきり考えること数秒。このままホテルまで連れて行くのがベターな選択だと結論が出た。

 彼女の戦闘能力はこうして改めて観察してもあるようには見えない。どこか適当な場所に身を隠せるなら良いが心当たりも無い。となると、このまま目的地のホテルに向かう選択しか思い浮かばない。

 移動方法は先程乗り捨てたスクーターだ。ジンに小さくなって貰えば二人乗りぐらいは問題ない。

 ざっくりと方針を決め、女性に行動方針を伝える。


「私はこの後丘の上のホテルまで行く予定があります。貴女もそこへ避難させようと思います。どうでしょう?」

「う、うん。いいけど、丘の上のホテルっていうとシブリーホテルかな? あのお高い」

「うん、確かそんな名前だったね。それで、行く?」

「ええ、お願い助けて」


 自分が観察していたせいで女性は落ち着かない様子だったが、提案を出したら口に出して助けを求められた。

 助けを求められたとあっては、本当に一区切りつくまで面倒を見なくてはいけないか。わずかに煩わしさを感じつつ、女性の求めに頷いた。まずはスクーターを拾いに行こう。


 ――足を踏み出した時だった、この場に明らかに似合わない音楽が聞こえたのは。

 ストリングスが奏でる陽気で軽快なコード。ヴァイオリンのように引くものではなく、弾く音。それは――


「……ギター?」

「やっほ。凄いじゃん、アーマーアングラーをここまで短時間で片付ける人はそう居ないよ」


 倒したアーマーアングラーの影からギターの音色と一緒に白い人影がいきなり現れた。

 気楽そうに声をかけてきたその人影は、白い軽鎧にマントとピンクブロンドの髪が印象に残る十代半ばの少女。手には真っ赤なエレキギターを抱えて、流れるように演奏をしている。

 彼女を見たのはこれで二回目だ。しかも今度は正面から向かい合っており、逃げ場はなさそうだ。


「S・A・Sのアルトリーゼ」

「およ、知ってるんだ。って、『エバーエーアデ』じゃあ有名なつもりだったし当然か。ならあたしがここで何をしているかは知っているかな?」

「知らないが、ジアトーを君らが破壊したのは人づてで知っている」

「そこは知っているんだ。じゃあ、答えは出たようなものでしょ」

「この町をジアトーのようにする?」

「That's it」


 少女の容貌でにこやかに犯行を認めた。

 自分は正義感が人並み以下と思っている人間だが、非道な行いをにこやかに認める程ではない。目の前に現れた彼女に対して怒りは感じないが、呆れに似た気分は持ち始めている。

 軽く息を吐いたが、思いのほか大きな溜め息になってしまった。自覚無しに疲れが出ているのだろう。


「おや、怒らないの? 今まで会って来た人だったら『この外道』とかなんとか言って戦いを挑んできたんだけど」

「それは大変だったね。私は面倒事が嫌いなだけなんだ。通して欲しい」

「イヤ。あたしはその面倒事が大好きなの」

「最初から私を決め打ちか」


 ギターの演奏は止み、マントに収納される。代わりに彼女の身の丈程の杖が出てきた。背面にバッグがあるようだ。

 笑顔のままアルトリーゼの戦意が増していくのを肌で感じる。彼女は全身で戦えと言っているのだ。

 とんだ戦闘狂に鉢合わせてしまった。今日はとことんまで不運な巡り合わせになるらしい。


 後ろの二人に目を向ける。シェリル女史は腰が引けて身の置き場に困っている様子で、ジンは自分に加勢しようしている。

 周囲に目を向ける。広場に居る魔獣の数は来たばかりの時よりも減って、まばらになりだしている。中心的存在だった大型魔獣が倒されたせいかもしれない。

 最後に正面の少女に目を向ける。今の自分よりも幼い容貌の女の子が、目を輝かせて戦いを挑んで来ているのは思った以上にシュールな光景だ。もちろん油断なんて許されない。彼女はあれで何人もの人を殺してきている。しかも逃がすつもりは微塵もない。


「ジン、こっちの加勢はいらない。シェリルさんの守りをお願い」

「良いのかね」

「ええ」

「承知」


 彼女を撃退しないと道は開けないなら仕方ない。手に持ったタイプ・14ライフルに軽く力が篭る。

 シェリル女史の守りをジンに頼み、アルトリーゼに向かい武器を構えた。


「うんうん、そう来ないと。楽しい楽しいバトルをしようよ」

「基本戦いは楽しむものじゃなく、冷徹に遂行するものだと教わった。楽しむ気はない」

「つれないんだ。でもいいよ、あたしが楽しくしてあげるから。貴女って可愛いからかなり盛り上がれるかも」


 バトンの様に杖をクルリと回して構えるアルトリーゼの目はさらに輝き、熱の篭った視線を向けられる。無垢そうな容貌に反して表情はとろける様に淫蕩で、何やら背徳的な何かを思わせる。

 こんな人物を相手に戦う決意をした事に後悔する。シェリル女史を見捨てて逃げることも可能だ。やってしまおうかと誘惑に駆られた。後ろを見やると、怯えた目で見返してくる女性の姿があった。

 見捨てるのは簡単だけど、こちらの方が悔やむ度合いは低そうだ。戦意と共に戦術を組み上げる。やると決めたら躊躇無しだ。


「盛り上がれる云々は別として、来れば良い。撃滅してやる」

「――アハっ! 貴女って最高」


 構える杖から火の粉が迸り、彼女が杖を回すたびに火勢は増していく。火の粉は火に、火は炎に、炎は劫火へと変じる。

 自分はライフルを構えて迷い無く敵と認識した相手に銃口を向けた。

 そして自分のアストーイアでの戦闘は本格化していく。戦場となった街の喧騒はまだ止みそうにない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ