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ホテルの使い方〜観光はそこそこにホテルでまったり過ごしたい〜  作者: 一年目の平凡な中小企業の社長


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9/21

第9話:みんな大好き!ヨコハマグランド①

 月曜日。 目覚まし時計の音は、容赦なく現実を突きつけてくる。 鏡の前でネクタイを締め直し、僕は深く息を吐いた。昨日までの「プレミアのお部屋」の柔らかなシーツの感触は、もう遠い夢のようだ。


 病院に足を踏み入れると、独特の消毒液の匂いが鼻を突く。


「ツカサさん! 急ぎの伝票が溜まってますよ!」


「先生がサンプル室でお呼びです!」  


 怒涛のように押し寄せる業務の波。多忙な医師たちの機嫌を伺い、複雑な事務処理をこなし、時には理不尽な要求にも笑顔で応える。僕はペンを握り直し、モニターに向かった。

 そして待ちに待った金曜日の夜。 今週の激務は、僕の神経をいつも以上にささくれ立たせていた。 人混みに揺られる電車は、今の気分じゃない。僕は一度帰宅して着替えると、愛車『ジャガー F-TYPE』のエンジンに火を入れた。腹に響く重低音が、イライラを心地よい高揚感へと塗り替えていく。


「どこら辺にいる? 今日は迎えに行くよ」


 サトミに電話を入れ、合流地点を品川に決めた。車内にはお気に入りのTFMが流れ、交通情報を告げている。

 品川のコインパーキングに車を停めて駅へ向かうと、「おーい、ツカサ!」と弾んだ声がした。


「いつも電車なのに珍しいね」


  「今日はあんまり人と接触したくなくてね……あと、二人きりになれるし」


 僕の言葉に、サトミが少し照れたように笑う。

 駐車場に辿り着き、低い車体に驚くサトミのために助手席のドアを開ける。


「ありがとう。……なんか、視界が低くてドキドキするね」


「慣れるとこれが心地いいんだよ。勝島から高速に乗るからね」


 首都高を走り抜ける車内、TFMから流れる音楽が二人を包む。


「ツカサってTFM聴くんだ。私はJ-WAVE派かな」


「たまに聴くよ。でも、道路状況を知るにはこれが一番なんだ」


 そんな他愛もない会話を交わしているうちに、横浜の街が見えてきた。


「わあ、見えてきた! あの帆の形のホテル……」  


  サトミが窓の外を指さす。


「今日はあそこに泊まるけど……サトミも、泊まっていくかい?」


「えっ……いいの?」


「もちろんだよ。そのために連れてきたんだから」


 ディーラー街を抜け、突き当たりを右折。そこから左へ入れば、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルの正面玄関だ。 車を寄せると、手慣れた様子でドアマンが近づいてくる。


「ツカサ、駐車場はあっちじゃないの?」


「あー、ここは、このままで大丈夫なんだよ」


 僕はドアマンに車の鍵を託し、トランクから荷物を取り出す。


「ツ、ツカサ様!」


 そこへ、一人のスタッフが勢いよく駆け寄ってきた。旧知の仲である西崎さんだ。


「西崎さん、こんばんは。こちら、僕の彼女のサトミです」


「はじめまして、西崎と申します。ツカサ様、いつもありがとうございます」


 僕は用意していた土産を彼女に渡し、さらに車を移動させようとしたドアマンを呼び止めた。


「あ、待って。これ、皆さんで食べて」


 ドアマンにも心付けの土産を手渡すと、彼は嬉しそうに、より一層深々と頭を下げた。


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