第2話:赤坂エクセルホテル東急②
「さぁ、次は北海道を攻略しに行こうか」
ビールで喉を潤した僕たちは、いよいよ戦場へと視線を向けた。
喉を潤した僕たちが最初に向かったのは、色とりどりの野菜が並ぶサラダコーナーだった。
「ねぇ、ツカサ君。これ、珍しくない?」
彼女がトングで指し示したのは、鮮やかな赤色の茎が目を引く一皿だった。
「ルバーブのサラダ……?ルバーブって、ジャムにするやつだろ?」
病院の食堂で出てくる、しなびたキャベツの千切りとは訳が違う。彼女はプロの目線でその断面をじっと見つめ、嬉しそうに頷いた。
「北海道産だね。ルバーブを生のままサラダに仕立てるなんて、ここのシェフ、かなり攻めてると思うな。この酸味とシャキシャキ感、きっと今のビールにすごい合うはずだよ」
彼女の皿には、ルバーブの赤と、北海道の大地が育んだ濃い緑のリーフが美しく盛り付けられていく。
「へぇ、さすがだな」
僕は感心しながら、彼女の真似をして自分の皿にもその「赤い茎」を添えた。
大手食品メーカーの彼女と、病院事務の僕。住む世界は違っても、この「軍艦パジャマ」の中で未知の味に出会う瞬間、僕たちは同じ一人の「週末の解放者」に戻れる気がした。
彼女ーーサトミがルバーブの洗練された酸味について語る傍らで、僕の視線は別の場所に釘付けになっていた。
ーーザンギ。
北海道フェアのコーナーで、山盛りに積まれたそれは、茶褐色の衣から「ビールに合わないわけがないだろう」と不敵な挑発を繰り返している。
「やっぱり、これなんだよな」
僕はトングを手に取ると、大ぶりでジューシーそうな塊を自分の皿へ拉致した。
「ルバーブの次にそれ?ギャップが凄すぎない?」
サトミは呆れたように笑う。
「いいんだよ。一週間、病院の白い壁と数字に囲まれてたんだ。今の僕に体は、この醤油とニンニクのガツンとした刺激を求めてるんだから」
席に戻り、揚げたてのザンギを一口。
バリッ、という快音と共に肉汁が口の中で暴力的に暴れ出す。濃いめの味付けが喉に残っていたビールの苦味と完璧に握手した。
「……っ、これだ。これが僕の、金曜日の正解だ」
「幸せそうだね、ツカサ君」
ルバーブで「食品メーカー勤務」らしい意識の高さを覗かせていたサトミも、僕の食べっぷりを見て「一つもらおうかな」と僕の皿に箸を伸ばしてきた。




