第11話:みんな大好き!ヨコハマグランド③
「あ、失礼いたします。ツカサ様、特典はポイントとドリンクチケット、どちらにいたしましょう?」
戻ってきたスタッフの問いに、僕は迷わず答える。
「ポイントで」
「承知いたしました。ただいまカードキーをお持ちしますね」
「ああ、それと……僕にジンフィズを作って持ってきてもらえないかな」
「かしこまりました。お席までお持ちいたしますので、少々お待ちくださいませ」
スタッフが下がると、僕も席を立った。
「さて、僕も何か取ってこようかな」
ピザ窯から漂う香ばしい匂いに誘われ、二種類のピザと、彩り豊かなバーニャカウダを皿に盛る。
「ツカサ! このピザ、本当に美味しいよ!」
サトミが頬を膨らませて喜んでいる。その無邪気な様子を見ていると、今週のイライラなんてどこかへ消えてしまった。
「気に入ってくれて良かったよ。ここはこれが名物だからね」
そこへ、カードキーと、透き通ったジンフィズが運ばれてきた。
「ツカサ様、カードキーでございます。……よろしければ、温かいお料理も二人分ご用意しましょうか?」
「うん、お願いするよ」
細かな気遣いを受けながら、僕はジンフィズを一口啜った。レモンの酸味とジンの香りが、火照った神経を心地よく鎮めていく。
「たまには車で来るのも、良かったね」
サトミがビールのグラスを片手に、にっこりと微笑んだ。
「そうだね」
「でも……あんなにすごいの(ジャガー)に乗ってるなんて思わなかった。びっくりしちゃった」
少しいたずらっぽく笑うサトミ。 都心の喧騒をジャガーで駆け抜け、たどり着いた横浜の夜。 窓の外では、コスモクロックの光が万華鏡のように回り始め、二人の時間を鮮やかに彩っていた。
温かい料理と適度なアルコールが、二人の心を心地よく解きほぐしていく。
ラウンジを後にした僕たちは、用意された部屋へと向かった。 カードキーをかざし、ドアを開ける。
「わあ……すごい景色!こんなところに泊まれる日が来るなんて、夢みたい」
窓の外に広がる、宝石を散りばめたような街の灯りにサトミが歓声を上げる。
(やっぱり、ベイビューじゃなくて正解だったな)
彼女の弾んだ声を聞きながら、僕は心の中で思った。
「ねえ、ツカサ! あの観覧車に乗りたい!」
サトミが顔をぐいっと近づけて、期待に満ちた瞳で僕を見つめる。
「……しょうがないな。平日だし、そんなに混んでいないだろう」
僕たちは部屋を飛び出し、エスカレーターを下りてロビーを抜けた。
「ツカサ様、いってらっしゃいませ」
ドアマンの爽やかな見送りに背中を押され、目と鼻の先にある『コスモワールド』へと足を踏み入れる。




