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ホテルの使い方〜観光はそこそこにホテルでまったり過ごしたい〜  作者: 一年目の平凡な中小企業の社長


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第10話:みんな大好き!ヨコハマグランド②

「今日は混んでいるかい?」


「お陰様で。ですが、ツカサ様には最高のお部屋をご用意しております」


 西崎さんが誇らしげに微笑む。


「ツカサ様、いつもはベイビューのクラブフロアをご利用ですが、本日はシティービューでお間違いないでしょうか?」


「ああ、構わないよ。あっちの方が、夜景が綺麗で女性には喜ばれるだろう?」


 さらりと答える僕の横で、サトミが小さく感嘆の声を漏らした。

 僕たちはエスカレーターを上がり、一般のフロントを通り過ぎる。バーの横を抜け、突き当たりを左へ。  辿り着いたのは、選ばれたゲストだけが許される静謐な空間――クラブフロアだ。


「ツカサ様、おかえりなさいませ」  


 出迎えるスタッフたちの笑顔に、僕は三度目のお土産を差し出した。


「はい、これ。いつもありがとう」


 港の夜風を感じる横浜の夜。  特別な週末が、今、滑らかに加速を始めた。


「もうアフタヌーンティーの時間は終わっちゃったから、今はカクテルタイムだね」


 チェックインの手続きを待ちながら、僕はサトミにそう告げた。


「ツカサ、見て! ここからも観覧車が目の前に見える。……本当に綺麗」


 窓の外、刻一刻と色を変えるみなとみらいの景色に、サトミが子供のように瞳を輝かせる。


「ツカサ様、大変お待たせいたしました」  


 クラブスタッフが申し訳なさそうに、けれど丁寧な所作で僕たちの前に戻ってきた。


「本日はお二人で、クラブフロア・シティビューツインルームのご用意で、お間違いございませんでしょうか」


「うん、それでいいよ」


「恐縮ながら、本日は大変混み合っておりまして、お部屋のアップグレードができかねる状況でございます。代わりと言ってはなんですが、ポイントを付与させていただきました」


「ああ、全然大丈夫。気にしてないよ」


 僕はさらりと受け流すと、隣でお腹を空かせていそうなサトミを気遣ってスタッフに尋ねた。


「先に彼女だけ、飲み物と食べ物を取らせてもいいかな?」


「もちろんでございます、どうぞ。すぐにご案内いたします」


 スタッフが席を立った隙に、僕はサトミに耳打ちする。


「サトミ、お腹空いてるだろ? 好きなものを取っておいで。……ああ、そういえば、ここは元々イタリアンレストランだった場所を改装してラウンジにしているんだ。だから、当時のピザ窯がそのまま残っていてね。焼きたてのピザは絶品だよ」


「ピザ窯があるラウンジなんて初めて……! 取ってくるね」


 促されるままに席を立ったサトミが、やがて戻ってきた。 皿の上には香ばしく焼き上がったピザ、そしてグラスには黄金色のビール。


「美味しそう……! ツカサ、ありがとう」


 幸せそうにピザを頬張るサトミの横顔を見ながら、僕はようやく一週間分の肩の力が抜けていくのを感じていた。 ジャガーを走らせ、海を越えてやってきた甲斐があったというものだ。

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