青の風鈴
チリン、とまた鳴り響く、涼しげな音。
初夏の昼下がり。
小さな通りを歩いていた私は、胸の奥がかすかに揺れて、すぐさま周りを見た。
けれど、辺りに風鈴の飾られた家はない。
間違いなく、私の頭の中で鳴った、幻の風鈴の音だ。
聞こえるはずのない音が、まるですぐ近くで鳴ったみたいに。
探すところがなくなって、何となく空を見上げてみる。
つい先日まで梅雨だったとは到底思えないほど瑞々しい、雲ひとつない快晴の空。
その澄んだ青色の背景に、少しずつ、うっすらと浮かび上がってくる。
白のワンピースの少女の姿――――
その横には、優しい風と、陽の光を受けてきらりと揺れる、青い風鈴の影が重なる。
あの子は風鈴が好きだった。
夏が来るたび、縁側の天井に飾って、飾って、と背伸びをしながらせがんできたものだ。
君が風鈴を鳴らしていたのか。
そうか。もう、高い天井にも手が届く時分だもんな。
自然と涙が浮かび上がってくる。
風鈴だけが音を立てるような、そよ風の吹く、静かな午後だった。




