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#3 格闘

 アストラガリの椅子に座った私は、こう叫ぶ。


「アストラガリ、始動!」


 すると、腹の扉が閉じられ、あの無機質な声が響き渡る。


『システム起動、完了。生体認証、照合完了。アストラガリ、始動します』

「王都トレドニアに向かう。一旦、ダンジョンを出るよ」


 ズシン、ズシンと足音を立てて歩く。出口にたどり着くと、王都の中央部から煙が上がっている様子が見えた。

 が、同時に赤い炎の玉が多数、飛び交っているのも見える。あれは魔導弾だ。王都だから、上級の魔導師である貴族が多数暮らしている。その貴族たちがさまざまな魔道具を持ち出して応戦しているようだ。

 だが、あの大黒竜がひるむ気配が見えない。

 このままでは、本当に王都が滅んでしまう。


「アストラガリ、あの王都の中央、煙が上がっている方向に行ける?」

『承知しました。飛行モードへ移行します』


 すぐにでも、あの場に向かいたいと思った。桃やリンゴを売ってくれたあの行商人は、無事だろうか。魔道具店も被害にあってはいないだろうか。様々な思いが去来する。

 が、そんな思いを吹き飛ばすほどのとんでもないことを、このアストラガリはしでかした。

 なんと、あの大黒竜のように、空に舞ったのだ。強烈な加速で、私は椅子に押し付けられる。

 しかしこのアストラガリ、どうして飛べるんだ? いや、今はそんなことはどうでもいい。

 あの黒い竜をやっつけないと、この王都が大変なことになる。私は、一目散にアストラガリをその竜の元へと向かわせた。


◇◇◇


「王宮には絶対に近づけるな! 魔導師団、斉射!」


 魔導師たちが集まり、魔道具を使い応戦する。が、赤い魔導弾はその黒い鱗に包まれた巨大竜を貫くどころか、まるで効果がない。

 大型の魔導砲も放たれ、大黒竜の脚を捉える。が、これもまた効果がない。まったく無傷だ。


「くそっ、なんてやつだ!」


 陣頭指揮を執るのは、第一王子のアントニオ・デ・アロス・カスティージャだ。


「ダメだねぇ、兄さんの魔導師団では、歯が立たないと見えるよ」

「なんだ、ニコラス。お前なら、あれを倒せるというのか?」


 そこに現れたのは、第三王子のニコラス・デ・カスティージャだ。自慢げに語るその言葉通り、多数の魔導砲をずらりと並べている。


「戦いは火力だよ、兄さん」


 そういうとその第三王子は、腕を振り下ろす。魔導砲が、一斉に火を噴いた。

 大黒竜の胴体目掛けて、それは放たれた。周囲の露店ごと吹き飛ばしながらも、大黒竜を炎で包む。


「あれだけの魔導砲による一斉砲撃だ、さすがに殺ったか!?」


 第三王子が笑みを浮かべつつ、そう叫ぶ。が、喜んだのもつかの間、炎が徐々に消えて、中から真っ黒なあの巨体がほぼ無傷の状態で姿を現す。


「うそ……だろ?」


 最大火力の魔導砲ですらも受け付けない。それを見かねた第一王子のアントニオが叫ぶ。


「こうなったら、共同戦線だ。王都がなくなれば、王位継承どころではないぞ」

「そうしたいのはやまやまですが、もう一人の王子、エゼキエル兄さんは今、何をしているんです?」

「知らん。が、今やれるだけのことをやるんだ」


 そんな二人の王子が、一時休戦と言わんばかりに共同であの化け物に当たろうとしていた。

 が、その時、もう一人の王子、第二王子であるエゼキエル・デ・カスティージャが駆けつける。


「撃って撃って、撃ちまくれ!」


 二人の王子が陣頭指揮する中、第二王子はこう叫ぶ。


「そんな魔導弾が効くものか。相手は、国を滅ぼしたという伝説の魔物だぞ」

「説教している暇があるのなら、エゼキエル兄さんが何とかしてくれよ」

「分かってる。何とかしてやろう」


 そしてその第二王子は一人、魔道具の一つである長槍をもってその化け物の前に立ちはだかる。


「おい、兄さん、一人で挑もうなんて、いくら何でも無謀すぎだぞ!」

「いくら王族で最高位の魔導師とはいえ、一人でどうにかできる相手ではないぞ、エゼキエル!」


 それを聞いた第二王子は、兄と弟にこう答える。


「一級の魔導師である我ら王族自らが戦わずして、何が無謀なものか!」


 そう告げると一人、大黒竜の脚元を狙ってその長槍を突く。


「はあああぁっ!」


 金色の光を放ちながら、大黒竜の脚を切り落とした。


「なんと!」

「やったのか!?」


 もっとも、脚を切り落としただけで倒せる相手ではない。口からは、猛烈な炎を吐き出して反撃してきた。


「うわっ!」


 それは第三王子のいる場所へ着弾する。自慢の魔導砲が、次々と焼かれていく。


「ああ……魔導砲が……」

「そんな遠隔兵器ばかりに頼っていては、この災害級の魔物を倒すことなどできない。接近戦あるのみだ」


 そういいながら、エゼキエルは魔物の首を狙って黄金の光を放つ長槍を突き立てる。が、硬い鱗を貫くことができない。


「……なんてやつだ。さすがに、この鱗は硬いな」


 炎ともう一方の脚で攻撃してくる大黒竜をかわし、一時下がる第二王子。


「くそっ、こうなったら」


 第三王子のニコラスが、手に持っていた銃を向ける。


「……我が魔力を操る聖霊よ、我に最大の力を与え、彼の者に死を与え給え」


 詠唱を終えると、猛烈な金色の玉が放たれる。それは大黒竜の首を捉え、大爆発を起こした。

 が、まるで効かない。


「おいおい、会心の一撃が跳ね返されるなんて……これじゃ、打つ手なしじゃないか」


 それを見た第一王子が、そう呟く。


「それでも、戦うしかない! さもなければ、我々は死、あるのみだ!」


 エゼキエルがそう叫び、再び槍で挑む。それを見たアントニオも、腰に挿した剣を抜いてこう叫ぶ。


「我が魔力のすべてをこの剣にそそぎ、あの首を斬り落としてやる!」


 そう言いながら、第一、第二王子の剣と槍が同時に首を捉える。さらに第三王子の魔導銃の金色の弾が、同時にその魔物の首に命中した。


 中央広場にあるあらゆるものが、吹き飛ばされるほどの威力だ。露店に並んでいたあらゆる品は、まるでタンポポの綿毛のように空に舞い上がっていく。が、これほどの攻撃を受けても、大黒竜はびくともしない。


「はぁ、はぁ……なんてやつだ。まるで効かない。これじゃもう、この国はおしまいじゃないか」


 そうアントニオが言った、その時だ。

 もう一体の金色に輝く「化け物」が、空から舞い降りてきた。


「な、なんだ!?」


 ニコラスが叫ぶが、それは人型をした黄金色の巨人像。そんなものが急に空から降りてきたのだ。それはちょうど、大黒竜と王子たちの間に降り立つ。


「あれはなんだ、大黒竜の仲間か!?」

「さ、さあ。そんな伝承、聞いたことがないし」


 そんな王子らの言葉などよそに、大黒竜はふわっと浮かび上がり、残った片足でその巨人、アストラガリに蹴りかかる。

 ズシーンという音と共に、地揺れが起きる。が、黄金色に輝く人型のそれは、まったく微動だにしない。そんな大黒竜の攻撃を受け止めつつ、腰から何やら筒のようなものを取り出した。

 何が始まるのかと、三人の王子は見守る。するとそのアストラガリは聖剣ティソーナの青い光の剣を伸ばし、それを使って蹴りかかってきたもう一本の脚を切り落とした。


「ぐあああぁっ!」


 化け物同士が、この王都のど真ん中の広場で戦っている。いや、どうみても一方的にあの巨人が上回っている。そしてその巨人の手に握られたものが魔道具であると、彼らは直感する。

 両足を切り落とされた大黒竜は、たまらず空に舞い上がる。そして両羽根を羽ばたかせて、王都の広場の上空に舞い上がる。今度はまたあの赤い炎を吐き出した。


「しまった!」


 それは、三人の王子に向けて吐き出された。このままでは、三人まとめてやられてしまう。が、その前にアストラガリが立ちはだかる。

 炎を、まともに受け止める。が、その大黒竜の吐き出す炎は、アストラガリあいてではまるで効果がない。黄金色の巨人は、聖剣の青い光を引っ込めて、今度は背中にぶら下げている魔導銃のようなものを取り出す。

 その先を、舞い上がった大黒竜へと向けた。

 まさに、その大黒竜が三度目の炎を吐き出そうとしたその時、巨人の持つ魔導銃が青い光を放つ。

 一瞬、ものすごい音と光、そして強烈な爆風が吹き荒れる。放たれた青白い光の弾は、大黒竜の硬い鱗で守られたその身体を貫く。身体に大穴を開けられた大黒竜は、そのまま広場の片隅に落ちる。

 何が起きたのか理解が追い付かないまま、王子たちはただ、その黄金色の巨人を見上げる。

 するとその巨人は王子の前でしゃがみこみ、腹のあたりが開いた。中には、およそ貴族とは思えないほどのみすぼらしい姿の女が乗っていた。

 その女は、降りてくるや否や、こう叫んだ。


「大黒竜はやっつけました! これ、高値(たかね)で買い取ってください!」

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