#11 謎
結局、主犯は分からずじまいだった。
幸いにも、一口あの毒ワインを飲んでしまった貴族の方は、その場で衛兵らによって大量の水を飲まされてから吐かされて毒を抜かれた結果、どうにか一命をとりとめたという。
王族や貴族の中に犯人がいると考えるのが自然だが、それならばどうして皆に同じワインを配ったのか? あの場にいた者ならば、その雄黄入りの毒ワインを口にせざるを得ないからだ。自らが仕込んだ毒を、自らも飲む羽目になる。そんな馬鹿げた罠を仕掛けるなど、到底考えられない。
その後、別のワインが用意されて、美味しい料理と共に私はそれを堪能した。甘い果実と熟成に用いられた樽のほのかな木材、そして深みのある酸味が織りなす絶妙なバランスの香りを、私はその鼻で堪能した。
そんな社交界で、私は陛下によく話しかけられた。そして、先を争うように王子らにも話しかけられる。
ともかく、だ。社交界というところはとても疲れる。貧民がいきなり国王主催の社交の場など、行くものではない。美味しい食事とワインに巡り合えたのはよかったけれど、エゼキエル様の援護なしに王族や貴族の前にさらされるのは、やはり頭と体力を使う。
にしても、やはり後味が悪い。
「どうした、浮かない顔だな」
そんな私のところに、まるで昨日のことなど何事もなかったかのような顔でエゼキエル様が現れる。
「そりゃあ、浮かない顔になりますよ」
「なぜだ?」
「だって、下手をすれば国王陛下のみならず、あの場の王族、貴族が皆、死んでいたかもしれない未遂事件の後ですよ。それも、初めての社交界で起きたことですし」
「だが、良かったではないか、おかげでお前も名を上げた」
「だからですよ、つい先月まで、私はただの貧民だったんですから。注目されることに、慣れていないんです」
「それにしては、よくあれだけの知識を持っていたものだな」
「ま、まあ、かつては鍛冶屋の娘でしたから。その時に、父にいろいろと教わったんです」
そう、私にも貧民ではない時代があった。父はそれなりに腕の立つ職人として知られており、忙しくはあったが、そこそこの暮らしをしていた。
「ではなぜ、今は両親と暮らしていないのだ?」
「二年ほど前に、流行り病で亡くなりました」
「そうか……すまなかったな、嫌なことを聞いて」
「いえ、構いません。それからは生きることに必死で、悲しんでる暇なんてありませんでしたから。それにしても……」
「なんだ」
「いえ、エゼキエル様らしくないなぁと思いまして」
「どこがだ」
「私、エゼキエル様に謝られたの、珍しくないですか?」
両親が亡くなったことに気を使ったことに、私は違和感を感じた。いつもならもっと高圧的なエゼキエル様、私が戦場を知って胃の中を空にした時に背中をさすってくれたけど、これが現実だとばかりに私に押し付けてきた。
その時と比べると、エゼキエル様が随分と優しく見える。いや、優しさは時折垣間見えていたのだが、態度だけでなく、言葉まで柔らかくなった気がする。
なぜだろう? 実は昨日のワインに口をつけていて、おかしくなったとか。
が、そういうわけではなく、その理由らしきことを、エゼキエル様はこう語る。
「俺も、母上を亡くしているからな」
「えっ、そうだったのですか? でも、王妃様は健全だと聞いてますが」
「俺だけ、アントニオ兄さんとニコラスとは母親が違うんだ」
衝撃的な事実を聞いた。そうだったのか、だからあの二人とはどこか違って見えていたのか。
「正確に言えば、母上は側室だった。とある子爵家の令嬢ではあったのだが、正妻ではなく側室として迎えられた。そんな母上も、俺が幼いころになくなってしまった」
ああ、そんなことがあったのか。ヘテロクロミアのこともあるが、一人だけ違う育てられ方になったのは、そういう事情もあったのかもしれない。
「そんなことより、ルピタ、今日は三号ダンジョンへ向かうぞ」
と、しおらしい雰囲気が一変し、いきなり現実に引き戻される。
「えっ、三号ダンジョンですか?」
「そうだ。あそこはまだ攻略が終わっていないダンジョンだ。発掘人や騎士、魔導師たちが、攻略に苦戦していると聞く。ということで、アストラガリで直接攻め込むぞ」
ああ、そういうことか。今回は移動手段だけでなく、アストラガリ自身も使うのか。隠し部屋探しではなく、ガチのダンジョン攻略をする羽目になるとは思わなかった。
「なんでも、第四階層から先が進めないらしい。強力な魔物が多すぎて、そこで撤退せざるを得なくなると聞く」
「はぁ……」
「強い魔物が出る場所、そこに希少な魔道具が眠っていた。すでに一号、二号ダンジョンで経験済みだからな。となれば、おそらくその第四階層より先に何かある」
なるほど、エゼキエル様らしいことを考えておられる。二度続けて、そういう事象が確かにあった。ならば、三号ダンジョンの強敵が現れる場所にも、何かあるに違いないと思うのは当然だろう。
なんだか、もやもやしたものがいくつか残っているような気がするが、ともかく私は、エゼキエル様と共に三号ダンジョンへと向かう。
場所は、意外にもついこの間向かったアズール平原の方角で、シエナ峠の少し手前にあるとのことだ。
さらにその帰りには、近くの辺境都市であるシウダッドにも寄るという。
あの街は、空から見ただけで中がどうなっているかを知らない。私としても、非常に気になる場所だ。ぜひ行ってみたいと思っていたところに、思わぬ機会が舞い込んだ。
「それじゃあアストラガリ、上昇し、シエナ峠方面へ向かえ」
『アストラガリ、上昇を開始し、シエナ峠方向へ向かいます』
あ、しまった、そういえばアストラガリは手動で操作しないと、とんでもない速度で……時、すでに遅かった。
猛烈な速度で王都の空をあっという間に通り抜け、それからほんのわずかなうちにシウダッドの街を通り過ぎ、その辺りで急減速する。
「あたたた……」
いくら革のベルトをつけたからと言って、とんでもない負荷が身体にかかる。早く着いたのはいいが、もうちょっと何とかならないのか、これ。
「やはり便利ではあるな。これほど早く、三号ダンジョンへ着くとは」
あれだけの加減速を食らっても、この王子はへっちゃらなのか。どういう身体をしているんだろう。いや、確かに他の王子以上に剣術や体術で鍛えられたと聞くからな。私とは違い過ぎる。
で、アストラガリをしゃがませて、腹の扉を開く。すると、エゼキエル様は私を抱えてそのまま降りる。
「あ、あの、一人で降りれますから」
「何を言う。先ほどのあの衝撃で、フラフラではないか。もう少し、身体を鍛えておくんだったな」
などといいながら、私を脇に抱えて地上に降り立った。私は、この王子のペットか何かか?
さすがに攻略中のダンジョンということもあり、人が大勢いる。そんな中を私は抱えられたまま、入口へと向かわされる。
「第二王子のエゼキエルだ。すまないが、この先をあの巨人像と共に通る。構わないな」
「え、エゼキエル様でございますか!?」
「この紋章が、その証拠だ」
「確かに、カスティージャ国王家の紋章。どうぞ、お入りください」
「承知した。では、通らせてもらう」
ここには発掘人に、一攫千金を狙う発掘人の防護を請け負う冒険者、そして騎士や下級の魔導師などがたくさん集まり、テントを立てて何日もその場にて暮らしつつ魔道具発掘にいそしむ。
そんな中を、あのどでかいアストラガリで通り抜けようというのだ。
「ではアストラガリを進めます」
「構わん、やってくれ」
エゼキエル様のこの雑な号令のもと、私はアストラガリを前進させる。周囲の発掘人や冒険者、騎士らが唖然とした顔でこちらを見上げているのが見える。そんな中を、私はこの動く巨人像をダンジョンの入り口へと進める。
しかし、どのダンジョンもアストラガリの身長でも余裕で入れるほどの高さがある。こう言っては何だが、まるでアストラガリが通過するために作られたかのような、そんな洞窟だ。
ダンジョンには謎が多い。そもそも、どうしてこんなところに魔道具が大量に残されているのか? どうしてその魔道具を作る技が今に伝わらず、ダンジョンの存在が発見されるまで忘れ去られていたのか? 考えれば考えるほど、不思議なことだらけだ。
しばらく進むが、途中には中にいるダンジョン攻略を行う人々とすれ違う。その度に、我々は魔物と間違われて対峙されるが、その度に腹の扉を開けて、人が操るものであり、第二王子が乗っていることを伝える。もっとも、下級魔導師の魔導弾を食らったところでびくともしないから、そのまま通り過ぎてもいいんだが。魔物だと思われたままでは、魔道具探しに支障が出る。
そんな具合に中へと進む。途中の岩壁にはいくつか隠し部屋もあるんだろうけど、今回は無視だ。ただひたすら奥へ奥へと進み、ついに未踏の四階層目へと進む。
そういえば途中、スライムやらゴブリンが現れたが、面倒だからそのまま踏みつぶしてしまったな。一体だけ小ぶりなオーガがいたが、これも面倒だから右手で一撃、あっさりと頭をつぶされてその場に倒れる。
「雑な戦い方だな」
「仕方ないですよ。私、武術だのは学んでませんので」
もっともアストラガリが相手だと、小物の魔物はまるで相手にならないな。踏みつぶすか、殴ればいい。ここでいちいち聖剣ティソーナを出していたら、時間がもったいない。
その後ろから、ぞろぞろと発掘人や冒険者らがついてくる。未踏の地に入ると、そこらの部屋から魔道具が見つかり始める。群がる彼らは、それを先を争うように拾い集める。
が、我々にとってはそこらで簡単に手に入る魔道具など、眼中にはない。
むしろその先にいる強敵に、そしてその強敵が守る魔道具にしか、関心が向いていない。ゆえに、魔物を粉砕し、そこらの魔道具に一切に見向きもせず前進するアストラガリの後ろでは、発掘人や冒険者が群がってくる。
もったいないなぁ、あれだけの魔道具があれば、かなりの稼ぎになるのに。
と言いたいところだが、エゼキエル様が前進のみを指示してくる。発掘人でありながら、私は魔道具集めには参加できない。
もっとも、あのお屋敷に執事に三人の侍女、さらにアストラガリを持っているということでいただける毎月多額の給金があるから、わざわざ集める必要などない。それに、その給金の見返りとして、私が見つけた魔道具は王子のものになることが決まっている。
ただ、発掘人としての矜持が、魔道具を他人に渡してしまうことに忸怩たる思いをさせているだけだ。
「おい、目の前、なんか来るぞ」
さて、ようやく強敵が現れたようだ。私はアストラガリを止める。
重いうめき声に、湿った吐息音、そして地響きが響く。このダンジョンでは、未だかつてない魔物だとすぐにわかる。
そして、現れたのは、あの「災害級」とまで言われた大黒竜である。
「あばばばば……」
一度、これには出会ったことがある。が、あれは王都のど真ん中だ。こんな狭い場所で出てくるなんて、想定外だ。
「何を動揺している、かつてお前がやっつけた相手だろうが」
「いや、いくら何でもここ、狭すぎですよ! ど、どうやってあんな化け物を倒すんですか!」
などと言っている間に、大黒竜が突進してきた。ガツンと、胸の辺りにあの大黒竜の角が刺さる。
ここから見ると、その巨大竜の眼がぎょろりと壁いっぱいに映し出される。長い首を振り回し、アストラガリの破壊を試みているようだ。
が、さすがは最強魔道具のアストラガリだ、何ともないや。
しかしだ、打撃が効かないと分かると、今度はその口から火炎を吐き出した。
「うわっ!」
あまりの火炎に、思わず目を覆う。が、これも全然熱くない。随分と長いこと火炎を浴びせられたが、何ともないようだ。
もしかして、アストラガリって、強すぎ……?
「アストラガリ、聖剣ティソーナで、大黒竜の首を斬り落として!」
『了解、聖剣ティソーナを選択、アストラガリ、標的の首をロックオン、攻撃開始します』
一時、後ろに下がった大黒竜に向けて、ズシンズシンと走るアストラガリ。その青白い炎のような光の剣が、あっという間に大黒竜の首を斬り落とした。ズシンと、音を立ててその巨大な頭が落ちる。
首を失った身体は、ただの屍だ。ただ、このままでは通路を埋め尽くして動きづらい。私は羽根や脚、胴体をついでに切り刻み、鱗をはがし始めた。
「おい、なにをやってるんだ」
「いや、だってこれ、大変なお宝ですよ。肉だって使えるし、鱗は武具にもなります」
「今はそんなことをしている場合ではないだろう」
「いや、今外に出るのは危険ですし」
「どうして、それが分かる?」
「先ほどの大黒竜の吐き出した炎のおかげで、この辺りはめちゃくちゃ熱いんです。それが冷めるまでは、しばらく出られそうにありませんね」
温度センサーというやつがついていて、それがとても人が耐えられる温度ではないことを示している。どうしてそんなことが分かるのか、私にもさっぱり分からない。が、操縦法と共に植え付けられた知識の中に温度センサーのこともあったために、外の暑さが尋常なものではないことがわかる。
大黒竜が現れて逃げ出していた人々が、恐る恐る戻ってくる。周囲も冷え始め、ようやく人が立ち入れる気温になった。そこで私はエゼキエル様と共に、この第四階層の地面に降り立つ。
「さて、ルピタよ。いよいよここからが本業だな」
などと言うエゼキエル様にすこし苛立ちを覚えながらも、私は手に持っていた金づちを使って壁を叩く。早速、空洞らしき反応がある。
「ここに、何かありますね」
「そうか」
それを聞いたエゼキエル様は、岩壁を上級魔道具の剣でいつものようにたたっ斬る。
その奥から、隠し部屋が出てきた。
「な、なんだここは……」
「こんなところに、隠し部屋があるのかよ」
そういえば、二号ダンジョンまでは隠し部屋だけを探し出していたが、この三号ダンジョンでは初めて見る隠し部屋だ。その存在は、ここにいる発掘人も冒険者たちも知らないようだ。
ランタンを片手に中に入ると、大きな金色の魔道具が目についた。明らかにそれは、魔導砲だ。が、引き金がついており、どう見てもそれはアストラガリの手のサイズのものだ。
それ以外にも魔道具がたくさん見つかる。上級の魔道具も多い。が、特筆すべき者は見当たらない。これまでも見つかったものと同じものだ。
唯一、あの魔導砲だけが特異な存在だ。
「で、結局これ、なんなのでしょうね?」
「どうみてもアストラガリの武器だろう。ここで、試し撃ちしてみたらどうだ?」
ダンジョンの外に出る。背後では、大黒竜の大量の鱗や肉が運び出され、それをさっそく切り刻んで料理にしたり、燻製加工する者もいる。この荒涼とした場所では、貴重な食糧となる。
そんな発掘人や冒険者らをよそに、私はアストラガリに乗り込んで、その砲を握らせて撃たせようとする。
が、アストラガリが、妙なことを言い出す。
『魔力装填が必要です』
えっ、魔力装填? 今までだって、魔力で動いていたんじゃないの? 私は地上に降りて、その魔導砲を見る。
うーん、別に魔導銃であるルフィエと比べて、特に特殊な者はついてなさそうだけどなぁ……と思いきや、一か所、網のようなもので覆われた場所がある。
「おい、どうした」
「いえ、なんでも、魔力装填が必要だと言って撃たないんです」
「魔力装填? どこに装填するんだ」
「さぁ……ですが、ここにルフィエにはない奇妙なものがありまして」
と、金網に覆われた穴を指差す。
「たしかに、奇妙だな。なんだこれは?」
といいつつ、エゼキエル様がその穴に手を触れる。
すると、いきなり穴の奥が青く光り出した。と同時に、エゼキエル様の様子もおかしい。
「な、なんだこれは! ま、魔力が吸い取られていくぞ!」
えっ、エゼキエル様の魔力を吸い取る? 私は慌ててエゼキエル様の手を引っ張り、その穴から引きはがした。
「だ、大丈夫ですか、エゼキエル様!」
「いや、たいしたことはない。それよりもだ、ルピタ」
「はい」
「これでこの武器が、使えるんじゃないのか?」
ああ、そうか、エゼキエル様の魔力を吸い込んだんだ。もしかしたら、使えるかもしれない。そう思い、私はアストラガリに乗り込む。
そして、アストラガリに命じる。
「アストラガリ、あの魔導砲を、森に向けて放って」
『了解、ゴールデ・キャノン、装填確認。発射可能。攻撃始め』
あれ、ゴールデ・キャノンというんだ。などと思っている間に、とてつもない一撃が放たれた。
その青い光の弾は森に着弾し、大爆発を起こす。その衝撃は三十マイル以上離れたシウダッドにも届いたのではないかと思えるほどの、爆風と音をまき散らす。
当然、この三号ダンジョンの辺りにもその風と音は届いた。ドーンという音と共に、衝撃波がこの一帯を襲う。
運び込んだ鱗がその風で吹き飛ばされる。テントも二、三個ほど風で倒された。幸いなことにそばに大きな岩があって、その陰にいた者はほとんどその風を受けることなく無事だった。
が、とんでもない武器だ。
ゴールデ・キャノンの放った弾の着弾点には、数マイルほどの大きな丸い穴が森のど真ん中に空いてしまった。とてつもない破壊力だ。
「と、とんでもない破壊力、ですね……」
「そうだな。とんでもない魔道具だということは分かった」
やはり、魔物のいるところにとてつもない魔道具ありというのは、どうやら間違っていなかった。が、私はふと、さっき王子の手を引いた時に呼び起された記憶を思い出していた。
◇◇◇
そう、それは少し前に、二号ダンジョンを探っている時のこと。とある隠し部屋に入った時のことだ。王子と私が中に入ると、黄色い色の石が目についた。
「なんだ、これは? まさか新たな魔道具か?」
が、その石はまさに雄黄だった。慌てて私は、王子の手を引っ張る。
「おい、何をする!」
「エゼキエル様、その石、毒です!」
「は? ただの黄色い石だぞ。これのどこが毒だというのだ」
「その石に触れて、その触った手で口に触れしまうと、石の表面にあるヒ素毒が体内に入ってしまう場合があるんです。だから、触らないほうがいいですよ」
「さすがは発掘人だな。よく知っている」
◇◇◇
たまたま落ちていた、小さな雄黄の石に触れようとしたエゼキエル様の手を引いたことを、ついさっき、あの魔導砲からその手を引きはがした時に思い出した。
あの時は魔道具の探索に夢中だったから、この時まですっかり忘れていた。しかもあれが雄黄という名の石だということも、エゼキエル様に伝えていない。
そういえば、あのワイン毒の事件が起きたのは、まさにその直後のことだった。あれは、単なる偶然なのだろうか? いや、まさか王族であるエゼキエル様が、あの時の雄黄を使ったなんて、ありえないだろう。
雄黄自体は、別に珍しいものでもない。それが毒であることくらい、知っている者は多い。私だって鍛冶屋だった父から聞かされたくらいだし、鍛冶屋にとってはそれは常識でもある。
しかし、なんかちょっと引っかかるな。なんでだろう?