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20話:帰り

 流れているニュースを他人事のように思いながら、茶菓子と食べお茶を飲んでいると足音が聞こえた。


「霧島さん、なんです?」

「なんで見ないで分かるんですか……」

「そりゃあ気配で分かりますよ。あと足音とか」


 呆れたようなため息が聞こえて来るも、霧島さんは俺の対面のソファーに座った。


「今日は黒崎くんに話があります」

「弁償とか勘弁してくださいよ? 逃げますから」

「違うから。寧々さんの件です」


 違うのか。街を破壊した弁償とか言われたら、逃げていたところだ。

 霧島さんは話を続ける。


「寧々さんだけではなく、土岐宗景も、今回の計画を話してくれました。最も関係のある黒崎くんには、最優先でお伝えしようと思って来ました」


 俺は戦闘以外役に立っていないけどね。二人の処遇は気になるけど。


「それで、二人の今後は?」

「昨夜、総理や他の大臣たちを交え決まったことをお伝えします。御影寧々さんは、早々に降伏したということもあり、監視を付けるだけで終わりました。今後は対策室にて、その力を役立てていただくことになりました。どうやら封印なども行えるようなので」


 影を使えば封印もできるのだろう。


「そうか。宗景は?」

「首謀者であり、夜天衆の頭領ということもありすが、長きに渡り日本を守ってきたこともあり、政府所属として活動してもらう予定です。黒崎くんが説得してくれたお陰で、彼も人々のために助けになりたいと言っていました」


 霧島さんの言葉を聞いて、俺は少し肩の力を抜いた。


「そうか……まあ、宗景がそう言うなら、あいつなりに反省してるってことなんだろうな」


 実際、あれだけの力を持つ奴が敵に回るのと味方になるのとでは天と地の差だ。政府に所属するなら、少なくとも無駄な破壊活動をしなくなるだろう。


「寧々も宗景も、こっち側で何か役に立つことをしてくれるなら、まあいいさ。俺としては、面倒ごとが減るならそれが一番だ」


 そう言って茶を飲み干すと、霧島さんが小さく笑った。


「黒崎くんらしいですね」

「敵対しそうなら言ってくれよ? 徹底的に、二度と逆らえないようボコボコにしておくから」

「相変わらず物騒ですね……まあ、二人にも言ってありますよ。敵対したら黒崎くんが飛んでくると」

「反応は?」

「青褪めていましたよ」


 それなら大丈夫かな?

 まあ、俺の代わりに仕事をしてくれよ。


「それと黒崎くんには、寧々さんの監視を続けていただきます」

「はぁ? 学校あるんだが?」

「それはこちらで対応しておきます」

「わかった。話はこれだけ?」


 俺の言葉に霧島さんは頷き「何か聞きたいことは?」と聞いてきたので、尋ねてみる。


「ボーナスは? 俺、頑張ったと思うんすけど」

「給料に加えて、ボーナスもしっかり支給させていただきます。今回の功労者は黒崎くんですから。期待していてください」

「そりゃあ良かった。あれだけ残業したんだから、ボーナスが出なかったら暴れていたところですよ」


 ニコニコしながら答えると、霧島さんは青い顔をしていた。


「黒崎くんならやりそうだから怖いですよ……上の人たちも黒崎くんを懐柔する方向ですから」

「俺も政府を敵に回すのは面倒だからね」

「できないとは言わないんですね」


 そりゃあ、ねぇ?


「話も終わりましたし、今日の出勤が終われば帰って大丈夫ですよ」

「妹が早く帰ってこいと五月蠅いんだ」

「妹さんがいるって話してましたね」

「反抗期だからなのか、ツンツンしていてな……」


 すると後ろから声がかけられた。

 振り返ると、朝比奈と雷堂がいた。


「黒崎先輩に妹さんに会ってみたいです!」

「まあ、今度紹介するよ」

「黒崎も大変だな」

「雷堂、って怪我はもう大丈夫なのか?」


 雷堂は腕を回して「この通りな」と笑ってみせた。


「妹さんの年齢は?」

「14歳」

「ってことは、中学二年生か。うちの妹と同じだな」

「妹がいたのか」


 そこから俺と雷堂は話を続ける。するとどうやら同じ中学校に通っているとのことだった。


「この年齢だ。思春期なんだろう」

「だな」


 霧島さんは俺に「それじゃあ、寧々さんのことは任せたよ」と言って去っていった。

 その後、俺は朝比奈、雷堂と雑談を続けるのだった。



 家に帰り玄関の扉を開けると、妹の美羽が仁王立ちで立っていた。


「ただいま、美羽」

「遅い! どれだけ心配したと思ってるの⁉」

「悪い悪い。心配してくれてありがとうな」

「――ッ⁉ べ、別にお兄ちゃんのことなんて心配してないから!」


 そっぽを向いてしまう美羽だが、心配してくれたのは正直嬉しかった。

 父さんと母さんからは「テロに巻き込まれても心配していない」と言われているからね。

 息子だぞ。少しは心配しろって。


「美羽、父さんと母さんは?」

「帰って来てるよ。そろそろ晩御飯から早くしてよね」


 去っていく美羽。俺は二階にある自室へと向かい、荷物を片付ける。

 着替えて二階に降り、家族みんなで夕食を食べるのだった。


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