クリームソーダ熟成場の冬
残暑が過ぎ去って11月最終週。
皆さまどのようにお過ごしでしょうか?
リポーターの水戸光圀子です。
生まれたその日の時代劇で、光圀公が目からビームを放ったのが名前の由来……らしいですけど、それだったら『光圀ビーム子』ですよね、と良く言われます。新人です、よろしくお願いしま~す。
「「「「「ウェェェェェイッッッッッ!」」」」」
雪がちらつく中での体育会系特有の挨拶、ありがとうございます!
こちらの皆さまは西郷クリームソーダ造の皆さまです。酒造ではなくて、クリームソーダ造です。
「サイゴーッッッッッ!クリームソーダゾォゥウゥッッッッッ!ファイッッッッッ!」
「「「「「ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!……」」」」」
何と闘うつもりなのかわかりませんが、皆さま元気な掛け声ありがとうございます!
「ミツクニコちゃんッッッッッ!サイコォォォォォッッッッッ!」
「「「「「ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!」」」」」
何と闘うつもりなのかわかりませんが、貴様ら……目を見て話せ。
胸 に 目 は 無 い。
「ミツクニコちゃんサディスティックゥゥゥゥゥウゥッッッッッ!」
「「「「「ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!」」」」」
セ ク ハ ラ で 訴 え る ぞ。
死~ん。
では静かになったところで、こちらは西郷クリームソーダ造の社長の『西郷マッチョイズム雪の丞』さんです。本日はよろしくお願いします。
ちなみに西郷クリームソーダ造は、西郷隆盛さん、西郷四郎さんとは全く関係ありません。西郷マッチョイズム雪の丞さんも、隆盛さんや四郎さん、それと輝彦さんとは一切関係ありません。ご了承ください。
「死~ん」
おや、緊張していらっしゃるようですね。いつも通りに接してくれて結構ですよ。
「HEY、これからミーとレインボーブリッジでトゥギャザーしようぜッッッッッ!」
こ ろ す ぞ。
「死~ん」
おっと、社長さんは緊張で何も言えなくなってしまいましたね。
このままでは放送事故になってしまうので、番組を進めます。
私たちの後ろにある、この大きな建物。
この建物はクリームソーダの熟成場で、この中でクリームソーダ杜氏の皆さんが真心を込めてクリームソーダの熟成を行っているんです。
熟成はですね……なんとッッッッッ!人力で行われているんですよ~!
どうしても機械化できない作業なんだそうです。
ではさっそくお邪魔してみましょう。
大きなドアを……重いッッッッッ!
「嘘だろ……」
「あれ機械で動かすドアだぞ……」
「マジかよ。なんてパワーだ……」
「胸だけが彼女の魅力じゃねえんだな……」
先 に 言 え。
死~ん。
さて、気を取り直して。
すごい湯気。中はとても暑いです。
ええと、カンペ、カンペ。なになに……熟成場内部は常に45度に保たれているそうです。
温度差が大変ですね~
「バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!」
「「「「「バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!……」」」」」
何かの掛け声が聞こえます。まるでカルト……
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しばらくお待ちください
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スタジオから失礼します。
先ほどは大変失礼な発言がありました。
申し訳ありませんでした。
今後このような事が起こらないように、誠心誠意勤めさせていただきます。
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さて。
先々月、クリームソーダ農園で薩摩示現流の皆さんによって収穫されたクリームソーダは、中央のガラスケースに保管されているのがわかるでしょうか?
そして、それを取り囲むクリームソーダ杜氏の皆さん。
まるで邪神の召かn……
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しばらくお待ちください
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スタジオから失礼します。
先程は、大変失礼な発言がありました。
申し訳ありませんでした。
今後このような事が起こらないように、誠心誠意勤めさせていただきます。
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では気を取り直して、……皆さんはガラスケースの中のクリームソーダを囲んで、何をなさっていらっしゃるのでしょうか?
「はい。杜氏全員でスクワットをして室温を維持しています」
……スクワットですか?
「そうです。スクワットによって体内に熱気を生み出し、人肌から立ち上る湯気で室温を調整するのです」
……ええと。
「ハハハ。ここにいらっしゃった方はみんなミツクニコさんのような表情になりますね。私も駆け出しの頃には半信半疑でスクワットを行っていました」
どのような理屈でスクワットなのでしょうか?どう考えてもエアコンで室温調整した方がコストが安いと思うのですが?
「まずスクワットについてですが、天然モノのクリームソーダはですね、まだ現代の科学ではわかっていない部分が多いのです。判明しているのは、高い知性と自我を持っているのと、スクワットによる室温調整しか受け付けないのだけなのです」
高い……知性ですか。
「はい。彼らーーあえて彼らと呼ばせていただきます。彼らは微分積分くらいなら暗算できると、マスラオ体育大学の腕相撲研究会によって証明されております」
微分積分……わたし、数学苦手なんですよね。
「私もです。そんな彼らを熟成させて市場に流すのです。叶えられる望みならぜひ叶えてあげたい。その想いで私たち杜氏はボランティアで熟成を行っているのです」
ボランティアですか?
「正確にはニートですね。周囲から穀潰しと罵られる毎日です」
そ、そうですか。
「さて、今日はミツクニコさんがいらっしゃられた、と言う事で特別なクリームソーダを用意しました」
特別ですかッッッッッ!嬉しいッッッッッ!
「クリームソーダは生きています。当然個性もあります。ひとつひとつ味だって異なる。大器晩成のクリームソーダは熟成に30年以上かかる場合もあります」
大変なんですね。そんな事気にも留めず……わたし毎日がぶ飲みしてました。
「ありがとうございます。ミツクニコさんの血肉となったクリームソーダたちは、今の言葉だけで浮かばれたと思います」
わたし、もっとクリームソーダを大切に飲もうと思います。他の食品だって、クリームソーダの知性があったらと思うと。
「お優しいですね。話を戻しますが、大器晩成とは逆に、早熟のクリームソーダもあるのです。ガラスケースの中に、ひとつだけチェリーがあるのがわかりますか?」
流れ的に、あれが早熟のクリームソーダなんですね?
「そうです。チェリーの色をご覧ください。真っ赤でしょう?まるでハバネロみたいですよね。あれは味のピークの証です」
今がピークですか……
「もう時間がありません。100秒もすれば劣化が始まります。ミツクニコさん、急いでッッッッッ!」
で、で、ででは、特別なクリームソーダを、いいいいいただきます……
ゴクン。
「いかがですか?特別なクリームソーダは」
まz……
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しばらくお待ちください
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スタジオです……
先程は大変失礼な発言がありました。
申し訳ありませんでした。
…………今後このような事が起こらないように、
チッ。
誠心誠意勤めさせていただきます。
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先程の早熟クリームソーダ、たいへん美味しかったです。
「楽しんでいただけてクリームソーダも幸せだったと思います」
「「「「「バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!バルクッッッッッ!……」」」」」
すごいですね。みんな同時に揃ってスクワットしてますね。
「はい。ちょこ●ップで訓練しましたから。ところでミツクニコさん」
はい、何でしょう?
「ミツクニコさんもスクワットによる室温調整に参加していただけてませんか?」
ゲッ…………いえ、(棒読み)ぜひさんかしたいでーす。
「では、こちらの特製トレーニングスーツに着替えてください」
えっ?
「着替えてください」
これ、布面積……
「着替えてください」
いや、生放送中ですよ。
「着替えてください」
●
こちらスタジオでーす。
ミツクニコさん、空気読んでー。
●
な め て ん の か。
「着替えてください」
き さ ま ら。
「着替えてください」
目 を 見 て 話 せ。胸 に 目 は 無 い。
「着替えてください」
「「「「「ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!ファイッッッッッ!……」」」」」
ミツクニコッッッッッ!ビィィィィィムッッッッッ!
「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!」」」」」
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しばらくお待ちください
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はい、スタジオ戻りました。
残念ですがミツクニコさんはね、本日をもって番組を卒業と言う事でね。
お疲れ様でしたー。
では次のコーナーは……
ミツクニコビィィィィィムッッッッッ!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!」