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第6話 ダイエットを始めた


球技大会が終わり、家に帰るとさっそく晶子は今後のダイエットの為の作戦を立て始めた。

勉強時間確保の為に部活動、つまり運動ができないのならダイエットにすべきなのはやはり食事制限だ。

消費エネルギーのよる脂肪燃焼が期待できないのであればなるべく摂取カロリーを減らす生活を心がけねばならぬと思った。

これ以上脂肪を溜め込まず、なるべく一日の必須カロリーを越えない量のカロリーに抑える。


女性ならば一日に必要なカロリーは約千七百カロリーとされる。

それならば一日の摂取カロリーを必要なカロリーよりも低くして千二百カロリー以下にして摂取したカロリー一日分のエネルギーとして発散させたうえで体重を減らす。

まずは夕食から主食であるご飯を抜くことにした。


 その日の夕飯時、さっそく晶子は作戦を実行に移した。

食卓にはハンバーグ、味噌汁、サラダ、ご飯といったごく普通の食事メニューだったが晶子はご飯を食べないことにした。

「お母さん、ご飯炊飯器に戻していいから」

母親にそう言って茶碗を下げるように促す。

「晶子、ご飯食べないの?」


晶子の母親はごく普通の主婦だ。

パートには出ているものの家にいる時は家事を真面目にこなし、おっとりとしてあまり怒ることのないタイプだ。母は 特に料理には腕をかけていた。


父親は出張が多く、帰る時間も遅いので基本的に家では一人っ子の晶子は母親と二人でいることが多かった。

いつも育ちざかりの娘の為にと栄養バランスのいい食事メニューを心がけていた。

しかし晶子は今日からその一部を食べないことにする。

「おかずだけでいい。十分お腹いっぱいになるから。なるべくこれからは夕食も野菜とかカロリーの低いものにして」

晶子はダイエットのことは母親には言わなかった。


もしもダイエットをしていることを知られれば母のことだ「やめなさい」「育ち盛りなんだから」とそれらを否定されるかもしれない。それでは自分の作戦の邪魔になるからだ。


晶子は痩せて綺麗になり、学校でそれを認められねばならないと思っていた。

晶子はダイエットをしていることはなるべく周囲に知られないようにしていたかったからだ。

ダイエットをしています!と知られて必死で努力してる姿を見られるよりも自分一人でこっそりダイエットをすることで大したこともなく痩せた!という風に見られたかったからなのだ。

何より太っているから、痩せろと言われたからダイエットをしていると思われると自分のプライドが傷つく、そう思ったからだ。


主食を抜くというダイエットを始めて三日後体重計に乗ってみた。


体重は五十五.五㎏と電子画面には表示されていた。


高校に入学してすぐ行われた四月の健康診断での晶子の身体測定の結果は身長百五十七センチメートル、体重は五十六㎏だった。

身長は十五歳女子の平均だが体重はやや多めだった。

そこから今はこの数値ということで体重にあまり劇的な変化は見られなかった。


「やっぱりご飯抜いただけじゃダメかあ」

体重計に乗りながら劇的な変化のない数値を見てそうつぶやいた。

やはりもっと食事制限を徹底せねば!と思った晶子はおかずだけは食べていたが夕飯そのものをその日から抜くことにした。

「お母さん、今日から私夕ご飯いらないから。もう作らなくていいよ」

そう母に言った。

 母は一瞬「え?」という表情をした

「夕ご飯、ちゃんと食べなきゃ夜勉強できないんじゃないの?」

母は心配そうに言った。

「いい。もう部活してないし、昔みたいにそんなにお腹減らないから」

そう嘘をついた。

中学時代は部活動をしていたので激しい運動の後にはお腹が空いていていつも晶子は夕飯はしっかり食べていた。

母も部活でたくさん動いて成長期の晶子の為にと毎日いろんな料理を作っていて晶子はそられを残さず食べていた。


中学時代はスポーツをしていたので食べても太らなかったが今はもう部活をしていない、状況が違うのだ。

夕飯を食べなければ寝るまでに宿題や予習など勉強をする時間に空腹で苦しくなるがどうしても辛い時にはお茶や水などカロリーのない飲み物をたくさん飲んでごまかすことにした。

夜は飢えを我慢しながらの勉強だが「どうせ寝て明日になれば明日の分の食事が摂れる」と思えばまだ耐えることができた。


そんな生活を始めて一週間後、体重に変化が現れ始めた


体重計に乗ると一週間で一㎏の減量していた。


「やった!体重が減った!」

晶子は高校に入学して初めての減量に心が躍った。

ようやく体重がまともに数字で変化を表したためにスタート地点を出発できた、そんな気持ちだった。


しかし体重が一㎏減ったくらいでは特に見た目の変化はなく、生活が何かげきてきに変わることもなく、相変わらず晶子は学校では誰とも話せないままだった。


やはり変わるにはもっと痩せねばならない……なんとしても早く。

そのダイエットしたい気持ちは晶子を焦らせた。


その夜、リビングでテレビを見ているとバラエティ番組のダイエット特集がやっていた。

晶子はこれはダイエットの参考になるのでは、とその特集を真剣に視聴した。


「この女性、毎日食べまくっていたらこんなに太ってしまった!」

テレビのナレーションはギャグ調に女性がとても太ったなりゆきを説明する。 

出演者の女性は子供の頃から食べることが大好きで高校生になる頃には体重が八十八㎏にもなっていたのである。

「私よりもずっと太った人もいるんだなあ」

晶子はそう思いながら食い込むようにテレビ画面を見た。

自分も他人事ではない。どこかこの人達と同じように部活を辞めた途端に太ってきたのだと。


女性は高校生で好きな男子がいたので勇気を出して告白をしたという。

その男子は女性になら誰にでも優しいというタイプの色男だったが出演者の女性が告白すると冷たいまなざしで「お前のようなデブ、お断りだね。俺は痩せてる子が好みだから」と捨て台詞を吐いたというのだ。

その言葉は今の晶子にとっても先日の陰口と重なってテレビ越しに遠回しな言葉に聞こえた。

テレビを見続けるとその女性はその出来事でダイエットの心に火が着き「絶対痩せて綺麗になってやる!」とまるで復讐を誓うかのようにダイエットをすることになったという。

まさに今の晶子と同じ気持ちなのだろう。

食べることが大好きだった女性は食事を生キャベツなど野菜中心にし、ひたすら運動を続けてどうしても我慢できない時はその男性の台詞を思い出し心を鬼にして自分に厳しくするというスパルタぶりだった。

その努力のかいあって一年間で体重は四十八㎏にまで落ちたというのだ。

ダイエットをして一年で約四十㎏の減量に成功したとの結果だった。


「凄い……こんなに痩せるんだ!私も見習わなきゃ!」

晶子はその成功結果を見て目を輝かせた。自分にも希望が持てる、そう思ったのだ。

そして別の好きな男性を見つけて告白をすると結婚に至って今は子供もいるという。

ダイエットに成功して痩せた本人がテレビ出演してにこにことほほ笑んでいた。


「あの時のあの台詞のおかげで綺麗になれました!」とむしろ憎くて仕方がなかったはずの男性に感謝すらしているという。

その女性は横に膨らんだ醜い体型だった過去の写真と比べると今ははスリムで美しい体になっていた。

太っていた頃の服は今の本人にとってはぶかぶかだといわんばかりに過去の服を着せてみせた。


気づけば晶子はそのテレビ番組のダイエット特集コーナーをすっかり夢中になってみていた。その体験談を見て晶子は心がときめいた。


「私もこんな風になりたい」

自分もがんばればこんな風に変われるのでは。

モデル体型になれば周囲も自分を認めてくれて友達ができるに違いない!

今までデブと思われていた自分が劇的ダイエットに成功すれば自分を見てくれるかもしれない、そう思ったのだ。


「私も痩せて変わるんだ」


テレビ番組を見てますますそんな心に火が灯ったようにメラメラと闘志が燃え上がった。





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