第27話 初めてのお給料
「ふう」
晶子は週一日の登校日に教室の席に着くと、ぐったりと疲れ切っていた。
ここ数日、バイト先で辞めた人がいたためにその人が抜けた分を晶子がシフトにほぼ毎日入っていて今週は水曜日から土曜日まで連続で出ていた上に昨日は朝の開店時間から夜までずっとフルタイムで働いていたのである。
「どうしたの?清野さんお疲れ?」
いつものように話しかけてきたのは栗山圭である。
ぐったりとしている晶子の疲労感を見て心配になってきたのだ。
「最近バイトが忙しくて。ちょっと疲れちゃったかなーって」
この頃になると晶子はもはや学校でも男子だとか気にせずに誰とでも話ができるようになっていた。
アルバイトで男性とのやり取りは避けられない為かバイトで男性と多く接しているうちにもはや男性への恐怖は克服されようとしていた。
なので栗山圭と話すのにも緊張せず、普通にクラスメイトとして話すことができるようになっていた。
「清野さんは偉いなー。バイトだって高校生が働けるとこ少ないのにちゃんと探して、仕事してるし、学校にも行けてる。それって十分人として成功しているよ」
以前バイト探しをしていた時にバイトでなかなか採用されない、という話を圭にしていたので圭はバイトが決まった時に「よかったじゃん」と言ってくれた。
しかしバイトが決まったら決まったで今のように忙しい生活になってしまい、どっちにしろ晶子は大変な生活なのは今も変わらなかった。
「そうかな。この学校の人もみんなちゃんと仕事してるし、私なんて遅れてた方だけどな」
晶子は謙遜の意味も込めてそう言った。
「接客業のアルバイトがちゃんとできてるってすごいよ。俺にはとてもできない」
「そんなことないよ。栗山さんだってちゃんと家の手伝いしてるし、私なんてまだまだだよ。どっちかっていうと家業の手伝い毎日している栗山さんの方がすごいよ。私なんてただ投稿の日以外やることも家事以外ないし、お金もなかったからしてるだけで」
そう言った。
アルバイトを始めて一カ月が過ぎた。
今日は待ちに待った初めてのアルバイトの給料日だ。
先月からコツコツと働いて来た時間が今度は給与という形で目に見えるのだ。
晶子はドキドキしながらATMに行って残額を見ることにした。
通帳をATMに入れて残高を確認すると、晶子の口座には四万六千円もの金額が振り込まれていた。
今まで過食の為に長年積み上げてきたお年玉を日々使ってしまっていたので口座はどんどんマイナスになっていくことばかりだった晶子の口座は初めてのプラスという数値になる。
「こんなにもらえるんだ」
初めての自分で働いて稼いだお金というものに感動する。
晶子は過食によって貯金をかなり使い込んでしまったが、この一カ月のシフトに入った分だけでもかなり目に見える金額というものは嬉しかった。
そしてこの一カ月の間にバイトにまず採用されるまでも大変だった上に採用された後も仕事を覚えて働くことを想い返すとお金を稼ぐということはこんなにも大変なことだったのだ。
それを今までの自分は家族や親戚がくれた大切なお年玉をまるで湯水のように使っていたことに後悔する。
あれらのお年玉も両親や親戚が一生懸命働いて稼いだお金をお正月にお年玉としてわざわざ自分に与えてくれたのだ。
なんてありがたいことだったのだろうかと思った。
晶子が今まで食べ物に使っていたお金は結局食べた後はトイレに吐くために食べていたようなものである。
食べた物をトイレに吐く、なんてお金を水に流すことと同じなのではないかとここで気づいた。
食べ物は食べて美味しいという気持ちや空腹を満たすため、満足感を得る為の役目がある。
精神的には食べたことにより幸福感を感じたりもするだろう。
もしくは体に吸収されることにより自身の栄養分として体を助けるとかだ。
そして体を動かすためのエネルギーにする。食べ物こそが動力源なのだ。
その為に食べ物にはお金をかけて買い、食べることで役目が果たされる。
食べたものを吐くということはそれらのどの目的にも満たせない。
最初から食べ物をトイレに吐くつもりで食べていたということはお金をかけて買った食べ物を食べても消化吸収しない、栄養分にも満足感にもならない、エネルギーにもせずに食べたらすぐに吐き出してトイレに流す。
つまり過食嘔吐とはお金をトイレに流すことと同じ意味なのだ。
この給与というものを見て晶子はこれからまたもや過食にお金を使うということは必至で働いて得た金をトイレに流すということなのだと思った。
「いい加減食べ吐きの癖やめないとな……」
給与を見て晶子はそう思ったがなかなか一度癖になったことはやめられないのが現実だった。




