第13話 体重が増えるのは許せない
そうしているうちに季節は秋になっていた。
「またテストの点数下がった。勉強しなきゃ」と晶子はイライラしていた。
飢えを我慢しつつの勉強はやはり無理があるのか一学期よりも小テストの成績は下がり気味だった。
勉強をするならば脳にエネルギーを入れる為にも食べた方がいいとはわかっていても意固地になったプライドは一向に食べることを避けていた。
秋の夜長に晶子は勉強が終わったらまたもや空腹をかかえて水を飲みに台所へ行った。
誰もいない台所の明かりをつけるとあるものが目に入った。
テーブルの上には夕飯のおかずが残っていた。余りものにラップがしてあったのだ。
この日の夕飯はから揚げだった。それが六個ほど皿の上にのっていてラップがかけられていたのだ。
これも晶子の好物だが揚げ物は高カロリーだ。
食べたい、食べたい。お腹が空いてたまらない。
目の前にあるから揚げは一見美味しそうな幸福の物体ではあるがまるで悪魔の物体かにも見えた。
食べたい、だけど食べちゃダメ、と心の中では強く思っているはずなのに晶子は気づかずうちにラップを開けていた。
食べるつもりはない、匂いを嗅ぐだけ、見るだけとそう心は決めていてももはや体が言うことを聞かず気が付けば口を開けてからあげを一つ口に放り込んでいた。
久しぶりに食べる肉は醤油の味が染みていて、じゅんわりとした肉汁があふれ柔らかくその食感はまるで何かすごく美味しいものを食べているような気持ちになり、幸福感が脳を包み、食欲を刺激した。
晶子はもはや心の中の言うことを体がコントロールできず、まるで食欲に支配された家畜のように無我夢中でから揚げを食べ続けた。
そうして余っていたから揚げを六つすべて平らげてしまった。
晶子は我に返り、あわてて自室へとかけこんだ。
あれほど食べてはいけないと自負していたのに食べてしまう、意思の弱さに涙がこみあげてくる。
自室でしゃがみこむと「食べてしまった、ダメだ」と涙が出てきた。
食べてしまった罪悪感に悩まされ心が苦しくなり、もはや勉強が手に着かなかった。
今日食べてしまった分、脂肪になるかも、体重が増える、という恐怖が頭の中をかけめぐる。
脳内で「デブ」「ブタ」「痩せろ」といった今まで言われてきた台詞が頭をよぎる。
晶子の頭の中には一学期の球技大会の更衣室でのクラスメイトの発言がフラッシュバックのように頭に浮かぶ。
「太ってるよね」「デブだね」「痩せて」
それらの過去の発言は現在の今、まるでリアルタイムで言われているかのように晶子の心を支配した。
ダメなのに、食べてしまった。自分はなんて意思が弱いのだろうか?と自分を責めた
自分の意思の弱さに自分が嫌いになる。
晶子はもはや罪悪感から勉強が手に着かず、ふて寝するように布団にもぐりこんだ。
翌日の朝、体重を測ってみたら数値は昨日より多い「四十四㎏」になっていた。
一キロも増加していた。とてもショックだった。
「やっぱり昨日から揚げを食べたからだ。ダメなのに、私のせいだ」
その日一日罪悪感でもはや何も手に着かなかった。
せっかく痩せたのにまたリバウンドしてしまう、その落ち込みだけで心が支配されていた。
学校へ行っても体重が増加したことで頭がいっぱいで、もう人の話すら聞けない。
誰かと話をすれば体重が増えたことがばれるのではないかという恐怖感でなるべく誰とも話さないようにした。
体重が一キロも増加した太った体を見られたくないという恐怖感で人の前に出ることすらも恐ろしい。
授業の内容も全く頭に入らなかった。
常に頭の中は体重のことばかりで今朝体重が増えたことの罪悪感でいっぱいでもはや何も他のことが考えられなかった。
一日がまるでうわの空だった。
もはや、今の晶子は体重という数字に全てが支配されていた




