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第11話 もっと痩せなきゃ


ダイエットにさらに専念することになった晶子は昼食の内容も変わった。


夏休みが明けたが晶子のお昼のお弁当の中身は夏休みと同じく常に温野菜のみだった。

ブロッコリーやカリフラワーにニンジン等の野菜を茹でたものにノンオイルのドレッシングをかけたもの。

夏休み中の昼食に自分で作っていたものとほぼ同じメニューだ。

それが毎日の晶子の昼食だった。


以前の弁当は母親が作っていたが夏休み以降の弁当はこのメニューにするために自分で作ることになった。

朝昼晩と決して炭水化物は摂取しない。


「晶子のお弁当、少なくない?。それだけで足りるの?」

昼食を共にする友人は聞いた。

「私、小食だから。これだけでも満足なんだ」と嘘をつく


本当はこれだけでは足りない。野菜は非常に消化しやすく腹持ちが悪い。

朝から昼にかけてお腹が空くのに昼食がこれだけでは午後の授業はいつも空腹との戦いだった。


晶子は夏休み中、ダイエットは目標体重に達成したら終わりだと思っていた。

ダイエット番組のように必死で運動など厳しいカリキュラムをこなし、体重測定で目標体重に届く、もしくは大幅に体重が減っていればゴールインだと。


しかし現実は違う。

現実はテレビ番組のように結果発表、つまり収録中の部分が終わればゴールインではないのだ。

現実のダイエットとは目標体重に達成して大幅に痩せることができても、その後リバウンドしないように常に食事制限を続けて運動もして体重をキープし続けなければならない。


つまりテレビ番組でいえばダイエット企画で目標体重に達成して撮影が終わり、収録が済んだ後の生活が現実には続くのだ。


テレビ番組のように目標が達成したらゴールイン!ではなく現実では目標に達成した後も、つまりダイエットに成功したその後もリバウンドしないように常にダイエットをしなければならないということだ。


テレビ番組や雑誌のダイエット企画は「六十キロから五十キロの減量に成功しました!」と結果だけを伝えているが、現実は結果が出たその後の話も続くのである


テレビに出てくるアイドルや女優はみんな痩せ体型。

アニメや漫画に出てくる女性キャラもみんな痩せている。

ファッション誌のモデルはみんな痩せすぎというほど痩せている。

足や腕が細く、ウエストがくびれていて、全体的に細い、それが美しい女性に望まれている姿。

メディアが取り上げる女性は皆、痩せすぎなほどの細い体が標準といわんばかりに痩せている人ばかりだ。

この世界では痩せすぎなほどがメディアの作り上げた理想的な体型であり、メディアによる標準体型で普通だ。

少しでも太ければ途端にそれは現実世界ではデブ扱いだ。


少しでも太っていたら美しくない、美しくなるには、自分に自信を持つにはやはり痩せていることこそがステータス、そんな思い込みが徐々に晶子を支配していった。


放課後で友人同士でおしゃべりがしたいと学校帰りに学校の近くのカフェやファーストフード、ファミリーレストラン等飲食店に行くことに誘われる。

断るのも付き合いが悪いと思われるのが嫌で付き添う。


友人はハンバーガーやサンドイッチ等の軽食、もしくはケーキやパフェなどのスイーツを注文する。

しかし晶子はそれらを目の前にしていつも意地でも緑茶や紅茶などノンカロリーなドリンクを注文するだけにしていた。

「晶子、なんか食べないの?」

「うん、お腹すいてないから」

食べ物を注文しないことをつっこまれればいつもそう嘘をついた。


もちろんダイエット目的だけではなく美容やファッションに使うお金を貯めて普段の生活を節約するにはこういったフードなどの料金もなるべくお金を使わないようにしていたという理由もあった。

しかし本当は常に空腹状態でイライラしていた。


昼食が野菜のみで夕方になればお腹が空くのだ。

しかし食べれば体重が増えてしまう、そのことを危惧していた。

友人が目の前で食べ物を食べていると本当は自分も食べたいのに……と我慢するばっかりだった。

しかし食べれば体重が増える、という恐怖感の方が強かったので食欲には負けなかった。


毎朝体重を測り、体重が減っている日の快感が嬉しくてやめられなかったのだ。

その反面、毎朝体重を測り、数値が百グラムでも増えた日は一日イライラした。

「百グラムも増えてる……私が悪いんだ。何か昨日カロリーを取ったんだきっと」

昨日食べた何かが原因だったのか?それとも運動を怠ったのが悪いのか?と原因探しをしてしまい百グラムが増えただけでも自分が悪いのだ、と自分を攻め立てた。

毎日体重を測って減っていることこそが普通で体重が変わらなかった日もイライラした。

「減ってない……」と減ってないこともイライラなのだ

とにかく体重の増減が全てになっていてそれらのことで張りつめていて常にピリピリしているためにイラつきが収まらなかった。

朝測った体重の数値だけでその日一日中がこれでもかと気分が落ち込む


苛つきの原因には過度な食事制限で脳に必要なエネルギーがいきわたっておらず、糖分などの成分も不足していることもあるだろう。

また太ったのならばすぐに戻さねばと焦りの気持ちだけが発生する。

毎日の習慣で体重を測れば減った日は喜び、増えた日はイライラの繰り返しだった。

とにかく体重の数値が減ってないと気が済まない。

体重という数字が生きている上での晶子にとっての全てなのだ。


さらに気がかりなのは学校では常に小テストがあった。

梅沼女子高は進学校だけあってこの学校は小テストも多いのだ。

その小テストの結果で点数が平均点ほど取れなかったり、前回よりも点数が下がっているといるとそれもまたイラつきだ。

レベルの高い学校に通っているからこそ、成績も常に優秀でなくてはならない、そう思っているからだ。

晶子の今の生活は体重とテストの点数、その数字という概念に囚われていた。


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