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35.酒飲み娘

 リザードマンたちから感謝され、ごちそうを用意すると言われた。


 宴に参加しようとしたのだが、生魚をそのまま出されて困った。


 リザードマンたちはそのままボリボリと食べるらしい。色々と強いなと思い。俺達は魚をもらい調理することにしたのであった。


 そうして洞窟内で一泊させてもらいその次の日の出発を迎えた。


「ありがとう。魚、うまかった」

「人が生で食べないとは知らなかったりぃ。すまなかったりぃ」

「いや、いいんだ。やはり種族で特色があって面白いな」

「またくるといいりぃ」

「今度は娘を連れてくる」


 俺がそう伝えると、リザードマンは顔を歪めた。


「次は話し合いをしたいりぃ」

「あぁ。言っておくよ」


 手を振ってリザードマンと別れた俺達は教えてもらった通り洞窟を抜けた。


 抜けた先は日差しがサンサンと降り注ぐ林に出た。後ろを振り返ると大きな山がそびえ立っていて頂上を見ることはできない。


 この山を本来は迂回するルートだったんだが、こんな最短ルートがあるとはな。


 迂回すると4日はかかりそうだった。

 それを一日で通ったようなもの。

 凄い日程の短縮になった。


「ししょー。すぐに抜けられてよかったですねぇ」

「そうだな。無事に抜けられてよかった」

「いい人達でしたねぇ」

「種族にも色々いるさ。今回は運が良かった」


 森の香りを感じながら進む先には大きな街が見えてきていた。


 その街にも入口に兵士がいるようだ。


「何の用で来た?」

「娘を探しているんです」

「ほぉ? 攫われたのか?」

「それも不明です」


 なんでそのようなことがわからないが、俺達が怪しまれているわけではなさそうだ。


「ここ最近、この街の先で盗賊が出る。あなたの娘が攫われていないといいな?」


 そういうことか。盗賊に攫われたかもしれないと気にかけてくれていたんだな。


 気にかけてくれるのは嬉しいが、マナがそこまで弱いとも思えない。


「ししょー? もしかしたら攫われたかもしれませんよ?」

「そんなことはないだろう」

「でも、薬盛られたらどう思います? あの花園でもししょーも危なかったわけですし……」


 たしかにそうだ。薬を盛られれば連れて行かれてしまうのもありえる。


 その上、売り飛ばされたりひどい仕打ちを受けていたらどうするか。


 想像がドンドン膨らんでいき、俺はいてもたってもいられなくなった。


「ガイル。慌てんじゃねぇ。今さらジタバタしても何も変わらねぇぞ? 冷静になれや」


 そうだ。ここで慌てていては失敗してしまうかもしれない。


「あ、あぁ。そうだな。ありがとうよ」


 兵士に礼を言い街に入る。その後はギルドに直行した。そしてドラゴンの素材を買い取ってもらうことにした。


「ドラゴンの素材はどこに?」

「ここではせめぇ。外に出すぞ?」

「では、裏にお願いしまう!」


 中庭へと行くとヤマトは結界を取り出すとその辺にポイッと投げると結界を解除する。


 重量感のある音がしたかと思うとドラゴンの頭があった。その他にも腕と足を出していく。


「わぁ! 凄い大きさですね! こんなスティールドラゴン討伐したんですか!?」

「あぁ。懐に潜り込めれば比較的簡単に倒せるぞ?」

「さ、さすが特級……」


 結構な大きさで処理に困っていたが、換金はしてくれるそうだ。

 大体全部で三千万ガルだろうとのこと。

 それもギルドカード入れてもらい、また百万ガル程を下す。


 ギルドでマナのことを聞いてみたが、知っている人はいなかった。というか二年も前だとあまりに普通の活動をしていると記憶から薄れているようだ。


「マナさんの情報なかったですねぇ? この街にきてないんでしょうか?」

「いや、そんことはないと思う。あの洞窟を抜けたのなら、ここによったはずだ」


 サーヤが首をひねっているが、そもそもそう簡単に情報が集まっていたのがおかしかったのだ。


 ふつうそんなに情報は集まらないはずなのだ。

 俺達は今まで運が良かっただけ。


 ギルドで情報がないなら情報の集まりそうな所に行くまでだ。


「今日は飲みに行くぞ」

「えぇー? 情報集めないんですかぁ?」

「いいんだよ。行くぞ」


 飲み屋へ向かうとヤマトが喜んでいる。

 ヤマトのやつも酒が好きだからな。

 酒癖はまぁ。その通りだ。


 探索者らしき人が多くいる居酒屋へと入った。

 そこでは午後の早い時間なのに飲んだくれている奴らがいる。


「ご注文は?」

「エールを三つとつまみおまかせで持ってきてほしい」

「はぁーい!」


 いつもどおりエールを頼んでつまみも適当に頼む。

 こういう店ではお任せで頼んだ方がおいしかったりするのだ。


 少ししてエールが届くとグビグビと半分ほど飲んだ。


「ぷっはぁー! うまい!」

「おっさん! 良い飲みっぷりだなぁ! まさか探索者じゃあるまい!?」

「そのまさかだ」


 この年齢で探索者をやっている奴は珍しいからな。


「マジかよ! 珍しいな!」

「あんた、この店へは良く来るのか?」

「あぁ。来るよ。うまいしな」

「以前ピンクの髪の彫の深い美人を見なかったか?」


 その男は少し上を向き、思い出している様だ。

 目を見開くと何かを思い出したようだ。


「あぁ! あの酒の強いねぇちゃんだ!」

「知っているのか?」

「あぁ。屈強な探索者相手に飲み比べしてベロンベロンになってたぜ? 勝ってはいたけどな」

「そうか」


 俺の顔を見た男は眉間に皺を寄せた。


「おい。おっさんが若いねぇちゃん探してどうすんだ? まさかケツおっかけてんのか? 同じ年頃の女を連れてんのによぉ!」


 酔っているその男はまくし立てるように唾を飛ばして話す。


「誤解だ。娘を探してんだ」

「あぁ? あれがあんたの娘だぁ?」


 顔を近づけてその男はじっくりと俺の顔を見る。かかる吐息が酒臭くて鼻が曲がりそうだ。


「似てるな!」


 やはりマナだったのだと思う。この街までは来ていたか。その先、無事だと良いが。

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