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29.豪華な朝食とマナの軌跡

「ごきげんよう! 皆さん疲れはとれましたか?」


 スタスタと颯爽と歩いてきたのはローラと少し後ろに白髪をオールバックにした執事と思われる男性であった。


「あっ! ローラさん! すっごくよく眠れました! ワタシは元気いっぱいです!」

「わざわざきてもらって悪いな」

「疲れてまーす」


 正直に気持ちを口にするヤマトの脇を小突いて話を進める。


「いいのですわ! 疲れを癒せるように、今日はおもてなしをしますわ!」


 ローラは両手を優雅に広げると頭を下げた。

 そして、クルリと振り返ると「どうぞ。こちらですわ」とついてくるように促してくれた。


「申し遅れました。私、執事をしているものです」

「丁寧にどうも。悪いですね。おもてなしなんて。よかったのに」

「滅相も御座いません。話を聞けばお命を助けて頂いたとか。感謝してもしきれません!」


 俺達を拝むように頭を下げた執事。年齢は俺より少し上のような気がする。


「マッコール家でしたか。仕えて長いんですか?」

「えぇ。もうお仕えして四十年ほどになります」

「それは、古株ですね」

「えぇ。一番の爺です」

「いや、精錬されている雰囲気を感じます」

「恐縮でございます」


 執事は背筋をピンッと伸ばしていて歩き方も気品にあふれている。さすがは貴族に仕える使用人といった感じである。


「あぁーはらぁへったなぁ」

「おい。我慢しろ。子供か!」

「疲れたもんなぁ」


 それに引き替え隣を歩いているヤマトときたらがに股でタラタラあるいてだらしがない。まぁ、ほぼ徹夜だったから仕方がないのだが。


「着きましたわ。朝食もご馳走しますのでご安心を!」

「よかったですねー! ヤマトさん!」

 

 着いた屋敷は大きなお屋敷で、庭が広く鍛錬もできそうな所だなという印象だった。


「わー! おっきい家ですねぇ!」

「そんなことありませんわよ。どうぞ」


 サーヤが興奮している。一緒に門をくぐると花の香りのするエリアがあり、濃い赤い花が目につく。その周りには黄色、紫、白。色々な花が咲いている。


「きれいなお庭ですねぇ!」

「ここは自慢の庭で専門の庭師がいるのですわ」

「すごーい! わー! このお花きれー!」


 大きな白い花に顔を近づけるサーヤ。

 俺は腕を掴んで手前に引く。


「えっ!?」

 ──バクンッ


 白い花が急に牙をむいて口のように閉じた。


「ローラ、こういうのはなんで植えてあるんだ?」

「それは防犯の為ですわ! さすが、探索者! これにはひっかからなかったわね!」


 いや、実際止めなければサーヤはくわれていたと思う。

 このお嬢様、ちょっとヤバいかも。危険だな。


 庭を抜けて玄関に入ると広い空間が広がり、上にはシャンデリア。階段の上にはステンドクラスもあり、カラフルな光が降り注いでいる。


「まぁ! この方たちがローラの命の恩人ね!」

「いやー。この度は有難う御座いました。感謝いたします。マッコール家当主です」


 俺達を出迎えてくれたのは俺より年下であろう綺麗な女性と、同じくらいの年齢のキリッした顔の男性であった。


「この度はお招き頂き有難う御座います。俺達は探索者なので礼儀とかを知らず申し訳ないんですが……」

「いいんですよ! 礼儀など不要です! さっ、どうぞ! 朝食をご用意してます!」


 通されたのは大きな長テーブルのある部屋ですでにホカホカの料理がテーブルに並べられていた。


「おいしそー!」

「どうぞ。座って食べましょう」

 

 サーヤがはしゃいでいると父親が座るように促してくれた。

 

 座るとパンやら肉やらと皿に取り始めたサーヤ。

 それに続いてヤマトも皿に山盛り。

 ガツガツと食べていた。


「おい。少し遠慮しろよ」

「いいんですよ。どうぞ。お好きに食べて下さい。こんなことしかできなくてすみません」

「いえいえ。そんなことないです」


 食べてみると肉は柔らかくうまみが口の中に広がる。パンもバターの味が濃くてうまい。そして、野菜は新鮮だからだろう。甘みが濃くて食べたことがないほどの旨味だった。


「実は娘を探す旅をしておりまして。たまたま助けた感じなんですけど。お嬢様が殺される前に間に合ってよかったです」

「本当に有難う御座いました。それで、娘さんというのは、どういうかたですか?」

「ピンクの髪を肩くらいまで伸ばしていて、彫の深い綺麗な顔です。マナといいます」


 それを告げたとたん、父親が目を見開いた。


「なんということでしょうか。神が会わせてくれたとしかおもえませんね」

「どういう……?」

「私達は、マナさんに護衛して頂いたことがあるんです」


 それを聞いてこっちも驚いた。

 思わず笑みがこぼれる。


「ハッハッハッ! それは偶然にしても凄いですな。マナを知っていらっしゃるとは。護衛と言いましたが、どのくらい前ですか?」

「それがですねぇ。二年ほど前だったかと思うのですが、私もうろ覚えで……」

「いや、いいんです。ちゃんと探索者やっていたんだと思ってですね……。ちょっと感慨にふけってしまいました」


 本当にちゃんと探索者パーティとして活動していたんだな。しかも、ローラの両親は探索者に恵まれたと言っていたらしいし。いい印象だったのだろう。


 まだ会えぬマナを思い、少し笑みが溢れるのであった。

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