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23/42

23.アジトに突入

 見つけたのは隠し通路だった。


「店の店主は誘拐犯の一味だったってことだよなぁ? こりゃぁ、規模が大きい話になるんじゃねぇのかぁ?」


 ヤマトが懸念する気持ちは分かる。街に普段いる人が誘拐犯の一味なんだとしたら、かなり大規模な組織な気がする。


「そうだな。まずは、追うか」

「えぇ? 大丈夫ですか!?」


 サーヤは不安そうだが、追った方が早い。


 二人に目配せをして地下にある通路へ降り立ち、炎を灯して奥へと進んでいく。


 通路は一本道のようで長く続いている。


 しばらく歩くと広い空間に出た。


「うおっ! つ、ついてきたのか!?」

「おい! 跡つけられてんじゃねぇよ!」


 四人の犯人と思わしきヤツらがいた。

 奥にまだ部屋があるみたいだ。


「子供たちはどこにいる?」

「さぁなぁ?」

「頭は誰だ?」

「言うわけねぇだろう?」


 質問してみたが、犯人たちはのらりくらりと答えるばかり。それに痺れを切らした人がいる。


「お前らよぉ。全員食ってやろうかぁ? あぁ!? こうやってよぉ?」


 ヤマトの首にかけていた口が開くと近くにいた一人をバクンと食べた。


「なんだコイツ!? 一人食べられた!」

「おい! コイツやべぇぞ!」


 思わぬできごとに壁に身体を預けて逃げる姿勢になる犯人たち。


「おい。子供達はどこにいる?」

「こ、この奥だ!」

「仲間はあとどれくらいいる?」

「し、しらねぇよ!」

「頭張ってるやつだせ!」

「か、かしらはこっちの部屋にいる。おしまいだ。俺達もろとも全員殺される!」

「いいからそこまで連れていけ」


 薄暗い通路を歩いていくと一つの重厚な扉が見えてきた。


 その男は恐る恐るノックする。


「なんだ?」

「し、侵入者です!」

「なんだと!?」


 トップの男が出てくる前に俺は扉をぶち破った。


 ──ドガァァァァンンッッ


「おう。腐った組織の頭はお前か」


 そこには無精ひげを生やし、白髪の髪をオールバックにまとめている三十代くらいの男。


「そうだが? おっさんが正義の味方ごっこかぁ? いつだかも綺麗なお嬢ちゃんが部下を兵につきだしていたなぁ? いやぁ。ビジネスの邪魔をされて困ったよぉ」

「マナは大元を駆除できなかったわけだな」

「おやぁ? 知ってるのかぁ?」

「俺の娘だからな」

「ハッハッハァァ! そりゃあいい! 父親に償ってもらおう」


 不敵な笑みを浮かべると古そうな剣を後ろから持ち出した。

 その剣には魔力が宿っている。


「これはなぁ。振るっただけで斬撃が飛ぶんだよ。こんなふうになぁ!」

 

 振るわれた剣の後に斬撃が飛んできた。

 

 ──ザンッ


 すぐ横の壁が縦に切り裂かれた。


「キャァァ!」

 サーヤが急な攻撃に悲鳴を上げてしまう。


「おぉぉ。良い声で鳴くじゃねぇか! かわいこちゃんはきざみたいねぇ!」


 リーダーの男は剣を再び振り上げている。


「ガイル、相手は兵士具ナイトールだ。いけるよな? それとも、食うか?」

「いや、俺がやる」

「任せたぜ?」


 俺は一歩前に出ると拳を構えた。魔力を腕輪に流し、赤黒の煙を拳に纏う。


「はっはぁ! 拳でどうしようってぇ!? おらぁ!」


 振り下ろされた剣に連動するように見えない斬撃が放たれる。

 

 さっきの斬撃で振ってから到達するまでのタイミングは分かった。


 あとは、合わせるだけ。


「ふんっ!」


 拳を横に振るう。


 ──スガァァァンッ


 弾いた斬撃が横の壁に飛び、深い傷をつける。


「なっ!? なんだお前は! この斬撃が弾かれるなんて、これ以上のアーティファクトじゃないとありえない!」

「だったら、そうなんじゃないか?」

「これいじょうなんてあり得ない! これは兵士具ナイトールだぞ! これ以上なんて出回っていない!」

「ほう。そうか。じゃあ、効くんじゃないのか?」

「ありえない! オラッ! オラオラオラァァァ!」


 斬撃が次々と飛んでくるのをタイミングを合わせて殴りまくる。


「ふっ! ふっふっふっ!」


 右へ左へと斬撃が飛んでいき、最後は正面の男めがけて殴りつけた。


 飛んで行った斬撃は腕を切りとばした。


「がぁぁぁぁ! うでがぁぁぁ!」

「今までも、探索者達をそうやって痛めつけて殺したんだろう? そうわめくな。今殺してやる」


 そう呟いてその男に迫っていくと床に尻をついて後ずさった。


「俺はこの街を裏から牛耳っている! だから俺がいなくなったらどうなるかわからないぞ!」

「それなら、後はギルドに任せる。俺は大元を駆除するだけだ」

「やめろ! このアジトは街全体に広がっているんだ! 他の奴に悪用されるかもしれないぞ!?」

「ギルドが活用してやるから感謝しろ?」

「なっ! そんなこ──」

 ──バクンッ


 黒いナニカが飲み込んでしまった。


「おい。ヤマト?」

「いいだろう? うるさかったんだから」

「ったく。そこにいるやつらも食べられたくないだろう?」


 倒れこんでいた男に聞くとコクコクと頷いた。

 しかたのない奴らだ。自分の命は大事なんだからな。


 まぁ、少しは生かしておかないと説明するやつがいなくなっちまうからな。

 剣を回収してはいつくばっている男の元へと行く。


「子供達を出せ」


 男達は素直に言うことを聞き、子供達の所へ行くと鍵を開けた。


 そこはひどい状態でやせ細っている子供達と糞尿の匂いが充満していた。


 やはり全員許すことはできないな。


「助けに来たぞ? さぁ。一緒におうちに帰ろう」


 子供達はざっと十人ぐらいいた。ぞろぞろ出てくると広い空間へと戻った。


「──そこまでだ! 油断したなぁ! 動いたらこの子供を殺すぞ!」

「ちょっと! やめて!」


 サーヤが絶叫する。

 ニヤニヤしながらそちらへと視線を向ける男達。

 三人はそれぞれ子供にナイフを突きつけている。


 ここを切り抜けられるか。

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