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10.魔力探知できるの?

 広がった洞窟は青い光を放っていて空気がある状態だった。


「水は……ないですね」

「そうだな。普通のダンジョンのようだ」

 ──ゴクリッ


 サーヤが喉を鳴らし、向かう先への不安とプレッシャーが感じられる。その雰囲気に引きづられるように俺は不安を胸にいただき。だが、立ち向かって行った。


「俺が前に出よう」

「あっ、はい! ありがとうございます!」


 俺としては、正直ここの魔物はまだ弱い方だ。倒すことには造作もない。

 サーヤの魔法の属性は水属性だ。魔物の耐性があることを考えると俺が前に出て迫り来る敵に反応してやるか。


 進んでいると湿気からか、天井からの水滴が時折首筋や腕にかかる。ヒンヤリとした空気が背筋を震わせてサーヤの不安も増幅させてしまっているようだ。


「きゃっ!」


 後ろを咄嗟に振り向く。


「敵襲か!?」

「い、いえ。なんか触られた気がしたんですけど、何もいませんでした」

「ふぅ。そうか」


 久しぶりのダンジョンであることと人数的に二人ということ。ブランクのある俺がどこまでやれるのか。少し不安になってきてしまう。


 しかし、不安を表に出してしまってはサーヤがさらに不安になってしまうだろう。しっかりと前を向いて先導しないとな。


 ──ビチャ……ビチャ

「何か来る!」


 奥は二股に分かれていて、どちらからかはわからないが音がした。

 耳を澄ませて気を探る。


「そうだ。サーヤ、右の方に魔法を放ってみてくれないか。牽制になる」

「はい! いっきまーす! アクアーショット!」


 気合が入った為だろう。いつもより大きめの水弾が右の穴へと吸い込まれていった。


 ──ドドォォン

「こっちじゃない! 左から来るぞ!」


 今のは明らかに壁に当たった音だ。ダンジョンの壁というのは壊しても時間が経過すれば戻る。その特性を利用してこうして魔法を撃って牽制をしたものだ。


「はい!」

「きた!」


 魚のような顔が穴から現れた。前にいた俺は半魚人の顔を殴りつける。

 予想外だったのは、その後ろからも半魚人が現れたこと。


 俺は攻撃のモーションをしている状態から反応ができない。三つ又の槍が顔に迫る中躱すことができない。


「アクアショット!」


 水弾が三つ又の槍を弾き飛ばした。


「ふっ!」


 体の体重移動を行い振るっていた体を翻すことで後ろの半魚人へ左の拳での打撃を与えることができた。


 半魚人は二体とも首が捻じれた状態で絶命している。それは打撃の攻撃力の高さを物語っていた。


「サーヤ、助かった。有難う」

「咄嗟に身体が動きました! さっき、一発撃ってたのがよかったのかもしれません」

「ふぅ。ブランクってのは恐いな。体が思ったより動かないものだな」


 自分の体がやはり鈍っていることを感じた。若かったころは一発目の打撃から二発目の打撃への切り替えは即座にできたいた。さっきのは最初の攻撃が大振りになったせいだと思う。


 溜息を吐きながら半魚人がやってきた方の道へと歩みを進めた。


「えぇ!? 敵が来た方へ行くんですか!?」

「サーヤ、覚えておいた方が良い。アーティファクトの眠るダンジョンではその物からにじみ出る魔力で魔物が生み出されている。ここまで言えばわかるか?」

「はい! 魔物がいる方に、アーティファクトがあるんですね!?」

「そうだ。よくわかったな。逆に魔物が出ない方の道には罠が張られていることが多い」

「罠とかもあるんですか!?」

 

 ダンジョンの罠には昔、大いに苦しめられていたんだ。それを思い出し、顔をしかめてしまう。


「ししょー?」

「あぁ。すまん。昔罠で苦しめられたことがあってな。それを思い出してしまった」

「ししょーもそんな顔するんですね!」

「俺だって、嫌なことぐらいある。ダンジョンを潜るくらいなら、特級の魔物を相手に戦った方がラクだ」

「はははっ! そんなこと言うの、ししょーぐらいじゃないですか!?」

「そんなこともないと思うけどな……」


 接敵して倒せたことで、少し緊張が和らいだ。

 数個の分岐点を通過し、最下層へと向かっていた。


 この分岐点の時には、サーヤの魔法技能が役に立っていた。魔力探知をするというもの。俺が現役の時は魔力探知をできるような魔法使いはそんなに数がいなかったと記憶していた。


 ここ数十年の魔法技術の発達は目を見張るものがある。


「ダンジョン探索って意外とラクですね? 魔物を倒せれば、ですけど」

「いやぁ、俺達の時はこんな感じにはいかなくてな。魔力探知ができないから、こっち行っては戻りを繰り返していてな。魔物が来たらラッキーってな感じだったんだ」

「へぇぇ。魔力探知は最近の魔法士はみんなできますよ? 得意不得意はありますけどねぇ」

「そ、そうなのか……近頃の探索者は凄いんだな……」


 サーヤに出会ってから最近の魔法士の優秀さには舌を巻くものがある。感心しながら行っているダンジョン探索は以前と違いラクなものに感じでいた。


 不思議なものである。あんなに苦労していたダンジョン探索がこんなにラクになるとは。これは後世へと伝えようとする探索者組合の行いが良いんだろう。


「あっ。だんだんと強くなってきましたね」

「そろそろか。気を引き締めろ。最後のアーティファクトの間には守護者ガーディアンがいるものだ」

「……はぃ。ふぅ。絶対倒します」

「行くぞ」


 二人は少しの緊張を胸に、魔力の大きな間へと足を踏み入れた。

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