第21話 作戦会議
教会から戻った星雲は、拠点で回収した資料を精査していた。
もちろん、戦闘に特化しているイータやアルビオンは、これに参加はしていない。
イータは森に狩りに行き、アルビオンはまだ眠っていた。
無限の時を生きるアルビオンにとっての時間感覚は、周りとは違いすぎるのだ。
聞き込みの情報などを資料と照らし合わせながら、教会の動きを探り、神についての情報を少しでも得ようとしていた。
そしてティアとルミアがユリウス達と共に、地図を囲んでアーティファクトが運び入れられた教会の襲撃の作戦を立案している。
「――って、書いてあるからこのアーティファクトは、回収するべきだと思うわ」
「それにこの教会の資料室に、人喰みの詳しい情報があるみたいなの」
「なるほど」
ユリウスが考え込むように、地図を眺めていた。
なんか、色々ガチで行動してるじゃん!!
やばい!
解散するとか言えるような雰囲気じゃなくなってきたぞ!
ユリウスが助けを求めるように、アリサに視線を送る。
(お兄ちゃん、ど、どどどどうしよう!!)
(こうなったら、上手く口実ができた時に切り出すぞ!)
(それしかないね。うん!)
二人は視線だけで、会話していた。
そして焦りながらも、表面上は冷静を装う。
「お兄ちゃん」
「ああ。次はそこに向かえ」
ユリウスが少し離れた所で資料を読むふりをした後、カッコつけてナイフを投げる。
あ! やべっ! 手元が狂った。
ナイフは目的の場所より少しズレた。
見当はずれの所に、刺さったのを見て、慌てながら平静を装った。
「ここには何も……なるほど!」
え! 待って。何がなるほどなの!?
ルミアの言葉にユリウスが困惑しながら、答えを求めるようにアリサとティアに交互に視線を送る。
「流石、お兄ちゃんだね」
「この資料を一瞬で読み解くとは、さすがだわ」
これはダメなやつだと悟るには、十分な状況になってしまった。
ユリウスが投げたナイフは、目的の街から二つ隣の町に刺さっていた。
だが、何故か納得する三人にとりあえず話を合わせようと、ユリウスは決めるのだった。
そしてその勢いのまま、襲撃作戦が出来上がっていく。
ティアの頭の回転の速さには、アリサとユリウスが驚愕していた。
いつも出来上がった作戦を見ているだけだからだ。
そして作戦の詳細を全員で決めている所に、エリナがお茶を持って現れた。
「おつかれ~。いい感じ?」
「ええ。大まかに作戦が決まった所よ。エリナ、また調達を頼んでも?」
「任せて! それは私の得意分野だから」
エリナが自信に満ちた声で言う。
「それでそこには、何があるの?」
「神骸の爪で作られたアーティファクト。能力は、文献通りなら体の一部を神化させる力よ」
「それって……」
「今までで、一番危険なアーティファクトよ。それにこのアーティファクトには、神が関わってる可能性があるわ。生成方法がいくら何でも人ができるものじゃない」
「今回は、いつも以上に大変そうだね。もう見てくれた思うけど、少なくとも二人の領主が裏にいることがわかったから」
「だから、じっくりと事を進めるわ。今回は、わたしもアリスとは別行動で動くつもりよ」
こうして星雲の中でも隠密を得意とする者たちが、その日に向けて動きだすのだった。
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