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第15話 ハイエルフとの邂逅

 ユリウス達は、地中から現れた建物を見て昔と変わっていない事に安堵していた。


「良かった。壊れてなさそうだね」

「ま、不壊属性を付与してるしな」


 玄関にある認証機に人指し指を当て、魔力と指紋の認証を試みる。

 だが、流石に年月が経ちすぎており反応がない。


「流石に、発電設備は止まってるみたいだな」

「むしろ、動いてる方が不思議だよ。燃料とか切れてそうだもん」


 雑談をしながらユリウスは、空間収納から鍵を取り出す。

 そして扉の鍵を開けて中に入る。


「内装は結構綺麗だな」

「防汚の付与がちゃんと機能してる見たいでよかったよ。……でも、流石にちょっと埃で汚れてるね」

「年月が年月だからな。掃除するか」

「うん!!」


 二人は、窓を開けて各部屋を分担して掃除を始める。

 最初は掃除具を使っていたが、途中から面倒になって魔法を駆使して掃除を始めた。

 それから2時間後。


「残すはここだけだね」

「地下だから埃を出すが面倒そうだ」


 地下室への階段前で、まるで強敵に挑む前のたたずまいで立っていた。

 意を決して地下に降りていく。

 階段を降り、地下室に到着する。

 そこには発電設備や物置部屋、そして第二研究室があった。

 ユリウスが発電設備を撫でるように触る。


「まだ生きてるみたいだ。多少の手入れは必要そうだがな」

「ガソリン全滅してる~」


 空のガソリン缶をアリサが持ってくる。

 そして缶を軽く叩くと軽い音が鳴る。

 それだけで、中には何も入ってないとわかる。


「古き良き発電機は、使えないなこりゃ」

「となると、こっちの小型核融合炉を使うしかないみたいだね。でも……」

「わかってる。メンテと掃除が必要だな。先に部屋をやっちまうか」

「だね」


 再び二人は、別れて掃除を始めた。

 それから数十分経ち、大物である核融合炉が残った。


「じゃあ、私がメンテするから掃除お願い」

「了解だ。終わったら手伝う」


 そして各々が自分のやることを始めた。

 アリサが作業着に着替えて、腰に工具袋を着ける。

 

「じゃ、外回りよろしくね」


 アリサが炉の内部メンテナンスを行う為に、炉の中へと入って行く。

 その間にユリウスが炉の掃除を始める。

 掃除に魔法を使っているせいか、割と早く掃除が片付いて外部メンテナンスを始める。

 数秘術と解析魔法を並列起動することで、劣化や故障しそうな所がないか、念の為に確かめている。

 解析後、緩んでいるボルトやネジを見つけ、片っ端から固定し直すユリウス。


「あ、やべ! ここ届かない……」


 最後のボルトを固定しようと手を伸ばすが、奥まった所にあるせいで、今のユリウスだと微妙に届かない。


「仕方ない。あれ持ってくるか」


 地下室にある工具棚を開け、工具の長さを調節する道具を取り出し、固定用工具に取り付けた。


「……これでよし! これならたぶん届きそうだな」


 ユリウスが再び先程の場所に戻り、腕を伸ばす。


「よしよし。届いたぞ。これならネジを閉められるな」


 全てのネジなどを閉め終わると、最終確認を済ませて内部に向かう。


「アリサ、どんな感じだ?」

「あと少しで終わるよ~。大きな破損とかはないかな。不壊属性を付与してるおかげで劣化もないけど、ちょっと緩んでる所があった」

「わかった! 手伝うか?」

「じゃあ、そこお願い。それでラストだから」

「了解だ」


 ユリウスがアリサに指定された場所のメンテナンスを行う。

 工具袋から工具をとっかえひっかえしながら、ユリウスがパーツ替えなどを行っている。

 そして一通りのメンテナンスを終わらせる頃には、二人とも油などの汚れで、顔や服が黒くなっていた。 

 

「んんー」


 アリサが大きく背伸びをする。


「風呂でも入るか」

「じゃあ、一緒に入ろ~」


 アリサはユリウスの手を繋ぎ、風呂へと一直線に歩く。

 そして脱衣所に行くと、アリサが両手を上げた。


「お兄ちゃん、おねが~い」

「全く、子供じゃないだろ」

「今は子供だよ~」


 その言葉に返す言葉が見つからず、仕方ないと思いユリウスがアリサの服を脱がす。

 服を脱がすとハート柄の下着が顔を覗かせる。

 そしてパンツを脱がす。

 まだ、胸は成長しておらず、ブラは付けていない。


 体と髪を洗ってから、二人は湯船に浸かる。


「は~生き返る~」


 ユリウスがまるでおっさんの様な声を漏らす。


「お兄ちゃん、ジジくさいよ」

「ははは。いいだろ、俺は温泉とか好きなんだからさ~」


 あまりの気持ちよさに、二人とも目が蕩けていた。


「ねぇねぇ、この後どうする~」

「さっきの謎の施設に行ってみるか。やることもひと段落したしな」

「じゃあ、明日にしない? もうすぐ日が暮れるから」

「そうだな」


 これからのことを考えながら、湯船でリラックスしていた。

 その時、ユリウスがふと思ったことを口にする


「……この歳ならごっこ遊びができるんじゃないか――?」

「いいねー。私たち、昔は強くなることに夢中でそう言うのあまりやらなかったもんね~。例えばどんなのやるの」

「そうだな~」


 ユリウスが少し考え込む。

 今までのことを思い出しながら、良さそうなのを探す。

 そして何かを思いつき、ユリウスが指をパチンッと鳴らした。


「秘密組織なんてどうだ? 世界を支配する神を打倒するみたいな」

「それはすごく楽しそうだね。じゃあ、私たちは悪い神を倒す魔女と魔王だね」

「魔法を極めた神殺しの魔導士とかな」


 会話が弾む。

 子供の頃、ほとんどやらなかったごっこ遊び。

 二人はある程度の歳になって、それに憧れてしまった。

 それは子供の頃の反動を受けたように。

 だが、歳が歳だけに冒険者になっていた頃には、やることができなかった。

 それは恥ずかしいという感情と卒業しなければならないものだったから。

 しかし、今の年齢は子供だ。

 ごっこ遊びをしても、周りからは何も言われないし、思われない。

 だからこそ、子供を堪能しようとしていた。


「もし幹部みたいなのを作るなら、星雲の名前とかいいかもな」

「死してなお輝く星屑か……うん、素敵だね。仲間はどんな人にしよう」

「統率力と実行力、そして戦闘力があれば言いな。秘密組織っぽいだろ」

「確かに! なら、クールな性格とか個性的な人も欲しいね!!」


 ユリウスとアリサは、ごっこ遊びの設定を考え盛り上がる。

 それから一時間程、お風呂を堪能した二人は服に着替えて寝室へと向かい、長いようで短い一日を終える。



 そして翌日。

 二人は謎の施設の前に来ていた。


「改めて見るとボロいな。なんて言うか……遺跡だな」


 謎の施設の外壁はツタや苔などに覆われ、古代遺跡の様な風貌をしていた。


「雰囲気あるね。中がもう少しちゃんとしてれば合格だったんだけどな~」


 アリサが昨日見た内装を思い出し、残念と表情に出していた。

 今回、二人がここを訪れた目的は謎の肉塊の回収だ。


「あの実験材料がまだ残ってるといいね」

「じっくり研究して、新たな魔法の礎に出来たら最高だな」


 二人は心を弾ませながら、謎の施設へと侵入する。

 ユリウスは、剣ではなく例にならい、魔導銃を装備していた。

 広範囲に索敵魔法を展開しながら進むが、生体反応がない。

 正確には、肉塊以外のだが。


「昨日の今日で人員の補充はなかったようだな」

「まあここは、かの有名なイーリアス森林地帯だからね。そう簡単に人員補充されても困るのだよ」


 二人は死体を目尻に軽い雑談をしながら、地下へと向かう。


「私たちを転移させた奴って、一体誰なんだろう?」

「明らかにこの時代の奴じゃなさそうだが、不完全な転移魔法を見るに、俺らの時代の奴でもなさそうだ」

「謎が謎を呼ぶよね。……でも、一つ分かったのは、私たちの領地に何かしようとしてる人たちがいるってことだね。何が目的かは、わからないけど……」

「俺らを狙った当たり、何か目的があるのは確かだが……」


 そんなことを話していると目的地へと到着した。

 相変わらず醜い肉塊は、二人に殺してくれと訴えるかのような視線を向ける。


「さて、これをどうするか」

「魔力的には、人に近いね。でも、ちょっと違う……」


 アリサが手を顎に当てて考える。

 魔力の波長からは、人間に近いが何か不純物の様なものが混じっているせいで人と断定することが出来ない。


「長いこと生きてきたが、これは始めてみるな」

「…………。これって……もしかして……他の強い力が混じってる?」

「魔力統制の副作用もしくはそれによる弊害の可能性もあるな」

「……これって勇者の力? かも……。聖剣の魔力に似てる」

「!? それは本当か!?」


 ユリウスが目を丸くして驚く。


「間違いないと思う。聖剣に斬られた私が保証する」

「そうか……」


 その言葉に複雑な思いを抱くユリウス。

 そして試しにユリウスが、数秘術を使う。



「――分析(アナライズ)


 肉塊の構成要素を分析すると、驚くような事がわかった。


「DNAが……崩壊してるだと……」


 その事実にユリウスは、言葉を失った。

 生きとし生けるものに、絶対にあるものがない。

 その事実は長く生きた者にとっても、絶句させるのには十分なものだった。

 それを聞いたアリサすら、驚きの表情を表に出すほどだ。


「それってもう生物じゃないってこと?」

「わからない。存在は生物として定義できるが、構成要素が一部崩壊してる」

「魔力に喰われたのかな」

「どちらかと言うと、力の暴走を制御出来ずに自壊したように見える」


 二人とも分析系の魔法を使い、様々なことを調べる。


「これは、なかなか興味深いな」

「この状態で生きてるのが不思議だけど、それ以前に新たな理が原因だと思うと研究のしがいがある」

「いい実験材料になってもらうとするか」


 研究者としての血が滾る二人。

 ユリウスは、自分の研究に役立つことがないかと、魔力流れを見ながら正常化の手段を模索する。


「とりあえず、実験がてらに刻んでみるか」

「どこまでやれば死に瀕するのか試したいもんね。今後の敵の参考になるかも」

「あとは属性耐性についても魔法をぶつけて実験だな」


 そして二人は肉塊を刻んだり、火属性の魔法で炙ったり焼いたりする。

 その後も全属性の魔法で実験を行う。

 凍らせたり、貫いたりなど好き放題にやった。

 肉塊が死に瀕すると回復魔法で回復し、再び実験を行った。

 これを三時間ほど行い、実験データを全て取り終えると、やっと本題に入った。


「さて、そろそろやるか」

「そうだね。ずっとこのままは可哀そうだしね。私が魔力制御をするから、お兄ちゃんは回路の修復とDNAの再構築をお願い」

「任せとけ」


 二人が各々魔法を使う。

 ユリウスは回復魔法と並行して、魔力回路の修復を始めた。

 そしてアリサは、魔力を安定化させる魔法を使い、人間本来の魔力の流れへと修正を始める。

 

「体がこんなんじゃなければ、一人で余裕なんだがな」

「仕方ないよ。今の状態だと何が起こるかわからないもん」


 余裕な笑みを浮かべ、楽しみながら肉塊の構成要素などを弄りまわすユリウス。

 肉塊から膨大な魔力が外へと漏れ始め、ユリウスとアリサがちゃっかりそれを喰らっていた。

 暴走状態の魔力が減少したことで、肉塊への干渉速度が上昇していく。


 そして一時間が経過した。

 肉塊が眩い光に包まれる。


「こんなもんか」

「あとは、勝手に戻りそうだね」


 アリサが吸い上げた力を体に適応させ終えると、唇をペロリと舐める。

 まるで、デザート食べた時のように。

 そしてユリウスも嬉しそうに微笑していた。

 

 光が収まると、そこにはハイエルフの少女が全裸で横たわっていた。

 外見年齢はユリウス達と変らない。

 長い金髪が目立ち、華奢な体つきだ。

 美しいの一言で納めてしまうには、勿体ないほどの美少女だ。

 さっきまで醜い肉塊だったとは思えない。


「エルフ……いや、ハイエルフか。……まさかあの肉塊から美少女が出てくるとは」

「何でエルフの王種があんな姿に……」


 二人が考え込んでいると、もぞもぞとハイエルフの少女が動いて目を覚ます。


「…………。こ、ここは……」


 困惑した表情で床を見つめていた。

 まるで狐に化かされた様な顔だ。


「!? わ、わたしの体!!? え、嘘……あれだけ腐り果てていたのに……元に……戻った、の……!?」


 自分の姿が人に戻っているのに気がつき、嬉しさのあまり涙を流して喜びを嚙み締めていたのだった。

いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。

誤字脱字を報告するような感じで気軽に感想を送ってください。


これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日もしくは土曜日の予定です。

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