第9話 そして翌日
イリヤは、ユリウスとアリサに連れられ屋敷を後にした。
ユリウス達はいつも場所に向けて歩みを進める。
「ねぇ、お兄ちゃん、ホントに大丈夫? 昨日、何も言わずに出て行ったこと、あんなに怒られたのに……」
イリヤが不安そうな顔をして言った。
「大丈夫だ。俺もちゃんと策は考えてあるから安心しろ」
「ならいいんだけど、なの」
イリヤはユリウスの言葉を聞き、それに関しては任せようと思った。
そしてその道中、イリヤの提案で歩きながら魔法についての説明をすることにした。
「まず、基礎となる文字はわかるか?」
「魔法文字でしょ。流石に知ってるなの」
イリヤが魔力を使って、魔法文字の一つを作った。
「それ以外は?」
「うーん……ルーン文字とかかな? でも、あれは失われたものだし……。今残ってるものだけだと、魔法の構築がうまくできないなの」
「正解だ。そしてこれがルーン文字の一つだ」
ユリウスが魔力でルーン文字を作る。
「え!? 本物?」
イリヤが驚きながらも、疑いの眼差しを向ける。
「ものほんだよ~」
アリサがフレイムボールの魔法陣を展開した。
魔法が発動しないようにしながら。
「綺麗。こんな精密な魔法陣見たことない。しかも、私の知ってる文字が一つもないなの……。これがルーン文字……」
初めて見た文字に興奮するように見ていたが、一周回って冷静になってしまっていた。
「魔法とは所詮文字の羅列に過ぎない。原初のルーンみたいな例外を除いてな。プログラムの用に精密になるほど、その真価を発揮する……って言ってもわかんないか。この時代は、科学が発展してないしな」
前触れなく話初めてユリウスの言葉を真剣に聞くイリヤ。
「でも、それだと文字が多すぎて、魔法が構築できないなの。それに文字は一つ一つに意味があるって習ったなの」
「確かに、一つ一つに意味があり、文字単体で魔法となるものはある。だが、それはさっき言った原初の
ルーンだけだ。そして原初のルーンで構築された魔法、それが神々だけが使える神域魔法だ」
「もしかして、おにいちゃん達は原初のルーンも知ってるの?」
「ああ、俺たちは知ってる」
「それでも全てを知ってるわけじゃないよ~。あれは失われた技術の一つでもあるの。神話の時代に生きた人々は、神と同じく原初のルーンを使って生活していたの。でも、なぜか失われたの」
アリサの言葉には、研究者としての悔しさが混じっていた。
もし、残っていれば更なる魔法の深淵に手を伸ばすことが出来たかもしれないからだ。
「話が逸れたな。……まあ、てなわけで、魔法は魔法陣からどれだけ無駄を省けるかが重要ってわけだ。無駄が多いと、魔力消費量の割に威力が出ないなんてこともあるからな」
「じゃあ、私たちがいつも使ってる魔法って――」
「お察しの通りだよ。無駄が多くて本来の性能を発揮できてない。まあ、でも、汎用性という意味では、うまく回ってるね。ぶっちゃけ、魔法なんて使う人が使いやすいように、勝手に改良するものだから、汎用型は無駄が多くなっちゃうの」
アリサが魔法陣の構成を組み替えながら言った。
「そうなんだ。じゃあ、私も魔法陣を弄ることが出来れば強くなるなの?」
「それは保証する。でも、方向性は大事だぞ。例えば、火属性に特化した使い手になるみたいなやつだな」
「なるほどなの」
そうこうしているうちに、いつもの広間に到着した。
遅れてきた三人に、ギルが軽く手を振ってきた。
どうやらギルが先に来て、剣の素振りなどを始めていたようだ。
「待ったか?」
「大丈夫だよ。僕もやりたいことがあったから」
「じゃあ、さっそく摸擬戦やろう!! ルールはいつも通りで!」
アリサが遊びを提案するように、はしゃぎながら言う。
「そうだな。組み合わせはどうする?」
「私、ギル兄とやるなの。お兄ちゃん達とだと、レベル差がありすぎるもん」
「だそうだが、ギルはそれでいいか?」
ユリウスがギルに視線を送った。
「僕もそれでいいよ。二人やるのは、もうちょい後いいし」
「わかった。んじゃ、やるぞアリサよ」
「いつでもいいよ~」
そうして摸擬戦が始まった。
いつも通りユリウスとアリサの戦いが激しすぎて、周りが巻き添えをくう。
その光景にギルが溜息を吐き、イリヤが憧れの視線を向ける。
幸い、枝でやっているため、被害は極小に抑えられていた。
それからローテーションで対戦相手を入れ替え、各々同じ相手と二回戦って摸擬戦を終える。
「いい準備運動になったな」
「なってないなの!! 準備運動の域超えてるなの!」
「ははは。僕と同じこと言ってる」
常識を知る仲間が増えて、ギルが嬉しそうにしていた。
「……むー。三人とも強かったなの。お兄ちゃん達はともかく、ギル兄は何というか……こう、私に近いのに全然違ったなの」
「経験の差だろうな。ギルの場合、相手の動きを見て、大体の攻撃を予測してる感じだな」
「イリヤはまだ、型にはまりすぎかな。技量はともかく、攻撃がパターン化してるから読まれやすくなってる」
「僕もアリサの意見に同意かな。動きはいいんだけど、素直すぎるっていうのかな、この場合」
「参考になるなの」
自分では意識してなかった事を教えられ、熱心に改善しようと頭の中でシミュレーションを行う。
そして摸擬戦を通して三人の戦い方を見たイリヤが、改めて自分に足りないものを自覚した。
それは戦闘スタイルだ。
イリヤ以外の三人は、魔法を使うことを前提とした動き故に、魔法を使わない摸擬戦だとスタイルが崩れていた。
だが、それでもイリヤ自身が三人に追いつけないのは、これだ! と言う妙な確信を持っていた。
だからこそ、その話題を切り出す。
今が絶好のタイミングだったから。
「お兄ちゃんたちは、どんな戦闘スタイルで戦うなの? 参考までに教えてほしいなの!」
いつにもまして真剣な表情をしていた。
「戦闘スタイルかー。例えばギルはどんな感じだ?」
ユリウスが何となくギルに話を振った。
「僕は魔法と剣を両立したい感じかな。魔法で牽制しつつ、近接を仕掛けるみたいなやつだよ。それに僕の紋章は、剣と盾に恩恵があるから攻防両立を目指すつもり。とは言っても、まだ型を決めてないから練習もできないんだけどね」
ギルが右手の甲を三人に見せた。
そこには、剣と盾がモチーフであろう物に、天使の翼があるものが刻印されていた。
「ギルにぃ、凄い!! なの。S級印なんて初めて見た!」
ギルが持つ紋章は、最上級に位置するもの。
それを生で見ることが出来て、イリヤが興奮気味だった。
「紋章とか初めて聞いたぞ」
「私も初めて見た!」
ユリウスとアリサの反応に、ギルとイリヤが驚いていた。
「おにいちゃん達、見たことなかったなの?」
「ああ。母さん達の手の甲にはなかっただろ」
「これは魔力を通さないと、浮かび上がらないものだよ」
「それじゃあ、見る機会なんてないよね~」
ギルの言葉を聞き、アリサが軽く返した。
「紋章ってどんな恩恵があるの?」
アリサが、ギルとイリヤの方を見て、珍しく真剣な顔で聞く。
ユリウスもアリサと同じことを聞こうとしたが、先に言われてしまい、言葉に詰まって黙ることを選択した。
「物にもよるけど大体は、魔法の補助的な効果が大きいな。例えば、僕のやつは、攻撃と防御系の魔法や武技に補正がかかるって感じかな。あとは、身体能力強化がおまけでついてるくらいかな。実戦で使ってないから、他にも能力がある可能性はあるね。そして全ての紋章に共通する能力として、霊石結晶獣にダメージを与えられるようになるって感じかな」
「それに紋章には、階級があるなの。CからS級まであって、階級が高いほど能力の恩恵が大きくなるなの。大雑把な感じで言ったけど、大体こんな感じなの」
「「なるほど。……わからん!」」
アリサとユリウスが完璧なタイミングで同じことを言う。
それを見たギルが「さすが」と小さな声で呆れと感嘆が混じった声で言った。
(霊石結晶獣……聞いたことがないな。俺らがいた時代には、少なくともそんな存在はいなかった)
(多分、どこかの時代を境に、急に現れた突然変異個体の何かじゃないかな。紋章は人に制限を付けるものだとすれば、辻褄が合う気がする)
(そうだな。紋章の能力強化が恐らく人間本来のスペックを発揮出来るようにする装置って可能性もある。研究が捗りそうだ)
(そうだね)
ユリウスとアリサが軽く目を合わせて、会話していた。
「二人とも急に黙ってどうしたの?」
ギルが不思議そうに言う。
「気にするな。考え事をしてただけだ」
「右に同じく」
この話題に入り、ギルとイリヤが一番気になっていたことを聞く。
「もしかして二人とも紋章を持ってないの?」
「持ってないよ。あれって勝手に刻印されるものなの?」
「違うなの。教会に行って、刻印の神具で刻んでもらうんだよ。紋章は体内の魔力を集中させて、魔力が流れやすく作り変えたものなの。だから、人によってその性能が変わるなの。才能みたいな物だと、考えればわかりやすいなの」
「才能、か」
ユリウスが小さく呟いた。
「そうそう言い忘れてたけど、紋章の形はある程度決まってるものだから、人と被ることもあるよ」
「へー」
情報過多で、ユリウスの頭が限界を迎え始めていた。
それに引き換え、アリサは余裕そうにしていた。
(お兄ちゃん、魔力の流れを変えるものってことは……)
(ああ、俺達には関係ないな。俺らの魔力回路はすでに最適化してあるから。干渉できないはずだ)
(それに宿す理が古い物だから、恐らく紋章を刻むことが出来ないよね)
(この紋章というものが、隷属みたいな魔法的なものじゃなくて、理的なものだとしたらな)
(まあ、神具って名前だけで、理の干渉だと予測できるけどね~)
また、二人だけの世界に入り、視線だけで会話していた。
「そういえば二人は、刻印の儀式をやってないんだよね? 紋章を知らなかったってことは」
「そうだな」
「じゃあ、今度やってきたら? 刻印は七歳でするのが、伝統だからね」
「お母さんに頼んでみる。私たちがスキル無しだったから色々忙しくなって、刻印するの忘れちゃってるかもだし」
「そうするといいよ」
そして「さて」と前置きするギル。
「結構、話がズレちゃったから、元の方針の戦闘スタイルに戻すけど、ユウたちはどんな感じなの?」
「確かに結構ズレたな。……じゃあ、俺から。俺は、本職が魔導士だから、魔法メインの戦闘スタイルだな。でも、魔法の威力高すぎるから、強敵以外は手加減と訓練を兼ねて剣士とか、まあ、いろんなスタイルでやってる。一番よく使うのが魔剣士が多いな」
「私もお兄ちゃんと同じだよ。違うところをあえて言うとしたら、私の場合、炎の魔法を使う関係で近接戦の方が有利だから、魔剣士スタイルにしてるって所かな」
「みんな、色々考えてるなの」
二人の戦闘スタイルを聞き、イリヤが更に迷い始めてしまう。
一人で俯き、色々想像を働かせ自分の世界に籠る。
「そう言えばギルは、まだ型が決まってないって言ってたな」
「うん、そうだね。紋章の兼ね合いもあって、決めかねてるんだ」
「なら、こんな感じでどうだ?」
ユリウスが、下手な絵を地面に描き始めた。
それを翻訳するように、アリサがグレードアップ版をその隣に描く。
地面に描かれたのは、右手に剣。
そして左手には魔力球を展開させるものだった。
「あとは、盾を常時装備して、状況に合わせて、防御から攻撃スタイルに変更するタンク兼アタッカーのポジションだな。攻撃モードは絵の通りだ」
「なるほど。それなら確かに、仲間に貢献しながら、単独とかになったら攻撃に転じられる」
結構、ぐっと来た感じに納得していた。
だが、それでも疑問に思った魔力球について、その問いをユリウスに投げかけるギル。
「この魔力球は何? これだけだと、普通に魔力弾にした方が強くないかな」
「いや、この魔力球は結構特殊な物なんだ。魔力球の中に、今習得してる魔法の魔法陣を全て展開する。そうすれば詠唱を短縮できるのは勿論のこと、発動までのほんの少しの間を開けずに撃てるからだ。さらに魔力球を展開することで、大気中にある魔力の残滓であるマナを常に吸収することで魔力消費を抑えることにもはずだ。マナの吸収は、中に展開してる魔法陣の副次効果だけどな」
「……なるほど」
思いもつかなかったことに、ギルが感嘆の声を漏らしながら、納得していた。
そして、イリヤが賞賛の声を漏らす。
「流石、おにいちゃんなの」
(もしかしたら、昨日言ってたのは本当なの?)
そんな問いが、イリヤの脳裏をよぎるが、その答えを与えるものはいなかった。
言い忘れたことを思い出し、ユリウスが口を開く。
「そういえば言い忘れてたが、魔力球を変形させる事で、攻防一体化できるはずだ。計算上だから何ともいえないが、魔力依存にならないよう魔法で強化すればそこそこいけるはずだ」
「なるほど……要するに切りかかってきた敵の攻撃を、盾に変形させた魔力球で防ぐことができて、逆に剣に変形させて二刀で攻撃することで、安定した戦闘ができるってこと?」
「そういうことだ。盾に関しては展開範囲によって強度が変わるから気を付けないといけないけどな」
話を聞いていたイリヤが、初めて聞く部分があり、それについてわからないと顔に描きながら、アリサの方を見た。
「しょうがないな~」と言ってアリサが魔力障壁についての説明を始める。
――純粋な魔力のみのシールドの場合、攻撃をガードする為に展開するが、その展開範囲が大きいほど魔力が薄くなるため耐久度が低下するが、逆に一転集中すれば耐久力が上昇する。
使用した魔力の量に比例してシールドの耐久度は変化するため、全魔力を防御に使ったフルガードは異常な耐久力を誇る。
そのため、魔力をたくさん使った広範囲ガードはあまり魔力を使ってない一点集中のガードよりも耐久力は高くなる。
その逆も然りだ。
その説明を聞くとイリヤが「私もギルのスタイルでやりたい」と言い出した。
だが、ユリウスが即却下した。
「おにいちゃん、なんでダメなの?」
「まだ、紋章がないからだな。まあ、それをなしにしても、魔力が多くないと、この戦い方は出来ないからだ」
「魔法をたくさん覚えないといけないってのもあるけど、やっぱり魔力障壁だね~。あれは、完全に魔力依存だから、ポンポン割られちゃうと魔力消費量が多すぎて、すぐに魔力が尽きちゃうから。もし、やるなら戦闘経験を積んで、駆け引きが出来るようになってからやるといいよ」
二人の言葉にイリヤが不服そうにしていた。
だが、イリヤの場合、仕方なかった。
彼女の魔力量は確かに常人よりは多い。
だが、魔力消費量を抑えることが出来ず、運用効率が悪いからだ。
そしてまだ、魔法をたくさん覚えていないから、魔法の不規則的な攻撃というアドバンテージが作れない。
ユリウスとアリサの二人は、それを考慮したうえで、話していた。
その代案ももちろん考えてある二人。
「今のイリヤなら付与を駆使して戦う方があってると思うぞ」
「なんで付与なの? だってあれは、武器職人たちが自分で作った武器に付与するものだから、戦闘中だと使えないの」
「うーん、それは偏見かな。付与はかなり使い勝手いいものだよ。私も実際に、使ったりしてるよ」
三人の会話を聞いていたギルが、なるほどと言いたげな表情をしていた。
ユリウスとアリサが、言いたいことを察したようだ。
「付与は戦闘前に付与するものだが、戦闘中に使うことでその場の状況に応じて変更できるからわりと使いやすいぞ」
「それに魔力が少ない間は、その方が魔力切れの心配がないし、付与すれば一定時間の間、付与は続くから、その間は他のことに魔力をまわすことができるしな。魔力量が今よりももっと多くなればギルのスタイルにするのもいいと思うよ。だから今は我慢して」
「なるほどなの。たしかに、今の私に長時間魔力を消費し続けることはできないなの……なら、そのスタイルで試してみるの」
二人の理由を聞き、イリヤが今自分に何が足りないのかに気づき、これからの訓練の方向性を見いだせた。
そのことに感謝していた。
そして代案を受け入れてくれた礼にユリウスがとある魔法を見せようとしていた。
「じゃあ、お前の理想スタイルを否定してしまったお詫びにいいものを見せてやる」
「いいもの?」
「――絶対強制付与フレイムボール」
強制付与の魔法を使い、ユリウスが魔法を剣に付与した。
そして、魔力を通して軽く剣を振るとフレイムボールが発動する。
「何これ!?」
「疑似的な魔剣を一時的にだけど作れる最高位の付与魔法だ。本来、付与出来ないものを強制的に付与するのがこの魔法の効果だ」
「普通の付与は属性や斬性強化しかできないけど、この魔法は魔法その物を武器に付与出来るの」
「そんなことが……」
イリヤが驚きのあまり、言葉を失う。
そんな中、なぜかギルは平然といしている。
まるで、見たことがあるかのように。
「私、付与を使いこなせるようにして、ギルのスタイルを目指すなの!!」
「気に入ってもらえて何よりだ」
とりあえず、代案は受け入れられたことに安堵するユリウス。
そして、少ししてからアリサが口を開いた。
「ところで二人は、何か魔法が使えるようになったの? 特にイリヤの魔法は見たことがないから見てみたいな~」
イリヤとギルは互いに顔を見合わせ、使ってみるか、という意思を確認して頷いた。
「じゃあ、私からやるなの。おねえちゃん、しっかり見ててね」
アリサは意識を集中させ、手を前に突き出した。
すると、魔方陣が展開されて、そこから氷の槍が現れた。
「――アイシクルピラー」
魔法が発動し、氷の槍が正面にあった木へと放たれた。
「おお!」
「綺麗だね」
ユリウスとアリサが素直に賞賛した。
特に魔法が様になっているのに驚いていた。
なぜなら、その魔法は魔力をあまり使いすぎておらず、無駄が無かったからだ。
それに続きギルが魔法を発動させた。
その魔法にも無駄が無かった。
「――ファイヤーボール」
その火球はユリウスに向けて放たれた。
「あぶねッッ!!」
とか言いつつ、最小の魔力を使って、平然に魔法を相殺した。
「おいギル、いきなりこっちに撃つな。まったく」
「難なく相殺してる時点でその言葉はふさわしくないよ。なぁイリヤ」
「間違いないなの」
「ちょっとは否定しようぜ!?」
フォローが入らない現状にユリウスが悲しみを覚える。
そして四人で顔を合わせると、笑いあった。
「それにしても、ギルにぃの魔法もすごいなの。魔法に無駄が無かったの」
「僕も結構しばかれたから、できるようになったんだよ。あはは」
ギルは何かを思い出したように、遠い目をしながら言った。
ユリウスたち三人は、そんな姿の彼を見て、大変だったんだな、と思い深くは考えないようにした。
「結構鍛えられてるな。特に魔法陣に無駄があるのに、それをカバーするように、他の魔法を組み合わせてるとことかな」
「やっぱり気づかれちゃってたか~」
ギルはユリウスへ簡単に返事をした。
一方、イリヤはユリウスとアリサに褒めて欲しそうに二人を眺めていた。
それに気付いたユリウスが、アリサの方に歩きだして頭を撫でた。
「アリサもすごかったぞ。まさかギルと同等くらいまで鍛えていたなんてな」
「ふふん! 母上に直々に教えてもらってるから当たり前なの。もっと強くなってお兄ちゃんとおねえちゃんを超えるなの!!」
「それは楽しみだな」
「その時を楽しみに待ってるよ~」
アリサは褒められたことが嬉しく胸を張っていた。
ギルは、アリサの説明を聞き、なぜそこまで鍛え上げれているのかという疑問が解け、一人でコクコクと頷き納得しているのだった。
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