狂った愛玩犬。
今日もあの犬は狂っている。
自分が強いかのように吠えている。
行き場がなく、しかし、閉じ込めておくわけにもいかないゆえに
野放しにされている野犬のようなものなのに。
野犬もどきは群れをつくり
この世に敵がいないかのようにけたたましく吠える。
しかし、最終的には処分されてしまうのだ。
環境の厳しさに実力では、一匹では生きていけない。
強く見せたい。だから、群れる。
獰猛な土佐犬でもない
甘やかされた愛玩犬は
吠えるしか能がない。
教えられたとおりの芸もできずに
自分勝手に吠えて
さも優秀だと言わんばかりにふるまうが
主人はほめてくれない。
だから自身でがなり立てる。
飼い主の強さを自分の強さと勘違いした愛玩犬は
自身の実力を知らずにふるまう。
勇猛と無知の境界線を理解できていない。
理解しようともしない。
あの犬は政治家にでもなったつもりだろうか。
青い首輪をつければ安心だとでもいうかのように吠えている。
野犬にも慣れない中途半端な犬だ。
現代の狂犬病。
注射を打っても、狂ったように吠えて
どこへ行こうとするのだろうか。
保健所で処分された犬の行く末は
誰も知らない。
そして、誰の記憶にも残らない。
サヨナラの声も
タスケテの声も
きっと聞こえなくなるだろう。
狂った遠吠えは
だれもまともに聴きはしない。
愛情を失った飼い主なら、なおさらだ。
最初から愛情もない飼い主なら、なおさらだ。