謁見
ダイモンド子爵の本拠地ギネタール城の
城内は戦争の準備で慌ただしさで満ちていた。
昼過ぎにラックは
領主フィガロからの呼び出しがあり
城の大広間でフィガロと謁見した。
広間の奥で
フィガロが豪華な椅子に座っていた。
周囲にはフィガロの家臣団が居並んでいる。
「おぬしがホサ村の英雄ラックか。」
フィガロは厳つい顔で眉間に皺を寄せ
鋭い眼差しでラックを見据えた。
ラックは片膝をついて礼の姿勢を取った。
「は。お目にかかれて光栄です。
ホサ村の猟師ミングの息子ラックと申します。」
「おぬしの両親や村の者は気の毒やったな。」
「もったいなきお言葉。痛み入ります。」
「おぬし、
これからの身の振り方に当てはあるのか?」
「はい。帝都を拠点に
冒険者になりたいと子供のころから夢見ておりました。
出来れば今もそうしたいと思っております。」
「冒険者か。強ければ儲けられる職業やな。
しかしのぉ、帝都までの旅費は結構な金額になるやろ。
おぬし、金は持っとるか?」
「いいえ。正直に言わせて頂けば
無一文にございます。」
「わはははは。無一文か!
それでは帝都にいけんのぉ。
いや、笑ってすまなんだ。
おぬしが無一文になったのは領主であるわしが
おぬしの村を守れなかった責任でもある。
旅費はわしが出してやってもよい。」
「本当ですか!ありがたき幸せにございます。」
「しかし、実のところ、わしも金に余裕が無い。
おぬしが敵兵を殲滅し
敵の中隊長を捕虜にして
情報源まで提供してくれたのに
功に報えないとはわしはとても心苦しい。
ほんまに小領主な自分が恥ずかしい。
だから、戦争が終わったら
旅費と小遣いを用意してやろう。」
「旅費が頂けるのならばいくらでも待ちましょう。」
「そうか。しかしのぉ。
この戦いに負けたら
わしら死んでまうから、約束を守れない事もありうる。
わしは絶対に、絶対に約束を守る男や。
すごくすごく約束を守りたい!!!」
「・・・すいません。
大変失礼かと思うのですが
ご領主さまがわたしに
何を伝えたいのかが
まったく伝わってきていません。
馬鹿な私めに平たく伝えて頂けないでしょうか。」
「うむ。わしが言いたいのは
わしが約束を守るためにも、おぬしにも
一緒にこの領地を守ってほしいという話や!
どや?」
「あ。はい。別にいいですよ。」
「おお!ありがたい!感謝!感謝!
おぬしの武勇にわしは全力で頼りたい。
それでな。
おぬしに是非、手合わせをして欲しい相手がおる。」
「わたしと?」
「おっと!誤解せんでもらいたい。
おぬしの実力を疑ってるわけちゃうで。
ほんまやで。
でも、おぬしがどのくらい強いのかを
わしは知らん。
歴戦の兵士並みに強いのか・・・
それとも魔族なみに強いのか・・・
それによって作戦計画や配置も色々と変わるやろ。」
フィガロはニヤリとして、ラックに鋭い眼光を向けた。
はじめまして。
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