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密談

 次の日、ラックとメンデルは


メンデルの執務室で密談した。


デスト家が北方のデルミック家旧領を


攻めるのはまだまだ先の話という。



 メンデルにラックは


デルミック旧領の


偵察をする許可を頂けるよう申し出た。



 メンデルは少し悩んだ様子を見せたが


メンデルはラックの偵察行動を許可する。



 ラックはホッとした。


「俺には知識が不足しています。


偵察に関して何か注意点はありますか? 」



 ラックの問いにメンデルは口を開いた。


「北方は獣人が支配している国ばかりだ。


人間は逆に目立ってしまうだろう。


冒険者なら人間であっても


敵国でも入国は容易であるが


怪しげな行動をすれば即捕縛される。」



 ラックは少し思案した。


「獣人を雇って偵察任務をさせることは


できるのでしょうか。」



 メンデルは首を横に振った。


「それは難しいだろうな。


人間は獣人を差別して虐げてきた歴史がある。


獣人が偵察任務を引き受けたとしても


逆に敵に内通されてしまう可能性は十分にある。」



 「じゃ、俺が行きます。」とラックは言った。



 メンデルは机に肩肘をついて手で額を覆った。


「密偵ならすでに複数送っている。


ラック君が行く必要はないと思うのだ。


ラック君が敵に捕まりでもしたら


デスト家は窮地に立たされてしまう。」



 ラックはメンデルに笑顔を向けた。


「俺は敵に捕縛されやしませんよ。


密偵を送っているのでしたら


北方の武力制圧など


可能性は皆無だとご存知のはずです。」



 メンデルは怪訝けげんな顔をした。


「ん。


それは具体的にどういう意味だね。」



 ラックは口を開いた。


「北は悪魔が味方しているってことです。」



 メンデルは驚いた顔をした。


「!? 悪魔・・・そうか、悪魔か。


ラック君がどこで


そのような情報を得たのかが気になるが


北方連合国の盟主ウィカラ王家は


神出鬼没な無敵の軍隊を保有している。


悪魔の軍勢だと言われたら納得がいく。


しかし、こちらも異界の戦力で戦う。


戦いで勝つ可能性が


ゼロということはないだろう。」



 ラックは、こめかみを指でかいた。


「いや、残念ながらゼロですよ。


敵に味方しているのは


悪魔は悪魔でも魔王ですからね。」



 メンデルは椅子から立ち上がった。


「何!? 魔王だと!?


ラック君、それは本当の話なのかね? 」



 ラックはうなずいた。


「それに関しては有力な情報は得ています。」



 ラックの目を見つめてから


メンデルは自身の眉間を指でつまんだ。


「うむ。ラック君が嘘をついてるとも思えない。


魔王相手なら人類存亡の戦いになるではないか。


北方連合国の首領が魔王だという証拠が掴めたら


北を攻める大義名分が立つが・・・


人類が全て北の敵に回っても勝てる見込みがあるか。


ラック君はどう思う。」



 ラックは微笑んだ。


「そりゃ人類は滅亡してしまうでしょうね。」



 メンデルは両手で頭を覆った。


「人類が滅亡・・・


では、ラック君は


なぜに偵察に行くのだね。」



 ラックは首をひねった。


「それは俺が魔王に勝てるからですかね。


俺が魔王の動きを封じれば、


デスト本家がデルミック旧領を


奪取するお膳立てができる。


偵察というのは魔王がどういう意図で


北方の国々を支配しているのか知りたいんです。


それ次第では交渉の余地が


あるかもしれませんしね。」



 メンデルは驚愕きょうがくした。


「ラック君。


君は魔王に勝てる力を持っているというのか!?


君にはどんな秘密が隠されているのか知りたい。


しかし、それを話してくれはしないのだろうね。」



 ラックはフッと笑った。


「別に話してもいいですが


それを知ったらデスト本家は


いずれ困ったことになりかねませんよ。


目的はデルミック家の旧領を取り返すこと。


そのために俺が動くというだけです。


俺を信じて任せてくれないと


デスト本家は遅かれ早かれ


滅亡してしまうでしょうね。」



 メンデルは目を丸くした。


「ラック君、君には何の得もないのに


なぜそこまでしてくれようとするのだね。」



 ラックは不思議そうな顔をした。


「え。家族が困ってたら助けるのは


家族の一員として普通の事でしょ。


損得だけで俺が動くとお思いですか? 」



 ラックにメンデルは真剣な目を向けた。


「家族か。そう君は思ってくれているのだね。


ラック君、わしは野暮な事を言ったな。


魔王などと、にわかに信じがたい話だが


君を信頼して任せるとしよう。


これは妻から君に渡すよう言われた物だ。」


メンデルは机の引き出しを開けると


金の腕輪、金の首飾り、金の冠を取り出して


机の上に並べていく。


それらの装飾品には


赤い魔力結晶が取り付けられていた。



 ラックは机の上の3つの装飾品を手に持った。


「ありがとうございます。


この宝具がどれほどの役に立つかは


まだ、わかりませんが


デスト本家にお役立ちに


なるようにはしてみせましょう。」



 メンデルはうなずいた。


「何かあれば逐一、報告してくれ。


わしに何かできることがあれば言ってほしい。」



 ラックは口を開いた。


「はい。報告はします。


俺は武力においては自信があるのですが


その他のことは無力かもしれません。


メンデル閣下にはその他の事を


お頼み申しあげます。


あと、俺の留守中、マリアのことも


よろしくおねがいします。」



 メンデルは「わかった。


マリアさんのこと、帝都内のことは


わしに任せてもらおう。」と言った。




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