魔王
デスト本家邸宅での晩餐を終えて
ラックとマリアは客室に案内された。
ラックはジャケットを脱いで
ジャケットをハンガーにかけると
天蓋付きのダブルベットに腰を掛けた。
デスト本家のメイドに案内されて
客室内に設置されているバスルームに
マリアは入っていった。
デスト本家の戦いにラックが参加することに
マリアは納得してはいないようであった。
ラックは足を組んだ。
(さて、どうしたものか。
帝国がどうなろうと興味はないが
帝都の暮らしは気に入っている。
デスト本家は中々面白い。
家族といえるデスト本家の悲願は叶えたいな。
とりあえず北方連合国の情報が欲しい。
クラウス達が味方する東の覇王が
北方連合国には一度も勝てないとは。
そんな強さは異常ではないか。
まさか魔王が背後にいるのだろうか。
ちょっと確かめるか。)
ラックは左目からエービンスを召喚し
エービンスを受話器に变化させた。
ラックは受話器のボタンに親指で触れる。
『9624』とラックは
数字の書かれたボタンを押した。
ラックは受話器に耳を当てた。
受話器の向こうから野太い声がした。
「もしもし、オリシスです。」
ラックは受話器に口を向ける。
「オレオレ、アッシュ。」
受話器の向こうの『黒』の魔王は
少しの沈黙の後に口を開いた。
「アッシュ陛下、お久しゅうございます。
部下から復活なされたと報告を受けております。
まずはご復活おめでとうと言わせてください。」
ラックは受話器を耳に当てたままで
ベットに寝転んだ。
「堅苦しい挨拶はいらん。
聞きたいことがあるんだが今いいか。」
「はぁ。別に構いませんが。」
「悪いな。北の国々って強いらしいんだが。
なんで強いのかがわからん。
お前、何か知ってるか? 」
「・・・大陸北方は
『白』の魔王が支配してるからですよ。」
「マジで!? そっかぁ、マジかぁ。
今度、北方を攻める予定があるんだけれど
『白』が相手だと苦戦しちゃうなぁ。」
「ん。・・・そうでしょうか。」
「苦戦しちゃうよ。
人間の軍に従軍するつもりなんだよねぇ。
『白』を相手にしたら死人が出ちゃう。」
「人間の軍隊に従軍とはまた酔狂ですな。
しかし、戦争というものは
戦死者が出るのが普通ではないですか。」
「そんなん言われんでもわかってるわ!
それはわかってるんだけれど死なれると
俺が困る人間が何名かいるんだよ。」
「ほぉ~。人間の命を奪うのが仕事の陛下が
人間の命を大切に思うとはビックリしましたよ。
それなら陛下があらかじめ『白』を
単独で倒しておけばいいのではないでしょうか。」
「・・・・お前・・天才か。
チートキャラは先に消えてもらって
残った雑魚と戦争すればいいというのだな。
うむ。その意見、採用しようではないか。」
「え・・そんなんでいいんですか。」
「よい! そんな意見を俺は求めてた。
また相談に乗ってくれ。
直臣に俺は見捨てられて相談相手に困ってたんだ。
オリシス、俺のアドバイザーとして
これからもよろしくな。」
「まぁ、相談くらいならいいですけれど
それならたまには余の相談にも乗ってくださいね。」
「いいよ。
これからは報告、連絡、相談を
密にしていこう。
いつでも気軽に俺に念話してきて。」
「あははは! それは心強いですな。」
「じゃ、そろそろ奥さんが来そうだから
念話を切るね。ありがとう。またな。」
「ほう、陛下も奥方を娶られたとは
お世継ぎが楽しみでございますなぁ。」
「まだ早いって、子供は沢山欲しいけどね。
でも、子育てって奥さんがナーバスになりがちって
よく聞くじゃん。それだけが心配。」
「ククク・・・あはははは!
奥方を気遣う気持ちがあるなら
きっと、子育ても乗り越えられるでしょう。
陛下は随分と人間らしいことを
言われるようになられたのですね。」
「バカにしてる? 」
「いいえ、その逆です。
余は陛下への忠誠を深めました。」
「え!? そう。それならいいんだけど。」
「では、近々、お会いしとうございます。」
「うん。予定が合えば一緒に食事でもしよう。」
「是非。では、これにて、おやすみなさいませ。」
「おやすみぃ~。」
ラックは受話器を左目に吸収した。
ラックはベットの上で上体を
起こし胡座をかいた。
(『黒』は俺の味方だ。
魔界の仲間は大切にしていこう。
しかし、『白』は俺の敵になるのかな。
白の魔王、地獄の支配者『フェル』。)
はじめまして。
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