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フィリアス

 ラックは邸宅の庭に出ようと


玄関を出ようと歩いていた。



 邸宅の玄関で背の高い青年が立っていた。



 その青年は将校らしき軍服を着ていた。


ラックは青年の前で足を止めて会釈すると


青年の横を通りすぎようとした。



 青年は優しい笑顔をラックに向けた。


「ラックさん、ロンバートに


稽古をつけてくださるそうですね。」



 ラックは再び足を止めて青年の顔を見上げた。


「・・・はい。


ロンバート様に無理やり試合を


申し込まれてしまい仕方なくですが


試合を受ける流れになりました。」



 青年はクスっと笑ってうなずいた。


「そうですか。


挨拶が遅れてしまいましたね。


私はデスト家次男フィリアスです。」



 ラックは姿勢を正した。


「これは失礼しました。


俺はデスト分家のラックです。」



 フィリアスは見るからに


優しそうな青年であった。


「私と君は親戚同士ではないですか。


堅苦しくしないでください。


気軽に話して頂いて構いません。


私がロンバートの所まで案内しましょう。」


そう言うとフィリアスは


玄関の扉を開けて外に出て


ラックに振り返った。



 ラックは玄関の外に出た。


(爽やかなひとだなぁ。)とラックは思った。


「では、フィリアス様についていきます。」



 フィリアスは邸宅の西に歩き出した。


ラックはフィリアスに肩を並べて歩く。



 フィリアスは歩きながら


「ロンバートは士官学校では主席でしてね。


ライバルもおらず井の中の蛙なのです。」



 ラックは戸惑った顔をした。


「ロンバート様は優秀なのですね。


なら、なんで俺なんかにかまってくるのかが


理解ができません。」



 ラックにフィリアスは微笑みを向けた。


「ラックさんが本物の戦場で


大活躍したからですよ。


ロンバートは自分が井の中の蛙だと


ラックさんに気付かされてしまった。


ラックさんが他家の将なら良かったのですが


分家で、しかも同年代となれば


意識せざるおえないのはわかるでしょう。」



 ラックはつまらなそうな顔をした。


「俺は、もう、兵士ではないです。


ロンバート様は士官候補ならば


個人の武勇などは意識せずとも


戦略や戦術、用兵など


もっと広い視野を鍛えれば良いこと。


個の強さなどは強い兵を


雇えば済む話ではないでしょうか。」



 フィリアスは納得した表情を浮かべた。


「それはそうかもしれません。


しかし、ロンバートは負けず嫌いなので


自分の今の実力をはかりたいのでしょう。


一人で一軍を殲滅させられる武力が


本当に存在していたら


戦略も戦術も小手先の浅知恵に


思えてしまうものです。


そのような武力を実際に知らないと


自分の努力する方向性を


見失いそうになるのも理解できませんか。」



 ラックは邪魔くさそうな顔をした。


「いやいや、戦争は個人プレーではないでしょ。


俺もギネタールでは一つの駒に過ぎなかった。


命令どおりに求められた戦果を出しただけです。


俺を作戦通りに動かすために


フィガロ様は俺に土下座までしたんですよ。


俺はそんなフィガロ様を尊敬してますし


英雄だとも思ってます。」



 フィリアスは驚いた表情をした。


「本当ですか!?


あの傲慢ごうまんと噂されるフィガロ殿が土下座。


それが本当ならフィガロ殿は


今後、大躍進だいやくしんを遂げる可能性があります。」


フィリアスは真剣な顔をして何かを思案した。



 ラックは首を横に振った。


「いや、大躍進はないでしょうね。」



 ラックにフィリアスは真剣な表情なままで


「どうしてそう思うのですか? 」と訊いた。



 ラックは残念そうな表情をした。


「フィガロ様は義理人情を否定していますが


あの人は義理や人情に流されやすい。


上辺の皮一枚で必死にそれを隠しているんです。


飛躍の機会が来た時にフィガロ様は


絶対に選択を間違ってしまうはずです。


フィガロ様は合理主義に憧れてはいますが


悲しきかな村社会で生きてきた田舎者なのです。」



 フィリアスは難しい顔をした。


「ラックさんには何故か帝王の器を感じます。


その年で随分と達観した人物評をされるのですね。」


フィリアスは指を指した。


「ロンバートはあの広場にいます。


ロンバートにはラックさんは


どう対処をするおつもりですか? 」



 ラックは苦笑いした。


「まずは実力を見てからです。


ブリジット様のご子息なら何か隠し玉を


持っているのではないかと期待しています。」



 フィリアスは驚愕した。


「ラックさん、


あなたは本当に一体何者なのですか? 」



 フィリアスにラックは笑顔を向けた。


「ギネタール領ホサ村の猟師の息子です。


いまは駆け出しのFランク冒険者。


これからもそのような人間である予定ですよ。」









はじめまして。


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