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サイラス

 冒険者ギルドの食堂で


パーティーメンバーとの祝勝会を終えると


天馬ペガサスに乗って急いで帰宅した。



 ラックは自宅の玄関の扉を開けると


リビングに向かって小走りした。


「ただいま。準備はどうだい? 」



 リビングのソファーにマリアは座っていた。


「おかえりなさい。


デスト本家に向かう準備はほぼ整ってるわよ。


ご進物もフェノと一緒に買ってきてある。


あとはラックが着替えたらすぐに出発できるよ。」



 マリアはブルーのドレスに身を包んでいた。


身に着けた装飾品も華美過ぎず


センスあるデザインであった。



 ラックはシャツのボタンを外す。


「マリア、とっても綺麗だよ。」



 マリアは照れながら


「ありがと。


大貴族様に会うなんて凄く緊張するわ。」



 ラックは「それは俺もさ。」と言った。


ラックは近くに控えているフェノに目を向けた。


「フェノさん。


昨日は寸法を測ってくれてサンキュ。


衣装は用意してくれているんだよね。」



 フェノは台に置いてある箱を持つと


「ここにご用意しております。」と言って


ラックに箱を手渡した。



 ラックは箱を開けた。


「うん。いい生地の背広だね。


いますぐに着替えるよ。」


フェノが用意した服にラックは着替えた。


「馬車が迎えに来るんだよね? 」



 フェノは頷いた。


「朝にデスト本家にご連絡いたしました。


16時に迎えが来る手筈になっています。」



 リビングにある大きな振り子時計に


ラックは視線を向けた。


「うん。まだ15時だ。


なんとか余裕があるな。」



 フェノは台から箱を持ってきて


地面に置いて開ける。


「こちらに靴を置いておきます。」


フェノはピカピカとした新品の革靴を


ラックの足元に置いた。



 ラックは靴を履き替える。


「新品だから皮が固いね。


靴擦れしそうだ。ははは。」と笑った。



 着替えたラックは


リビングの姿見鏡の前に立った。


(昔、暮らした世界の成人式を思い出すなぁ。)


フェノにラックは目を向けた。


「サイズもピッタリだ。」



 マリアは立ち上がってラックに近づく。


「もう! 服も靴も私が選んだのよ。


そして、このネクタイもね。」


ラックの首に手を回して


マリアは手に持ったネクタイを結んで締める。



 ラックは首が締まって「うっ」と唸った。


「そっか。素敵なデザインだ。


やっぱり服装は女性が選んだ方ものの方が


センスがあっていいよね。」



 ラックの全身をマリアはまじまじ見た。


「そうかしら。


ラック、正装すると大人っぽくてカッコいいね。」



 ラックは頭をほほを指でかいた。


「こういう格好には慣れてなくて


なんだか落ち着かないけどね。」



 ラックとマリアは並んでソファーに腰かけた。



 正門の呼び鈴が鳴った。


フェノが玄関を出て正門に向かっていく。



 しばらくしてフェノが戻ってきた。


「ご主人様、奥様、馬車が到着いたしました。」



 ラックとマリアはソファーから立ち上がると


お互いの顔を見つめた。



 マリアに「当たって砕けろだ。」と


ラックは言った。



 マリアは「案ずるより


産むが易しよね。」と返事した。



 ラックとマリアは


デスト本家の用意した馬車に乗り込んだ。



 正門でフェノがラックとマリアにお辞儀して


「ご主人様、


奥様いってらっしゃいませ。」と言った。



 ラックとマリアは馬車の窓から


フェノに手を振った。



 馬車が出発した。



 ラックは乗車席のソファーの


柔らかさを手で押して確かめた。


「いい弾力だ。


これなら地面からの振動にも耐えれそうだ。」



 マリアは思い出したような顔をした。


「ラックが使ってた銀の馬車。


あの馬車に乗ってみたかったなぁ。」



 ラックは困った顔をした。


「そうだったの?


それなら言ってくれたらよかったのに。


また借りる事があったら


遠出したいね。ピクニックとかさ。」



 マリアは笑顔になった。


「いいね! ピクニック。


普通の馬車でいいから行こうよ。」



 ラックは頷いた。


「近々、行こうよ。


まだ春だし、風が心地いいと思うよ。」



 馬車は帝国本城『ブリエアンタレス城』の


方向に進んでいく。


ブリエアンタレス城の


東のあたりに小城こじろのような建物があった。


小城の広い敷地は頑丈そうな壁で覆われている。


小城の正面に馬車が停止すると


警備兵が正門を開いた。



 ラックは馬車の窓から


デスト本家の敷地内を見渡した。


「武骨なお屋敷だなぁ。


名門の宰相って聞いてたから


もっと華やいだ雰囲気を想像していたのに。」



 ラックの意見にマリアも同意した。


「そうね。


壁も建物も戦争を意識してる感じがする。」



 馬車は玄関の階段前で停止した。


御者が馬車から降りて馬車の扉を開けた。



 ラックが先に馬車から降りて


マリアの手をとった。


長くて幅の広いスカートと


高いヒールで歩きづらそうなマリアを


ラックは両手で支えて


馬車からマリアが降りるのをサポートした。



 正面玄関の大きな扉が開いた。


大勢のメイドたちが出迎えに出てきた。


白髪の紳士がうやうやしく頭を下げている。


おそらくデスト本家の執事だと思われた。



 一番あとに貴族らしき精悍な青年が


階段をゆっくりと降りてきた。


「よくぞ、おいでくださいました。


わたしはデスト家の嫡男ちゃくなんサイラスです。


ギネタールの金色の英雄にお会いできて


とても光栄に存じます。」


ラックにサイラスはそう言って右手を出した。



 サイラスにラックは会釈すると


「こちらこそお会いできて光栄です。」


と挨拶して右手でサイラスと握手した。



 サイラスはマリアに目を向けた。


「貴方がマーチス殿の御息女ですか。


マーチス殿はご健勝ですかな。」



 マリアは緊張した顔を浮かべた。


「はい。わたくしはマリアといいます。


父マーチスは大変、元気にしております。」



 マリアにサイラスは笑顔を向けた。


「それはよかった。


さぁ、わたしが屋敷を案内致しますので


お二人とも、どうぞ、こちらへ。」と言って


サイラスは階段を上っていく。



 サイラスの態度にラックは好印象を持った。







はじめまして。


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