表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/81

夕食

 フェノとともにラックは自宅の屋敷に入った。


屋敷内の内装の豪華さにラックは困惑した。


「これは典型的な貴族のお屋敷だな。」



 フェノに案内されて食卓へ向かった。


フェノはリビングには向かわずに


台所に近くの狭い空間に


設置された2名用のテーブルに案内した。



 マリアが台所からエプロンを外しながら


早歩きでラックに歩み寄った。


「もう。ラック、遅かったじゃない。」



 ラックは後頭部を軽く手でかきながら


「マリア、ごめん。


今帰った。ただいま。」と言った。



 マリアは顔を赤らめてモジモジしている。


「おかえり。ごはん、用意してるからね。」



 ラックは気付いた。


「マリア、随分、綺麗じゃないか。


その髪型も服装もとても上品で似合っているよ。」



 マリアは髪を編み上げてアップしており


上品なシャツに紺のプリーツスカート。


編み上げサンダルを履いていた。



 マリアは嬉しそうな顔をした。


「そう? 変じゃないかな。」



 マリアにラックは笑顔を向けた。


「素敵なファッションだと思うよ。


とても可愛い。


もしも、いまお昼だったら


一緒に街にお出かけして


冒険者仲間たちにマリアを


見せびらかして自慢したいよ。」



 ラックから目を背けて


マリアは持っているエプロンを


いじりながら照れている。


「待ってて食事の準備をしてくるね。」



 フェノが引いた椅子にラックは腰かけた。


「ありがとう。もう、お腹がぺこぺこなんだ。」



 フェノは黙ったまま台所に歩いて行った。



 しばらくしてマリアとフェノが戻ってきた。


フェノはワゴンを押していた。



 マリアはワゴンの上の


料理が盛り付けられた皿を手に取った。


「お待たせ。


実はわたしもお腹がペコペコなの。」



 ラックは目を丸くした。


「マリア、まさか、まだ夕食を


済ませてなかったのかい? 」



 マリアはうなずいた。


「だって、一人で食べたって


楽しくないんだもん。」



 ラックは申し訳なさそうな顔をした。


「マリア、ごめんな。」



 マリアは料理をテーブルの上に


乗せながら顔を横に振った。


「ラックは仕事だもの。


それは仕方ないでしょ。」


料理を乗せ終わるとマリアは席に座った。



 テーブルにはパンとサラダと


トマトシチューが並んでいた。



 ラックはシチューを見た。


「マリアがシチューを作ったの? 」



 マリアは「うん。」と言った。


「フェノに教えてもらいながらだけどね。


フェノは教えるのが


上手だからきっと美味しいと思う。」



 ラックはシチューの皿を


手前に引き寄せて匂いを嗅いだ。


「すごくいい香りがする。


手が込んでいるのが伝わってくるよ。」



 ラックとマリアは食前の神への御祈りをした。



 ラックは「いただきます。」と言うと


早速、スプーンで


トマトシチューをすくって一口食べてみた。



 マリアは不安そうな表情を浮かべながら


「どう? 美味しい? 」とラックに訊いた。



 ラックは驚いた表情をした。


「うまい! トマトの旨味、


コクの深み、スパイスの効き、


塩加減、そのすべてが絶妙ですごく美味しい。


おかわりってあるのかい? 」



 マリアの表情がパァ~っと明るくなった。


「もちろん! たくさん作ったから


どんどんおかわりしてね。」



 マリアにラックはここ数日の事を話した。



 マリアは表情を目まぐるしく変えながら


ラックの話に興味津々な様子で耳をかたむけていた。



 マリアは心配そうな顔をした。


「それで仲間の皆さんは大丈夫なの? 」



 ラックは頷いた。


「肉体にはまったく問題はないからね。


精神的ダメージは少し時間が


かかるかもしれないけれど回復するよ。」



 マリアは安心した様子を見せた。


「よかった。


仲間の皆さんが元気になったら


ここに遊びにきてもらってよ。


旦那様がお世話になったんだもん。


キチンとお礼がしたいわ。」



 ラックは複雑な表情をした。


「う、うん。機会があればね。」



 マリアは不審な顔をした。


「どうしたの? 何か心配なの? 」



 ラックは口を開いた。


「こんなお屋敷が俺の自宅だなんて知ったら


仲間たちがドン引きしてしまうかなって。」



 マリアは「アハハ! 」と笑った。


「きっとそんな事ないよ。


だって仲間の人たちって


上位の冒険者なんでしょ。


収入はきっと上流階級並みのはずよ。


ここよりも大きいお屋敷に住んでいたりして。」



 ラックは「そうかもな。」と頷いた。


「じゃあ、連れてくるか。


今回のクエストでパーティーは解散だしさ。」



 マリアは首をかしげた。


「どうして?


そんなに優秀なメンバーなら


これからもパーティーを続けたらいいのに。」



 ラックは首を横に振った。


「そういう約束で組んだパーティーなんだ。


それに俺の都合もあるから遠慮したいんだ。」



 マリアの疑問は深まった。


「都合ってなに? 」



 ラックは口を開いた。


「俺は危険な事はなるべく避けたいし


遠出もしたくない。


マリアを心配させたくないし


マリアに寂しい思いをさせたくないってこと。


今回、危険度の低い迷宮ダンジョン


見つけたからね。


ソロでも一定の収入の目途が立ったんだ。


それに天馬ペガサスで行けば日帰りできる。


パーティーだと、移動に何日もかかるからね。」



 マリアは目を潤ませた。


「へぇ~。わたしのことも


ちゃんと考えてくれてるんだ。」



 ラックは肩肘をついて頭をもたげた。


「当たり前だろ。


政略結婚っぽい形だったけれど


れっきとした恋愛結婚だったんだからね。


平穏に2人で生きていくために


帝都にまで来たんだ。


マリアと一生共に暮らしていきたいんだ。」



 マリアは目頭の涙をハンカチでふいた。


「わたしも一緒の気持ちなんだからね。」



 ラックは「そっか、安心した。」と言った。


「そうそう、フェノさんには、うちで正式に


働いてもらうことにしたからね。」



 マリアは「本当?! やったー! 」と叫んで


フェノの両手を握りしめた。



 フェノは戸惑いながら


「先ほど、ご主人様からお伝え頂きました。」



 ラックは笑顔を2人に向けた。


「お給金については交渉するけれど


それ以外の事はマリアとフェノで相談して決めてね。


この家政の主はマリアなんだからね。」



 マリアは立ち上がるとラックに抱き着いた。


「ありがとうラック! 嬉しい! 」



 フェノは深くお辞儀して


「ご主人様、奥様ありがとうございます。


これから誠心誠意励みますので


どうぞよろしくお願いいたします。」と礼を述べた。









はじめまして。


Cookieです。


もしも続きを読みたいを思って頂けたのなら


ブックマークや評価をして頂けると励みになります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ