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助命

 「あんたの命も、もう厳しそうだな。」


ラックは指揮官に声をかけて


這いつくばる指揮官の近くに腰を下ろした。



 「少年。何とか命を助けてはくれまいか。」


指揮官はラックに顔を向けて


涙を浮かべて助命を懇願する。



 「バケモノ扱いした相手に


命乞いするなんてどうかしてるね。


答えはノーだ。


助けるなんて無理。


あんたは命乞いをする間も与えずに


有無を言わさず村人たちを殺したんだろ。


民間人を殺す軍人なんて生きる価値もない。


あんた個人が村の人を手にかけて


殺したってわけじゃないかもしれない。


でも、殺す命令を出した責任者が


責任を取らないってのも


胸糞悪い話だと思わないか?」



「うぐッ。


もし、私が一人の民間人であったなら


そんな立場であればその理屈に返す言葉もない。


しかし、戦争ってのはそもそも理不尽なものだ。


確かに言い訳にしか聞こえないかもしれん。


キチンと謝罪をしてほしいなら


ちゃんとした形で謝罪をする。


死んで責任を取るよりも


生きて責任を取らせる方が


色々と有益だって事もあるだろう。」



「言いたいことは理解はできる。」



「私は中隊長だ。私の持つ情報には価値がある。


私の情報を上手く使えば


殺されるはずの命を助ける事だって


出来るかもしれんぞ。


君がただの魔物だというなら


それまでの話だが


君は人間の優しい心も持っているのだろ?」



「ふ~ん。


それらしく聞こえるが


あんたらがやった事は許されねぇんだよ。


俺はバケモノじみた所があったかもしれない。


でもな、憎いはずの兵士たちを殺しても


俺は全然、スッキリとはしなかった。


では、あんたたちはどうだ?


あんたらの殺し方は殺人に快楽を


感じているとしか思えなかった。


バケモノはあんたたちの方なんだよ。


いい加減、気付けよ!」



 指揮官は言い返せず


脇腹を押さえて苦しみをアピールし


弱者である立場を黙って主張した。



 「おいおい。


バケモノ呼ばわりした相手に


情で訴えかけるのかよ。


俺は一人の村民で


家族も生活も奪われた被害者だ。


俺の立場から言えば


あんたには理不尽に


死んでもらう選択しかできない。


この話はここまでだ。」


ラックは立ち上がるとバトルアックスを


指揮官の首の上で振り上げた。



 「待って!!!」


大声で制止する若い女性の声が聞こえた。



 ラックにはその声が誰の声かがすぐにわかった。


ラックはバトルアックスを


振り下ろすのをやめると


バトルアックスの穂先を地面に突き立てて手を放す。



 馬に乗った金髪の若い女性騎士が


ラックと指揮官のいる場所に駆け寄って馬を止めた。



 「ラック!!!


一体ここで何があったの?」



 「ああ。マリアか。


村が侵略軍に襲われた。


俺は山に採取に行ってて難を逃れた。


村を襲ったこいつらを


こいつらをこの戦斧バトルアックス


ぶっ倒してやった。」



 マリアはこのあたりの地域の代官の娘で


ラックとは同い年で幼い頃から仲が良い友人である。



 「なんてこと!?


ラックが全員倒したの?


そんなの信じられない。」


マリアは目を丸くした。



 ラックは残念そうに指揮官に目を向けた。


「あんた、運がいいな。


死ななくて済みそうだぞ。」



 「本当か。助けてくれるのか?」


指揮官はラックに向かって


感謝の笑みを浮かべた。



 ラックはマリアの前で


無抵抗の人間を殺す姿を見せる事を避けた。


それは本当のラックが


マリアに残忍である印象を持たれたくないと


強く思っている事を記憶から知っているからだった。



 すぐに4人の騎士が馬で駆けつけた。


マリアの父である代官のマーチス・デストとその家臣。


代官はこの地方の領主の軍の指揮官の一人でもある。


マーチスは馬を降り、周囲を見渡した。


「村のこの酷い惨状はどういう事だ?」



 マーチスに向かってラックは歩いて近づいた。


「先生。この男は侵略軍の中隊長です。


この男を手当てして


詳しい情報を聞くのが良いかと。」



 マーチスは管理する村々で学問などを


教える活動をおこなっていた。


ゆえにラックはマーチスを先生と呼んでいる。



 「詳しい事はお前にも後で聞く。


この男の傷は深い。


助からないかもしれんが。」


マーチスはそういうとカバンから


中級ポーションが入った小瓶こびんを出した。


「ホサ村から火の手があがっていると報告を受けてな。


怪我人がいれば使おうと思って持ってきたのだが


まさか敵軍の兵士に使う事になるとは思わなかった。」



 回復魔法薬ポーションはとても高価な薬で


中級ともなれば金貨5枚ほどで取引されている。



 マーチスは敵の指揮官の上体を抱えて


ゆっくり中級ポーションを飲ませた。


脇腹の傷口が徐々に塞がり指揮官の表情が和らいだ。



 「ありがとう。」


敵の指揮官は心からの感謝を口にした。



 マーチスはゆっくり指揮官の男を


その場にゆっくり寝かせる。



 「ラック。ご家族の安否は?」


ラックに向かってマーチスは訊ねた。



 ラックは首を横に振った。


「生き残ったのは俺だけです。」



 マーチスは涙を浮かべた。


マーチスはラックを優しく抱きしめた。


「大変な思いをしたな。」



 マーチスの胸に抱かれラックは涙を流した。






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