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告げ口

 冒険者ギルドに物資を返却し、


仲間4人もギルドに預けたラックは


ダークエルフだったメアリーとともに


馬車で帝都の街なかを移動していた。



 (誰かにつけられているな。)


ラックは何者かの気配を察知していた。


(街灯の多い大通りではさすがに


仕掛けてはこないか。)


ラックは馬車を右折させて


人気のない脇道に入った。


(この辺で馬車を止めてみるか。)


ラックは馬車を停止させた。



 ―――馬車を降りろ! ―――


どこからか男の声がした。



 ラックは暗がりに複数の気配を感じた。



 メアリーはラックの右腕にしがみつく。


「どうか殺さないで。お願い。お願いします。


あの声はウチの兄の声なんです。」



 ラックは苦い顔をした。


「もう! じゃあ、メアリーがなんとかしろよ。」



 「・・・うん。わかった。


ラックさまは絶対に手を出さないで。」


そうラックに言うとメアリーは馬車を降りた。


「兄さん! ウチの事はもう死んだと諦めて!


兄さんはもうウチとは関わらないで! 」



 民家の影の暗がりから


黒いフードを深くかぶった人影が現れた。


「どういうことだ!


お前、任務を放棄ほうきするつもりか。」


そういうと人影は馬車の正面に立った。



 メアリーは人影の正面に立った。


「兄貴、逃げて。


もうそんな次元の話ではないの。


馬車に乗る男は人間の姿をしているけれど


伝説の魔神『地獄眼ヘルズアイ』なの。」



 メアリーの兄と思われる男は動揺どうようした。


「な!?・・・馬鹿な!


そんな話、信じられるか! 」



 メアリーは兄の両腕を両手でつかんだ。


「それは、ウチだって信じられなかった。


でも、ウチの土蜘蛛もグリフォンも


あの男に倒されてしまったの。


ウチはもうあの男の所有物になっちまった。


お願い兄貴、もうウチに関わらないで。


地獄眼に一族が皆殺しにされてしまう。」



 メアリーをメアリーの兄は押しのけた。


「お前はだまされているんだ。


闇の精霊があの男は人間だと判断している。」



 メアリーは兄にしがみついた。


「兄さん! 取り返しがつかなくなる! 」



 メアリーをメアリーの兄は蹴飛ばした。


「俺達の存在を知った人間を生かしておけない。


そこの人間! 馬車を降りろ! 」



 ラックは馬車を降りると


メアリーの兄に歩み寄る。


「おい。メアリー。


兄との交渉は決裂したみたいだな。」



 ラックの前でメアリーは土下座した。


「兄を。兄をどうか殺さないでください。」


メアリーは地面に頭をこすり付けた。



 メアリーを見下ろしラックは口を開いた。


「一生懸命働くか? 」



 地面に頭をり付けたままで


「はい。一生、ラックさまに尽くします。」



 ラックは満足したようにうなずいた。


「おい! メアリーの兄。


隠れている仲間全員で俺を殺してみろ。」



 「メアリーって誰だよ!


こいつはそんな名前じゃない! 」


そう言ってメアリーの兄は右腕を上げた。



 フードをかぶったダークエルフが


8名、地面からい出してきた。


ダークエルフたちは皆、ナイフを構えている。



 ラックは目をつむった。


「心意気功術『金縛り』! 」


ラックの体からブオッ!っと


オーラが周囲に放たれた。



 メアリーの兄を含めた9名のダークエルフの


動きがピタっと止まった。



 メアリーの兄は右腕を上げたままで


苦しそうな表情を浮かべた。


「・・な・・・に・・をした・・」



 ラックは邪魔くさそうな顔をした。


「俺を殺すなら、姿を見せずに素早く行動しろ。


チャンスを与えてやったのに


それを活かせないお前らにはガッカリした。」


ラックは目を開けて左目に左手を当てた。


赤い直径30cmほどの赤い玉が


ラックの左目から出現して


その玉をラックは左手で持った。



 メアリーの兄は目を見開いた。


「・・・せい・・れい・・せき・・」



 ラックはその赤い玉を掲げた。


「姿を現せ!


俺の使徒『エービンス』! 」


ラックの持った精霊石が魔物へと変化した。



 精霊石あかいたまは丸い目玉となった。


直径30cmほどの目玉にコウモリの羽が生えており


にわとりのような足が生えている。


小さく黄色いくちばしが瞳の下にあった。


「ぬしさま。御用でございますか。」


小さくくちばしを開いて


ラックにエービンスはそう言った。



 「おう、お前には


俺のかつて持っていたスキルが


受け継がれてるからな。


いまの俺には念話スキルがないから


お前を使って念話がしたいんだ。」



 「かしこまりました。」


エービンスはそう言うと


ラックの左手の上で


エービンスは電話の


受話器のような形に姿を変えた。



 「あいつの念話番号はわかりやすいな。」


受話器についた番号のついたボタンを


『0000』と0のボタンをラックは4回押した。


ラックは受話器を左耳にあてた。


「・・・・もしもし。俺。


おう。タカユキか。


・・おひさ、アッシュだ。・・うん。


え? 違う。そんな事で念話したんじゃない。


昔の名前で呼ぶなって、それは俺の怒りの証だ。


お前が昔、ネットゲームに俺を誘ったくせに


何も言わずにそのゲームを引退した事は


今でも根に持ってんぞ。


・・・・しつこいってなぁ。


お前が設立したギルド『笑顔の護り手』は


俺がギルマスとして引き継ぐハメになって


どんだけ苦労したと思ってんだよ。・・うん・・。


ゴメンじゃねぇわ!


謝るくらいならそういうことすんな!ってこと。


今回は念話したのは、その件の愚痴じゃないんだ。


お前んとこの住人に俺、いま、殺されそうになった。


・・・『ウッソ! 』じゃねぇ!・・うん。マジ。


・・・ゴメンじゃねぇんだよ!


俺は現在進行系で困ってんの!


このネカマ野郎が!


ネットゲーム内の名前『アリス』って呼ぼうか。


・・・・黒歴史って何だよ。・・・男が泣くな!


そんな言葉で、なかったってことにはならんぞ。


・・・はぁ。また、それについてはじっくり話そう。


・・・うん。・・・絶交してたのを


許してやった恩を忘れんなよ。


そんな不義理ばっかりしてたら


また精霊界を滅ぼすよ。


・・・おう。うん。殺さなくていい。


・・・そんなとこか。それでよろしく。


また、遊びに行くわ。あの店まだやってたっけ。


・・・おう。楽しみにしてる。はいはい。またな。」


ラックは受話器を左目の前に向けると


受話器はラックの左目に吸収された。


メアリーの兄にラックは目を向けた。


「お前ら! 精霊界に帰れ!


すぐ迎えがくるからそれまで待ってろ! 」



 メアリーの兄は口を開いた。


「だ・・だれとはなして・・いた? 」



 メアリーの兄に


ラックは興味なさげな目を向けた。


「精霊界の神。神名はなんて名前だっけ?


まぁ、そんなんどうでもいいわ。


俺はお前たちを殺さない。


しかし、社会的には抹殺する。


俺のスキル『告げ口』によって


お前らは社会的に滅びる。それだけだ。」


ラックはメアリーに目を向ける。


「メアリー。兄の命は助けた。感謝しろ。」



 ラックの発言をメアリーの兄は


理解できていない様子だった。



 メアリーは顔をあげた。


「兄は死なずに済むの? 」



 ラックは頷いた。


「おう。約束は守ったんだ。一生懸命働けよ。」



 メアリーは立ち上がるとお辞儀した。


「ラックさまのメイドとして一生懸命働きます。」



 空中に光が集まるとそこに転移門が現れた。


転移門から地上に黒い鎧を着た男性が舞い降りる。


その男性は凛々しい若武者であった。



 若武者は周囲を見渡したあと、


ラックの前に歩み寄ってきた。


「貴方がアッシュベルクさまでしょうか。」



 その若武者をマジマジ見てラックは口を開く。


「そうだ。君が迎えかな。」



 若武者はラックの前でひざまずいた。


「は! 私はジークフリートと申す戦士でございます。


主神からの命により、ここに馳せ参じました。


この者どもを引き取れとの事ですので


ただちに引き取って精霊界に帰還いたします。」



 ラックは頷いた。


「よろしく頼む。


こいつらの仕置きについては


後日、報告書を俺の家に持ってきて。


このメアリーも連れていってくれ。


この女性も関わっているんでな。


しかし、この女性は俺の身内になった。


報告書を持って来るときに


一緒に連れてきてほしい。」



 ジークフリートは立ち上がると


「はは! そのように致します。


このような事態が起きてしまった事を


私からも深くお詫び申し上げます。」


そう言ってジークフリートは頭を下げた。



 「りゅうごろしの・・えい・・ゆう・・


じーく・・そんな・・・ばか・・な。」


メアリーの兄は呆然自失ぼうぜんじしつとなっていた。



 身動きがとれないダークエルフたちと


メアリーを順番に触っていく。


すると、触られたダークエルフたちは


空中の転移門に吸い込まれていった。


最後にメアリーも転移門に吸い込まれた。



 ラックにお辞儀したあとジークフリートは


飛び上がると転移門に吸い込まれていった。



 ラックは馬車の操縦席に戻った。


「問題はこれからだ。


マリアの機嫌をどうとればいいのやら。」


ラックは元気なく手綱を弾いた。


ペガサスは元気よく馬車を引いて前進した。








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