戦闘
「バケモノめ!我々は魔物退治に来たのではないわ!」
馬上の指揮官はラックに向かって言い放った。
「バケモノにかまうな。
ただちに撤収する!
第一小隊、第二小隊は
殿を務めよ!」
司令官の撤退命令を下した。
第一と第二小隊以外の兵士たちは
安堵感で思わず表情が明るくなった。
第一と第二小隊は
死を覚悟して勇気を振り絞った。
ラックはフッと鼻で笑う。
「逃げるなら逃げなよ。
腰抜けども。」
そう言ってシッシッと
兵士に向けて手を振った。
ラックの態度に指揮官は
不快な表情を浮かべたが無言で
馬の手綱を引いて踵を返した。
第一小隊、第二小隊の総勢20名が
ラックの正面に横並びに壁を作った。
それ以外の包囲していた兵士たちは
隊列を組んで撤退する姿勢を見せた。
司令官はラックに
完全に背を向けたその時。
「さぁ!狩りの始まりだ!!!」
ラックは右手に持った剣を振り上げると
指揮官に向かって剣を投げつけた。
剣はギューーーーーンと空を切って
勢いよく飛んで第一小隊の兵士の一人の頭を
吹き飛ばした。
兵士の顔を貫通した剣は
勢いが衰えず、少しホップしながら
指揮官の脇腹を抉り貫通した。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
指揮官は悲鳴を上げながら落馬した。
貫通した剣は木に刺ささって
枝が大きく揺れた。
今まで自宅前から一歩も
動かなかったラックが
前方の兵士たちに向かって
前かがみになって駆けだした。
第一、第二小隊の兵士たちは
前方に槍を身構えて槍衾を形成する。
ラックは物凄いスピードで
殿の兵士たちとの
間を詰めると素手の拳で
兵士の一人の顔を殴った。
顔を殴られた兵士は
グニャ~~っと
顔を大きく陥没させてながら絶命した。
絶命して崩れ落ちる兵士の腰の鞘から
ラックは剣を引き抜くと
自分の体の芯を軸にして回転する。
螺旋を描いきながら
槍と槍の間をすり抜けて兵士たちに
肉薄するとラックは剣を横に振り切る。
ラックの正面にいた兵士の
胴が真っ二つになり
ズサッ!!!っと上半身が地面に落ちた。
ラックは踊るような動きで剣を振りまわす。
兵士の槍を剣で弾いて正面に立って首を斬る。
ボトッ!ボトッ!ボトッ!と
複数の兵士の頭は地面に転がった。
ラックは軽い身のこなしと軽快なステップで
立ちふさがる兵士たちを無残に切り殺した。
第一小隊、第二小隊はあっと言う間に全滅した。
「うわっああああ!!!」
兵士たちは恐怖で悲鳴を上げた。
撤退するはずだった兵士たちは
隊列が乱して
蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。
「無様過ぎんだろ。もう死ねよ!」
逃げる兵士たちを左目でロックオンする。
ラックの左目が紫に光った。
その瞬間、兵士たちの体から
魂である青白い小さな球体が抜け出て
ラックの左目に飛び込み吸収された。
逃げ惑う兵士たちは
次々に魂を失い白目をむいて地面に転がった。
ラックに立ち向かおうと
勇気を振り絞って槍を構えて走って
ラックに接近した兵士たちは
ラックの電光石火の斬撃で
次々と頭を地面に落としていった。
ラックの目の前に大きな影が落ちた。
ラックは見上げると
重鎧を纏った大きな兵士が
立ちふさがっていた。
身長は2mを超えている。
兵士の両手には
柄の長く先が尖ったバトルアックスが
握られていた。
ラックは立ち止まった。
「あんた強そうじゃん。
これはいわゆる一騎打ちだね。」
ラックはそう言って剣の切先を地面に刺した。
素手で両拳を握って
身構えてボクシングのようなステップをする。
大きな兵士が頭を振って周囲を見渡す。
自分しか立っている味方がいない。
大きな兵士は無念の表情を浮かべた。
目の前の少年は素手で身構えていた。
「なぜ剣を使わぬ。」
もはや、死を覚悟した大きな兵士は
軽い口調でラックに訊いた。
「だって、
あんただけ分厚い金属の鎧を着てんだもん。
安物の剣で攻撃しても
剣が変形して折れちゃいそうだからね。」
「だから素手か。
がははははは!!!」
「おっちゃん。
何がそんなにおかしいの?」
「これが笑わずにいられるか。
数多の戦場を駆け回ったが
喧嘩以外で
素手で一騎打ちを挑まれたのは
初めてなんでな。」
「あはは。
俺は兵士じゃないんだから
これはただの喧嘩だよ。」
「そうか。喧嘩か。
しかし、オレは生憎、勤務中なんでな。
兵士として
暴徒を鎮圧するっていう大義名分でいいよな!」
兵士はバトルアックスを大きく振り上げて
ラックに向かって振り下ろす。
ラックは大きく横に飛んで斬撃を避けた。
振り下ろされたバトルアックスが地面に
衝突して土煙が上がる。
「驚いたよ!
その斧って魔法の武器かなんかかい?
俺でも怪我するかもな。」
「魔法か。
まぁそんなとこだ。
お前みたいなバケモノ相手でも
通用する武器って事なら
この戦いは一騎打ちとして
成立するってことだな。」
そう言って大きな兵士は
バトルアックスの先端の
尖った穂先を前に向けた。
ラックに向かって大きく踏み込む。
「トリャ!トリャ!トリャ!トリャ!」
大きな兵士はラックに連続で高速の突きを放った。
ラックはステップしながら
ギリギリのところで、かわすが
あまりにしつこい突き攻撃を嫌って
バック転して距離を取って屈む。
「ん。おっちゃんって
他の兵士と違って装備が
なんだか豪華だけど
お偉いさんなのかい?」
大きな兵士は気を削がれて足を止めた。
「ん。他の歩兵は皮の装備だからか?
まぁ、昔は一軍の将だったが
今はただの一兵卒にすぎん。」
大きな兵士は普通にラックの質問に答えた。
「そっか。なんか悪い事聞いちゃってゴメン。」
ラックは屈んだ姿勢から立ち上がり体勢を整えた。
「ふん!気にすんな。すいぶんと昔の話だ。」
ドスッ!ドスッ!と大きな兵士は
地面を踏みしめながらラックに駆け寄る。
ラックに接近した大きな兵士はバトルアックスを
地面に這わせ腰を捻って
ラックに向かって大きく踏み込むと
バトルアックスを大きく振り上げた。
下からバトルアックスの刃が高速でラックに接近する。
ラックは素早く屈んで
刃先を避けながら
左足で大きく地面を踏み込んで
大きな兵士に肉迫する。
左足を軸に回転しながら右足で
兵士の左足の膝にローキックを決めた。
バキッ!!!
大きな兵士の左膝の骨は
音を立てながら砕け散った。
大きな兵士は左足の踏ん張りがきかずに
バランスを崩して左膝を地面につけた。
地面に左膝が当たった衝撃で激痛が走る。
「ぐわああああああぁあ。」
あまりの痛みに兵士は悲鳴をあげる。
「うぐぬぬ。
なんだ今の蹴りは?
武術か何かか?
痛ててて。」
大きな兵士はドスンと地面に座り込んだ。
バトルアックスを手から離して膝を抱えた。
「いまの蹴りって?
武術なのかな?え?
今の蹴りは・・・
俺ってテレビで格闘技の試合を
観るのが好きで。
あれ?試合?テレビって何???」
ラックは記憶を思い出せず首を傾げた。
「まぁ、よくわからんけど
こういう蹴りをしたいと直感的に思ったんだよね。
そんな事より、おっちゃん早く立ってよ。」
ラックの目には殺気が走っていた。
ラックの殺気に
気付いた大きな兵士はバトルアックスを
握ろうとした。しかし、手を止めてしまった。
兵士は首を横に振り
「もう立てん!俺の負けだ!」
ラックに向かってそう言って笑顔を向けた。
「そっか。もういいんだね。」
ラックは残念そうな顔をした。
会話を交わした事で殺意が鈍っていた。
「ごめんね・・・。」
魂を吸収すればほぼ苦痛なく殺せる。
ただそれは人間の死と言えるのだろうか。
兵士には人間の死を与えたいとラックは考えた。
ラックは勢いよく兵士に向かって駆け出す。
「ったく死にたくねぇなぁ。」
大きな兵士は静かに目を瞑った。
助走で加速したラックは大きな兵士の兜を
両手で掴んで左足で大きな兵士の頭に膝蹴りした。
「ッブホッ!!!」
大きな兵士は膝蹴りの衝撃で後ろ側に倒れ込む。
後頭部が地面に衝突した。
大きな兵士の頭はラックの左膝の下敷きになった。
大きな兵士の顔面は
ぺちゃんこになって大きく陥没していた。
ラックは勢いのままに前転して屈んだ姿勢になる。
大きな兵士は息絶えていた。
「敵として会いたくはなかったよ。」
ラックは悲し気な表情を浮かべた。
ラックは指揮官に目を向ける。
「指揮官はまだ生きてるな。」
「・・・まだ私は死なない。
なんとしても生きて・・・生きて帰るのだ。
指揮官は地面を這いながら逃げようともがいていた。
ラックは視線を下に向ける。
落ちているバトルアックスを
右手で握って立ち上がる。
ラックはバトルアックスを
肩に背負うと
指揮官のいる方向に歩き出した。
はじめまして。
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