トロール
『ラオの森』の各方面から多くの足音が鳴っている。
「ぶああああああ!!! 」
ラックにほど近い位置にいたトロールが
馬鹿でかい怒号を上げた。
トロールは目が赤く充血しはじめる。
「ヨクモ! ヨクモ!
ナカマヲコロシタナ! 」
ラックに仲間の一体を殺されて
トロールは怒り狂っていた。
「コロス! コロス! コロス! 」
そう叫びながらズシン! ズシン! と
6メートルはあろうかという巨体を揺らして
ラックに向かって全速で駆け寄っていく。
ラックは馬車のある後ろに
振り向くとゆっくりと歩き出した。
「うおおおおおお! 」と
トロールは雄叫びを上げて走る。
前方の地面に左足を踏み込んだはずだった。
トロールは勢いよく、ズザザザザ! と
体を地面につけながら前のめりにこけた。
トロールは何が起こったのかわからなかった。
トロールは後ろに振り向いて左足を見た。
「あががががが! 」と言って
トロールは目を見開いた。
左膝から下が失われていた。
トロールは地面に両手をついて
起き上がろうと上を向いた。
トロールが頭上の空中に目を向けると
キラッと何か金属が光ったように見えた。
トロールの視界に薄っすら人影が見えた。
戦斧を振り上げて空中から
トロールに向かって飛び降りてくる人影。
「槍術『劈槍!』と
空中から声がトロールの耳に聞こえた。
トロールは必死で起き上がろうとする。
落下してきた人影は
トロールの無防備な背中に戦斧が振り下ろした。
ズシャッ!っとトロールの背中に深く
戦斧の刃がめり込んだ。
「うぎゃあああああ! 」と
トロールは体を捩ったその刹那。
ズドン!っと凄まじい衝撃が
背中からお腹を突き抜けた。
トロールは体を仰向けにして
下を向いて自分の体を見た。
「ぁぁぁぁ!!!! ゲボベゴ。 」
トロールの胸半分から下の肉が
破裂したように周囲に飛び散っていた。
体は真っ二つになっており
肺が破損して息が出そうとしたら
喉から大量の血を吐いた。
トロールは意識朦朧とする中で
頭の上で戦斧を振り上げる影を視認した。
トロールの返り血を全身に浴びて
微かな月の光を弾いて全身がテカっていた。
バーナードの顔が薄っすら移り
両目は紫の光を帯びていた。
「・・・・・・・・」
トロールはもう声は出せなかった。
ズドン!っと戦斧がトロールの
顔目掛けて振り下ろされた。
トロールの顔に戦斧の刃が横一線にめり込んだ。
一拍おいて、スバンっ!と大きな音が弾けた。
トロールの頭は衝撃波で肉が
飛び散って頭は跡形もなく失われていた。
その様子を目撃したもう一体のトロールは
足をガクガクさせながら後ずさりしていく。
「ニンゲン、ジャナイ。 ナンダ? オマエラ? 」
トロールは後ろに振り向くと、逃げ出した。
「槍術『必中彗星貫』!」
人影から槍が前方に放たれた。
トロールはズシン、ズシンと
力いっぱい駆け足で逃げる。
右手に持った棍棒を森に投げ捨てた。
シュンっ! と風を切るような音がして
トロールは背中に何か当たった気がした。
下を向いてトロールはお腹を見た。
白銀の尖った穂先が
鳩尾から顔を出していた。
「ぐはあああああ。」
横隔膜を貫かれ、息ができなくなり
トロールは両膝を地面につけた。
一拍おいて、ズドン!っと衝撃が走った。
トロールの視界は空中をグルグルと回る。
ズシャ!っといって、
トロールの首は地面に落ちた。
トロールにはまだ意識があった。
チャっ。と、
何かを持ち上げた音が
後頭部の方角から聞こえた。
ズジャ!っと
トロールは上を向いた左耳に
何かが突き刺さった気がした。
一拍おいて・・・ズドン!!!っと衝撃が走った。
バーナードが持つ『衝撃の戦斧』の効果で
発生した強力な衝撃波は
トロールの頭を滅茶苦茶に吹き飛ばし
全方位に肉が飛び散っていった。
バーナードは戦斧を肩に担ぐと、
鐘が鳴り響く方角に向かって
森の深くへと踏み入っていった。
はじめまして。
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