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六道修羅

 夕暮れ時が空を染める頃に


ラック一行の馬車は『ラオの森』に到着した。



 森に入る直前にラックは馬車を止めた。


ラックは仲間達に馬車を降りるように伝える。



 仲間が馬車を降りると


バーナード、テューネ、エリック、ノーラは


横一列に整列した。



 ラックは4人の前に立った。


「これから我々、『蒲公英ダンデライオン』の5名は


修羅しゅらに入り、


敵の怪物たちを無慈悲に殲滅せんめつするものなり。


諸君には油断すれば、


すぐ即死と肝に銘じて頂きたい。


我々は寡兵であり、敵に挑戦する立場である。


俺は君達を戦士として認める。


しかし、戦力は敵の足元に及ばないだろう。


ゆえに我が秘法を持ってチカラを強化する!


それは戦後、君達の体に


多大な負担となって返ってくるだろう。


己のチカラで苦難を乗り越えられると


自負する者には我が秘法は使わない。


己の体を犠牲にしてでも修羅となって敵を討つ。


そのような勇気ある者は前へ出られよ。」


ラックは足を肩幅に開き、両腕を後ろに組んだ。



 ラックの迫力に4人は今回の戦いが


自分たちの実力以上に強い敵である事を匂わせた。



 バーナードが一歩前に出た。


「オレはクエストで情けない所を見せちまった。


このまま帰ったら、


立ち直るのに時間がかかりそうだ。


その秘法とやら、オレにかけてみてくれ。」



 テューネも一歩、前に出た。


「それは人面剣を使う負担と合わせて


リバウンドが来るってことかい? 」



 ラックは大きくうなずいた。


「そうなるが、俺の術が解けるまで


一切、体に反動は来ない。


人面剣を使用しての魔力酔いは


状態異常を回復すれば改善されるだろう。」



 テューネは「フッ」と笑った。


「じゃあ、断る理由は無いね。


死んだら元も子もないんだ。


プライドなんて犬に食わせるよ。


強くなれる方法があるってんなら、


あたいはそれに乗っかるよ。」



 エリックが一歩、前に出た。


「オレっちでもあの怪物たちには


勝つのは難しいってのが本音です。


オレっちにもかけて欲しいです。」



 ノーラが恐々(こわごわ)と一歩、前に出た。


「わたくし、戦闘能力がありません。


わたくしに秘法をかけて頂いても


意味がないのではありませんか? 」



 ラックは大きく横に首を振った。


「この秘法をかければ本当の強者になるんだ。


君は弱者という自分から解放されるだろう。


しかし、その先にあるのは


統一神のしもべである君には茨の道である。


それでも進む覚悟はあるか? 」



 ノーラは歯を食いしばった。


「わたくしも冒険者の端くれです。


ラックさん、わたくしを強者にしてください。」



 ラックは大きく頷いた。


「勝利しても何も報われない戦場に


自ら進んで赴く諸君を


俺は誇りに思い、敬意を払う。


我が秘法を以って諸君は


鬼に逢うては鬼を斬り、


神に逢うては神を斬る存在となる。


同志諸君、覚悟はよいか! 」



 「「おおぉぉぉぉ!!! 」」と


ラック以外の4人は掛け声をあげた。



 ラックの左目が紫色に閃いた。


「心意気功術! 『六道修羅りくどうしゅら』!!! 」



 ラックの左目から放たれた4つの紫色のオーラ


仲間4人の体に吸収されていった。



 一時の静寂が流れる。



 仲間4人の両目は淡い紫の光を宿していた。





はじめまして。


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